トンネルトモグラフィ
トンネル切羽前方の広域な地質状況をトモグラフィ手法により高精度に評価
安全で合理的なトンネル掘削を行うためには、切羽前方の地質状況を精度良く予測することが重要です。現状では、先進ボーリング調査、トンネル坑内からの反射法弾性波探査、地表面での屈折法弾性波トモグラフィ探査などが行われています。しかし、ボーリング調査は時間やコスト面で多用するには難しく、反射法弾性波探査、屈折法弾性波トモグラフィ探査は探査深度や精度の面で課題がありました。
鹿島が開発したトンネルトモグラフィ探査は、切羽付近で発生させた弾性波を地表面の受振点で観測し、トモグラフィ解析を行うことにより、切羽前方の弾性波速度分布を高精度に算出する手法です。断層破砕帯や硬岩部の分布状況(位置)に加えて、その程度を弾性波速度により詳細に評価することができます。
特許出願中
- キーワード
- 山岳トンネル、切羽前方探査、弾性波トモグラフィ、GPS、無線
GPS時刻同期型 無線トモグラフィ探査システムの採用
一般的な弾性波探査では、高精度な解析を行うために発振システムと受振システムの時刻同期が必要となり、有線で接続されます。しかし、トンネルトモグラフィ探査を行う場合、トンネル坑内と地表面の発振・受振両システムの有線接続は、施工性の観点から困難となるケースも多くあります。
今回開発したシステムでは、 GPS時刻情報を用いることで、発受振システム間の有線接続を不要とし、より簡便にトンネルトモグラフィ探査を実現可能としました。GPS衛星から発信される信号は発振・受振両システムで受信され、両システムがUTS(協定世界時)に高精度に時刻同期します。これにより1.0msec以下の精度で同期が可能となり、有線手法と同等な精度でトモグラフィ解析を行えるようになりました。
特長・メリットココがポイント
切羽近傍での受信が可能
トンネル坑内の発振システム側ではGPS時刻信号を直接受信できないため、坑口で受信した信号が光ケーブルを経由して切羽近傍で受信できるようにしました。
そして、切羽近傍で受信したGPS時刻に同期する小型波形収録装置で、ハンマ打撃や発破の起振時刻を取り込んで収録できる仕様としました。
- 一度GPS信号を受信したら、光ケーブルを中継しない場合でも6時間程度は時刻誤差が0.1msec以内に収まる性能を有しています。
- GPS同期型で波形を高サンプリングで収録できる装置は一般的ではありません。
高サンプリングかつ多チャンネル収録が可能
受振システムについては、トモグラフィ解析に必要な高サンプリングかつ多チャンネル収録が可能で、GPS同期機能をつけた波形収録装置を開発しました。
- GPS時刻(タイムコード)は、波形収録装置にGPS同期型高精度刻時装置を接続することで取得します。
- 専用のタイムコード読み取りソフトによって、取得波形の計測時刻を正確に求めることができます。
無線式の探査システムでも解析可能
発振・受振両システムで取得した波形を共通の時刻信号を用いて合成させることにより、有線で接続せずに、両システムの時刻同期を可能としました。
開発した探査システムの精度検証試験より以下のことがわかりました。
- 開発した無線式の探査システムと有線式システムで得られたデータを比較すると、2つの波形には違いは見られず、正確に時刻同期および波形の合成ができていることが分かりました。
- 有線式システムと同等の精度でトモグラフィ解析が行えることが確認できました。この結果、トンネルトモグラフィ探査の実用性を向上させることができました。
切羽前方や周辺の地質状態を詳細に把握
適用の一例を紹介します。切羽前方や周辺の地質状態を詳細に把握するために、トンネルトモグラフィ探査を実施しました。
その結果、従来の事前探査では把握できなかった基盤岩の盛り上がりを確認することができ、調査ボーリングの結果と整合性が見られました。また、切羽前方に確認された低速度領域では、調査結果を支保パターンの変更に活用することができました
適用実績
北の峰トンネル
場所:北海道富良野市
竣工年:2013年3月
発注者:国土交通省北海道開発局
施工延長:2,928m
矢頭峠トンネル(仮称)
場所:三重県津市
竣工年:2014年12月
発注者:三重県津建設事務所
施工延長:1,637m
学会論文発表実績
- 「トンネル切羽前方広域三次元弾性波トモグラフィに関する基礎検討」,土木学会第66 回年次学術講演会,Ⅲ-092,2011年
- 「三次元トンネルトモグラフィ探査システムの開発」,土木学会第67回年次学術講演会,Ⅲ-106,2012年
- "Evaluation of Geological Conditions Ahead of Tunnel Face Using Seismic Reflector Tracing and New Seismic Tomography between Tunnel and Surface, Ground Engineering in a Changing world",2012 ANZ Conference Proceedings,2012年
トンネル切羽前方探査
「削孔検層システム」
リアルタイムで切羽前方を探査
削孔検層システムとは、油圧ドリルを用いて岩盤を削孔する際に得られる削孔データ(削孔速度・打撃圧・給進力・トルク等)を利用して、簡便で迅速にトンネル切羽前方の地質状況を予測できるシステムです。
リアルタイムで切羽前方を探査でき、これまでに地質予測手法として、数多くの現場で適用されてきました。
また、多くの適用事例からノウハウやデータが蓄積されているため、トンネル支保パターンの選定の目安としても活用可能です。
特許登録済
- キーワード
- トンネル、前方探査
削孔検層システム詳細
本システムは、下図に示すように、孔曲がりを抑制する専用の削孔ツールスと削孔データを計測するためのセンサーと収録装置、及び、評価ソフトで構成されています。地質状況の評価にあたっては、主に破壊エネルギー係数Evを用います。この係数は岩盤の破壊に要した油圧ドリルの仕事量に相当し、一般に、硬岩の場合は大きく、軟岩の場合は小さな値となります。また、削孔時の観察項目(くり粉の性状、削孔水の色、湧水量)も考慮して切羽前方地質を評価します。本システムは汎用性が高く、ロータリーパーカッションドリルやトンネルジャンボなど、どのような油圧ドリルにも取り付けることができます。
特長・メリットココがポイント
- 油圧ジャンボでは、切羽前方30~50mまで探査することが可能で、通常、測定時間は2~3時間程度です。
- 専用の削孔ツールスを用いることで、孔曲がりを抑えることができます。
- ロッド継ぎ足し時の記録装置の停止や再開の操作は自動化されており、開始と終了の操作のみで測定・記録が可能です。
- データの処理も現場事務所のパソコンで短時間に行うことができるので、迅速な地質評価が可能となり、施工のサイクルへ組み込みやすく、工費・工期の面から有利です。
- 深度やフィード圧による補正も可能であり、より定量的に地質状況の評価を行うことができます。
- これまでに数多くの現場で適用され、ノウハウやデータが蓄積されているため、支保パターンの選定の目安としても活用可能です。
適用実績
新名神高速道路 栗東トンネル下り線
場所:滋賀県栗東〜大津市
竣工年:2002年3月
発注者:日本道路公団関西支社
トンネル延長:2,469m
芦田川流域下水道沼隅幹線管渠
場所:広島県沼隅群〜福山市
竣工年:2004年3月
発注者:広島県福山地域事務所
トンネル延長:3,409m
大津放水路トンネル
場所:滋賀県大津市
竣工年:1999年3月
発注者:建設省近畿地方建設局
トンネル延長:411m
新名神高速道路 鈴鹿トンネル下り線
場所:三重県亀山市
竣工年:2001年3月
発注者:日本道路公団中部支社
トンネル延長:3,923m
国道41号高山国府トンネル
場所:岐阜県高山市
竣工年:2012年3月
発注者:国土交通省中部地方整備局
トンネル全延長:3,259m
新東名高速道路
富士川トンネル
場所:静岡県庵原郡
竣工年:2002年10月
発注者:日本道路公団静岡建設局
トンネル全延長:4,505m
新東名高速道路金谷トンネル
場所:静岡県掛川市~榛原郡
竣工年:2003年3月
発注者:日本道路公団静岡建設局
トンネル全延長:4,578m
学会論文発表実績
- 「油圧ドリルによる削孔データを用いた岩盤評価および切羽前方地質の予測技術について」,第8回岩の力学国内シンポジウム講演論文集,1990年
- 「削孔検層システムによるトンネル切羽前方地質予測」,地盤工学研究発表会講演集,H-5,1997年
- 「TBM掘進データを用いた地質統計学的手法による切羽前方地質評価」,第31回岩盤力学に関するシンポジウム講演論文集,2001年
速度検層「TVL®」システム
切羽前方の地質状況や湧水状況を事前に精度よく予測・評価
トンネル切羽前方に崩れやすい破砕帯などの地質不良部や、湧水、土砂流出などの恐れがある帯水層が存在する場合は、切羽の崩壊、多大な変状、突発的な湧水が発生することが懸念され、工期、工費、安全性に大きな影響を及ぼす恐れがあります。そのため、切羽前方の地質状況や湧水状況を事前に精度よく予測・評価することが重要です。本手法は、得られた弾性波速度分布から支保パターンを選定することができ、削孔検層結果との相関関係も把握することができます。また、掘削後の地盤のゆるみを適切に評価・フィードパックし、合理的な支保設計を可能にします。
特許登録済
- キーワード
- 速度検層、TVL、弾性波、支保設計、ゆるみ域調査、ゆるみ域評価、前方探査
システムの概要
本システムは、弾性波速度が地盤の硬軟によって変化することを利用しており、切羽付近でハンマ打撃により発生させた弾性波が、あらかじめ削孔したボーリング孔内に挿入した4連の受振器(速度計)に到達するまでの時聞を計測することにより、その深度ごとの区間速度分布を迅速に評価することができます。
また、本システムは、上図に示すようにトンネル切羽前方だけでなく切羽周辺地山の弾性波速度も簡易に求めることができるため、掘削によるゆるみ域を評価することも可能です。
特長・メリットココがポイント
- 切羽前方30mを探査する場合、約1〜2時間で検層を実施することができます。測定結果の出力も約1時間ででき、現場工程に大きな影響を与えることなく、切羽前方地質を評価することができます。
- 取得した50cm間隔の細かい区間速度分布より、支保パターンの選定を行うことが可能です。
- 4連の孔壁圧着型受振器を用いることで、より迅速かつ高精度な調査を行うことが可能です。
- 受振器径が32mmと小さく、削孔検層を実施したボーリング孔に本システムを適用することができます。各トンネルにおける弾性波速度と削孔検層から得られる破壊エネルギー係数との相関関係を把握し、以後の調査へ反映させることが可能です。
- 切羽前方だけでなく、天端方向や側方方向に削孔されたボーリング孔に対しでも適用できるため、掘削によるゆるみの程度を簡易に評価することができます。
- 掘削前に切羽前方地質予測を行い、掘削後のゆるみ評価を予測ヘフィードパックすることで、より合理的な支保設計を行うことができます。
適用実績
大津放水路トンネル
場所:滋賀県大津市
竣工年:1999年3月
発注者:建設省近畿地方建設局
トンネル延長:411m
東九州自動車道
九六位トンネル
場所:大分県大分市~臼杵市
竣工年:2000年1月
発注者:日本道路公団
トンネル延長:1,719m
学会論文発表実績
- 「速度検層を用いたトンネル切羽前方探査」,土木学会年次学術講演会講演概要集 共通セッション,No.52,1997年
- 「トンネルの切羽前方予測システムの開発」,地下空間シンポジウム論文・報告集,Vol.3,1998年
- 「削孔検層と速度検層を併用した切羽前方探査の結果」,土木学会年次学術講演会講演概要集 第6部,No.53,1998年
TRT®探査システム
トンネル切羽前方の不連続面を非破壊、3次元で精度良く探査する
地山の性状はトンネル掘進に大きな影響を与えます。特に、地山性状が想定よりも悪い場合は、切羽の崩壊、多大な変状、突発的な湧水等が発生し、掘進速度や工費、安全性に大きな影響を及ぼします。そのため、切羽前方やトンネル周辺の地質情報を事前に精度良く予測・評価することが、安全で合理的な施工を進める上で重要です。TRT(Three-dimensional Reflector Tracing)探査システムは、ボーリングを実施せず、非破壊で切羽前方の3次元的な地質状況を精度良く評価することが可能なシステムです。無線システムのため、既存方式より短時間かつ低コストで精度の高い調査を行うことが可能です。
特許登録済
平成21年度岩の力学連合会 技術賞
- キーワード
- 無線式システム、トンネル、地質評価、3次元、反射法
探査方法
- トンネル壁面に約10ヶ所の加速度計と無線伝送器を取り付けます。
- 切羽周辺の複数の発振点で入力波を発生させます。入力波はハンマー打撃、発破等、様々な方法で行う事が出来ます。
- 入力した弾性波は地盤中を伝播し、地質境界や破砕帯のような不連続面で波動の一部が反射します。
- トンネル壁面に設置した約10ヶ所の加速度計で反射波を受振し、無線通信によって各加速度計からの波形データを取得します。
- 記録された波形データを専用のプログラムで解析することにより、反射波を抽出し、不連続面の位置、傾き等を検出します。
特長・メリットココがポイント
切羽前方を広範囲に3次元評価することが可能
- トンネル計画線上だけではなく、周辺地山も探査の対象とするため、不連続面の三次元的な広がりを広範囲(切羽前方100m~150m)に予測することが可能です。
- 探査結果を任意の視点から表示することが可能であり、複雑な地質構造を分かりやすくイメージできます。
探査時間の短縮により施工への影響を軽減
- 従来技術では、発振のために発破を用いていましたが、本技術では、機械式の発振器や、施工時の掘削振動も利用可能です。
- 掘削作業を止めることなく、作業への影響を最小限に抑えながら、測定及びデータの収録が可能です。
- 解析も迅速に行えるため、TBMなどの施工進捗が早いトンネル現場でも迅速に探査結果をフィードバックできます。
適用実績
熊野尾鷲道路
逢神曽根トンネル
場所:三重県尾鷲市
竣工年:2012年2月
発注者:国土交通省中部地方整備局
施工延長:2,360m
国道41号高山国府トンネル
場所:岐阜県高山市
竣工年:2012年3月
発注者:国土交通省中部地方整備局
施工延長:3,300m
さがみ縦貫城山八王子トンネル
場所:神奈川県相模原市
竣工年:2012年3月
発注者:国土交通省関東地方整備局
施工延長:3,088m
舞鶴若狭自動車道敦賀トンネル
場所:福井県敦賀市
竣工年:2010年3月
発注者:中日本高速道路
施工延長:1,717m
徳富ダム壮志トンネル
場所:北海道樺戸郡
竣工年:2010年10月
発注者:国土交通省北海道開発局
施工延長:2,940m
地芳トンネル
場所:愛媛県上浮穴郡
竣工年:2010年4月
発注者:国土交通省四国地方整備局
施工延長:2,162m
鳥取豊岡宮津自動車道
地蔵トンネル
場所:京都府宮津市
竣工年:2009年3月
発注者:京都府道路公社
施工延長:3,457m
学会論文発表実績
- 「無線式トンネル3次元反射法弾性波探査技術の開発」,第38回岩盤力学に関するシンポジウム講演集,2009年1月
- 「弾性波を利用した新しいトンネル切羽前方探査手法の適用性に関する研究」,トンネル技術研究発表会,2003年
- 「反射トモグラフィによるトンネル切羽前方の地質探査」,土と基礎,2002年7月
- 「反射トモグラフィ法を利用したトンネル周辺地質の予測」,岩の力学国内シンポジウム F18,2002年1月
- 「反射トモグラフィ“TRT”の現場適用結果」,土木学会年次学術講演会3,2001年10月
地質のリアルタイム可視化システム
「スマート切羽ウォッチャー」
切羽の崩落事故ゼロへ! ICTによる地質のリアルタイム可視化
山岳トンネル工事では、施工中、前方の断層や切羽状況を完全に把握することは困難です。そのため、予期せぬ断層による切羽崩壊や肌落ち災害などの重篤災害の根絶に至っていません。そこで鹿島は、切羽と前方5mまでの地質状況をリアルタイムに完全に可視化する「スマート切羽ウォッチャー」を開発しました。
これは、切羽写真の画像解析による崩落危険予測と、コンピュータジャンボの穿孔データによる前方地質のリアルタイム予測の2つの解析技術を組み合せて、切羽の崩落危険度をリアルタイムに可視化するものです。本システムにより、従来の経験に頼った地質評価を変革し、切羽崩落災害の危険性を大きく低減することができるようになりました。
平成30年度土木学会賞 技術開発賞
平成30年度岩の力学連合会 技術賞
平成30年度ARMS10 Outstanding Paper Award 優秀論文賞
特許登録済及び特許出願中
- キーワード
- 地山評価、ICT、肌落ち災害、コンピュータジャンボ、地球統計学、画像解析、可視化、見える化
地質状況を自動でリアルタイムに高精度に定量評価
スマート切羽ウォッチャーは、『切羽写真の画像解析による切羽剥落危険度評価システム』と『コンピュータジャンボによる施工時の穿孔データを利用した3次元リアルタイム地質予測システム』、さらに、これらのシステムによる地山評価結果を現場事務所や本社などとリアルタイムに共有するクラウドシステムで構成されています。解析時間は、それぞれ10秒と1分程度であり、解析結果は切羽や現場事務所、本社等でも確認できます。これにより、切羽の剥落危険度を踏まえた適切な鏡吹付けコンクリートの施工や前方とトンネル周辺の地質状況を踏まえた適切な補助工法の迅速な適用判断が可能となり、トンネル掘削の安全性を飛躍的に向上させることができます。
適切な対策工による安全性の向上
適切な鏡吹付けコンクリートによる肌落ち災害の防止
切羽写真の画像解析による剥落危険度の定量的な評価に基づいて、地山状況に応じた適切な鏡吹付けコンクリートをリアルタイムに提示し、切羽の安全性を向上させることができます。
- 切羽写真を画像解析することにより、切羽の風化度と割れ目交差密度を定量評価します。
- 全国の400切羽以上の切羽写真とこれらの剥落状況のデータベースに基づいて、剥落危険度を定量評価します。
- 切羽で解析結果を確認できるため、適切な鏡吹付け厚を施工し、肌落ち災害の防止に貢献します。
適切な補助工法の迅速判断による地山トラブルの防止
切羽観察では確認できない切羽前方やトンネル周辺5mまでの地質分布図を高精度に可視化できるため、断層や弱層を事前に把握しながら、適切な補助工法により地山トラブルを防止できます。
- 発破やロックボルト施工時の穿孔データにより、切羽前方とトンネル周辺の高密度な地質情報として、地山の硬軟の指標となる破壊エネルギー係数を取得します。
- 地質の予測及び可視化には、地質分布の特徴を反映した空間補完が可能な「クリギング」という手法を利用するため、高精度な予測が可能です。
- クリギングの解析パラメータ(バリオグラム)を最適化することで、切羽前方やトンネル周辺5mまでの地質状況を高精度に可視化することができます。
適用実績
宮古盛岡横断道路 新区界トンネル工事
場所:岩手県宮古市〜盛岡市
竣工年:2019年8月
発注者:国土交通省東北地方整備局
規模:本坑全長4,998m 内空断面積94.9m2
避難坑5,045m 内空断面積15.5m2
国道45号 白井地区道路工事
(白井トンネル)
場所:岩手県閉伊郡普代村
竣工年:2019年3月
発注者:国土交通省東北地方整備局
規模:延長2,059m 内空断面積95m2
学会論文発表実績
- 「山岳トンネルのコンピュータジャンボの穿孔データに基づく情報化施工」,土木建設技術発表会2017概要集,日本トンネル技術協会,2017年
- 「画像解析によるトンネル切羽の剥離危険性の予測」,日本応用地質学会 平成30年度研究発表会 講演論文集,2018年
- "A Rapid Image Analyzing Method for Determining Crack Distribution and Interval on Tunnel Faces",the 10th Asian Rock Mechanics Symposium (ARMS10), 2018年
- "RealTime Evaluations of Tunnel Faces and Predictions of Geological Conditions Ahead of the Tunnel Face Based on Drilling Data",the 10th Asian Rock Mechanics Symposium (ARMS10), 2018年
- 「長大トンネルにおけるコンピュータジャンボを活用した合理的な施工と生産性向上への取り組み」,トンネルと地下,49巻,12号,2018年
スイリモ®
「水(すい)リサーチ・モニター」
切羽前方の突発湧水トラブルを、
先進ボーリングを用いた革新的な計測技術により回避!
山岳トンネル工事では、事前に予測し得なかった突発湧水に遭遇した場合、切羽崩壊のリスクや周辺地下水環境への影響などの懸念があります。しかし、地表からの探査では、地下水挙動を正確に評価することは困難です。そのため、施工中に切羽前方の地下水調査・モニタリングや湧水帯の位置等の地質の把握を行い、それに基づく有効な対策工の選定、実施が必要です。
鹿島では、トンネル坑内から孔長の異なる先進ボーリングを用いた湧水計測・モニタリングにより、施工段階に応じた適切な予測・対策の立案を行う総合的なトンネル湧水管理システム「スイリモ®」を開発しました。これにより、突発湧水トラブルを回避でき、安全なトンネル掘削が可能になります。
平成29年度岩の力学連合会賞 技術賞
特許登録済
- キーワード
- 地下水、山岳トンネル、湧水、モニタリング、先進ボーリング、湧水圧測定、湧水量測定
スイリモによる切羽前方の湧水情報を活用した計測管理
スイリモでは、施工段階に応じて3つのスイリモを使い分けます。初めに、500m以上の超長尺の水平コントロールボーリングに「超長尺スイリモ」を適用し、削孔中の口元湧水量と先端水圧を自動かつ連続的に把握します。これにより、湧水帯の位置や規模を事前に把握することができます。
次に、その湧水帯の手前150m程度の位置から先進ボーリングを実施し、これに「中尺スイリモ」を適用することで、湧水帯の水圧の正確な把握とトンネル掘削中の水圧変化の継続的なモニタリングを行います。これにより、掘削中の突発湧水に対する安全を確保すると共に、水抜きボーリング等、湧水対策工の検討を行うことができます。
最後に、切羽が湧水帯の30m以内に到達すると、ドリルジャンボによる削孔を行った孔に対し「短尺スイリモ」を適用し、湧水帯の水圧を測定し、水圧が十分低下していることを確認します。これらにより安全に湧水帯を突破することが可能になります。
特長・メリットココがポイント
超長尺スイリモ
超長尺ボーリング削孔時に、口元に電磁流量計を設置することで口元流量を自動かつ連続的に把握します。また、削孔ツールス先端に水圧計を内蔵したユニットを接続することで先端部の水圧を連続的に計測します。
- 従来までの手作業による断続的なアナログデータではなく、削孔中の連続的かつ定量的データを取得可能
- 削孔中の振動や高湧水圧にも対応した先端水圧測定装置を開発
中尺スイリモ
湧水帯の水圧を先進ボーリングで正確に測定するには、口元ではなく先端部へパッカーを設置し計測区間を隔離する必要があります。先進ボーリングは水平孔であることから、孔壁崩壊のリスクがありパッカー挿入が困難でしたが、今回開発した先端部へ確実にパッカーを設置させる機構により、水圧の定量的な連続モニタリングが可能です。
- 削孔鋼管を引き抜かず、削孔鋼管を保孔管として利用
- パッカーの付いた鋼管を削孔鋼管の中に通し、ビットを押し出した後、パッカーを拡張させる機構を開発
短尺スイリモ
ドリルジャンボで削孔した孔の口元にパッカーを挿入し、水圧の定量的な計測を行います。
- 計測装置のユニット化により、湧水圧測定を迅速、容易に実施可能
適用実績
新名神高速道路 箕面トンネル西
場所:大阪府箕面市
竣工年:2018年2月
発注者:西日本高速道路
規模:試験適用 超長尺スイリモ
新東名高速道路 羽根トンネル
場所:神奈川県秦野市
竣工年:2020年5月
発注者:中日本高速道路
規模:試験適用 中尺スイリモ
北陸新幹線 新北陸トンネル
場所:福井県敦賀市
竣工年:2022年7月
発注者:鉄道建設・運輸施設整備支援機構
規模:試験適用 中尺スイリモ
学会論文発表実績
- 「超長尺ボーリングを利用したトンネル切羽前方の湧水状況計測システムの適用」,第14回岩の力学国内シンポジウム,2017年
- 「トンネル切羽前方地下水の新しい調査・評価方法について」,地盤工学会誌,Vol.66,No.2,2018年2月
- "Innovated Monitoring System of Ground Water Information Ahead of Tunnel Face",the 10th Asian Rock Mechanics Symposium (ARMS10),2018年