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山岳トンネル技術

施工技術

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2ノズル吹付け機
「ツインショット工法®

2台の吹付けロボットにより、吹付け時間を半分に短縮

トンネル工事において、崩落性の高い地山では吹付けと支保工によって、早期に地山を補強して安定させる必要があります。最近の工事では、肌落ちや落石防止対策として切羽の全面にコンクリートを吹付けることや、軟弱な地山ではコンクリートの吹付けを厚くすることにより、吹付け作業に多く時間がかかる事例が増加しています。

鹿島では、吹付け・支保工作業時間を大幅に短縮するために、エレクタ付2ノズル吹付け機を開発しました。本機は、2台の吹付けロボットと、支保工を設置するためのエレクタ装置を装備したもので、従来の吹付け機の2倍の吹付け能力を有しています。これにより、急速施工や、崩落防止が早期に必要な軟弱な地山における迅速な補強が可能です。

特許出願中

図版:2ノズル吹付け機

2ノズル吹付け機

キーワード
吹付け、支保工、サイクル短縮、吹付け機、エレクタ、吹付けロボット、コンクリートポンプ、クリアショット

機械概要・採用工事

2ノズル吹付け機は、コンクリートを吹付けるための2台のロボットとコンクリートポンプ、支保工を設置するためのエレクタ装置とマンケージ装置を装備しています。本機の使用によって、吹付け作業時間が従来に比べて約半分になるほか、吹付けと支保工設置作業に伴う機械の入れ替えが不要になるため、サイクルタイムの大幅な短縮が可能です。同機にはタイヤ式の他、より軟弱な地山に適した履帯式があり、多様なニーズに対応できます。また、クリアショットを使用した高速低粉じん吹付け工法にも適用可能です。2ノズル吹付け機は、これまでに国交省圏央道山口トンネル(千葉県)、愛知県岩古谷トンネル(愛知県)、三重県矢頭峠トンネル(三重県)、鉄道運輸機構長崎新幹線彼杵トンネル(長崎県)で既に使用されており、サイクルタイム短縮と、軟らかい地山の早期安定化に成果を上げています。

図版:2ノズル吹付け機(タイヤ式)

2ノズル吹付け機(タイヤ式)

図版:2ノズル吹付け機(履帯式)

2ノズル吹付け機(履帯式)

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特長・メリットココがポイント

急速施工と地山の早期安定化が可能

2台の吹付けロボットを装備したエレクタ付吹付け機による急速施工、地山の早期安定化が可能です。

  • 従来に比べて2倍の吹付け能力を有しており、サイクルタイム短縮による急速施工が可能です。
  • 崩落性の高い軟弱な地山に対しても、迅速な吹付け作業によって、早期に地山を安定化させることができます。

図版:吹付け状況

吹付け状況

適用実績

図版:圏央道山口トンネル

圏央道山口トンネル

場所:千葉県市原市

発注者:国土交通省関東地方整備局

規模:内空面積(代表値)65m2 延長675m

図版:三重県矢頭峠トンネル

三重県矢頭峠トンネル

場所:三重県津市

発注者:三重県津建設事務所

規模:内空面積(代表値)45.5m2 延長1,637m

図版:一般国道473号岩古谷トンネル

一般国道473号岩古谷トンネル

場所:愛知県北設楽郡

発注者:愛知県建設部

規模:内空面積(代表値)76.5m2 延長1,287m

図版:彼杵トンネル

彼杵トンネル

場所:長崎県東彼杵郡

発注者:鉄道建設・運輸施設整備支援機構

規模:内空面積(代表値)64m2 延長3,520m

SENS

北海道新幹線津軽蓬田トンネルにてSENS適用

津軽蓬田トンネルは、北海道新幹線新青森・新函館(仮称)間の青森県東津軽郡蓬田村から外ヶ浜町に至る延長6,190mシールド外径11.3m の大断面トンネルです。本トンネルの地質は、未固結な砂を主体としており、土砂崩壊や流砂による切羽の不安定化が予想されました。そのため、安全性、施工性および経済性に優れたSENS(シールドを用いた場所打ち支保システム)による機械化施工が採用されました。

津軽蓬田トンネルは、2009 年11 月から掘進を開始しました。1ヶ月の掘進速度は最大367.5mを記録し、6,000m以上の長大トンネルを35 ヶ月というスピードで到達しました。そして、SENS では日本初となる地上発進・地上到達を成功させました。

特許出願中

図版:地上到達の様子

地上到達の様子

キーワード
SENS、地上発進、地上到達、場所打ち支保システム、高速掘進

SENSとは

SENS とは、シールド工法の安定性と施工性、NATM の経済性を併せ持った工法です。密閉型のシールドマシンにより切羽の安定性を図りながら掘進を進め、並行してマシンのテール部で一次覆工となる場所打ちコンクリートを打設、一次支保材として地山を保持しながらトンネルを構築します。一次覆工の安定を計測により確認したのち、NATM と同様に、漏水処理工と二次覆工を施工してトンネルを完成させます。

シールド工法と比較して、セグメントが不要となるためコストを低減することができますが、場所打ちコンクリートにて一次覆工を行うため、高度な施工管理が要求されます。工期的にはNATMの倍以上のスピードで施工することができます。

図版:SENS設備配置図

SENS設備配置図

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特長・メリットココがポイント

国内初となる大断面シールドマシンの地上発進・地上到達

同トンネル工事では、大断面シールドマシンとして国内初となる小土被り(5m、掘削外径比0.4D)の地上発進・地上到達を行いました。

地上発進・地上到達工法は、立坑や開削などに必要とされる施工ヤードを最小限におさえることができるほか、工期短縮、コストダウンが可能です。

図版:地上発進の状況

地上発進の状況

含水未固結地山での高速掘進

NATMでは、掘削面が解放されているため、含水未固結地山では安定して掘削ができません。SENSでは、シールドマシンで掘削面を安定させて機械掘削できるため、高速での掘進が可能となります。このため、NATMに比べ、2倍以上の掘進速度で掘削が可能です。

  • 1ヶ月間の最大の掘進速度367.5m
  • 平均掘進速度190m/月

図版:施工概念図

施工概念図

コスト縮減

シールド工法と比較して、セグメントが不要となるためコストを縮減できます。また、NATMでは掘削面を安定させる補助工法が必要となるため、ほぼ同程度のコストとなります。

  • シールド工法よりも安価
  • NATMと同程度で工期短縮が可能

適用実績

図版:津軽蓬田トンネル

津軽蓬田トンネル

場所:青森県東津軽郡

発注者:鉄道建設・運輸施設整備支援機構

規模:シールド外径11.3m 延長6,190m

学会論文発表実績

  • 「シールドを用いた場所打ち支保システムにおける一次覆工コンクリートの打設を模擬した大型実験」,土木学会第22回トンネル工学研究発表会,2012年

連続ベルトコンベヤシステム

新世代クラッシャと大容量ベルトコンベヤにより作業環境と安全性向上

山岳トンネル工事のずり運搬は、ダンプトラックによるタイヤ方式が一般的です。一方、トンネルの長大化に伴い、ダンプトラック台数の増加による坑内環境の悪化、安全性、CO2排出等の課題に対して、ずり運搬に連続ベルトコンベヤを使用する事例が増加しています。しかし、連続ベルトコンベヤを使用する場合、ベルトコンベヤに載せるために発破で発生した岩石を破砕するためのクラッシャの破砕能力確保や、設備の適切な維持管理が、非常に重要となります。鹿島では、破砕能力が高く、維持管理が容易な硬岩対応クラッシャと、大容量ベルトコンベヤを採用した独自の連続ベルトコンベヤシステムを構築し、ずり運搬作業の効率化と作業環境の改善を図ります。

特許出願中

図版:連続ベルトコンベヤシステム

連続ベルトコンベヤシステム

キーワード
ずり運搬、ずり出し、ベルトコンベヤ、クラッシャ、ベルト管理、坑内環境、安全、CO2削減

システム概要・採用工事

山岳トンネルにおける連続ベルトコンベヤによるずり運搬では、とりわけ地山が硬い場合に、クラッシャの破砕能力が低下して、ずり出しサイクルに影響を与えることが課題となっていました。また、明り工事で多く使用されている大型のクラッシャは、エンジン駆動であるためトンネル内での使用が困難でした。鹿島は、明り工事で多く使用され、硬岩の破砕に定評のあるヨーロッパ製のクラッシャをトンネル仕様として開発し、大容量の連続ベルトコンベヤシステムに適用しました。本システムは、国交省堅苔沢トンネル(山形県)、北海道開発局音威子府トンネル(北海道)、NEXCO中日本新東名徳定トンネル(愛知県)等で使用され、成果を上げています。

図版:システム概要図

システム概要図

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特長・メリットココがポイント

硬岩対応の新世代クラッシャ

硬岩対応の新世代クラッシャをトンネル向けに開発しました。

  • 硬岩に対する破砕能力の評価が高いエンジン式クラッシャを電動化することにより、トンネル仕様に適合しました。
  • 油圧式のクラッシャ調整機能、マルチモニタを搭載した新世代クラッシャの優れた操作性により、ダウンタイムを大幅に削減できます。

図版:硬岩対応クラッシャ(トンネル仕様)

硬岩対応クラッシャ(トンネル仕様)

適用実績

図版:東北自動車道堅苔沢トンネル

東北自動車道堅苔沢トンネル

場所:山形県鶴岡市

竣工年:2011年3月

発注者:国土交通省東北地方整備局

規模:内空面積(代表値)74m2 延長1,993m

図版:音威子府トンネル

音威子府トンネル

場所:北海道中川郡

発注者:国土交通省北海道開発局

規模:内空面積(代表値)76m2 延長2,699m

図版:新東名高速道路徳定トンネル

新東名高速道路徳定トンネル

場所:愛知県新城市

発注者:中日本高速道路

規模:上り線568m 下り線576m

長孔発破技術

挿角照射システムを利用した長孔発破による高速施工

山岳トンネルで工費・工期を短縮するためには施工サイクルの短縮が重要であり、その中で、硬岩地山での1発破掘進長(従来はBパターンで2m)を延長する技術の確立が求められています。

しかし、1発破掘進長を延長した場合には、発破孔のせん孔精度に起因して余掘りが増加する傾向にあり、これを如何に克服するかが、長孔発破施工を実現する上での課題でした。

そこで、通常トンネル現場にあるトータルステーションを用いてせん孔精度を向上させる技術を開発しました。実際の現場にも適用して、余掘りを低減した上で長孔発破を実現できることを確認しました。

特許出願中

図版:長孔発破状況

長孔発破状況

キーワード
長孔発破、挿角照射システム、逢神曽根トンネル

挿角照射システムの概要

挿角照射システムは、鹿島とソーキが共同開発した技術です。システムを利用した挿角制御の手順は以下のとおりです。

①切羽後方に設置したトータルステーションにより切羽面のせん孔位置にスプレーマーキングします。
②ドリルジャンボのビットをマーキング位置にセットします。
③各孔毎に、ガイドセルの後端に備えたターゲット版に向けて削孔角度が正しくなる位置にレーザー照射します。
④ガイドセル後端の位置をセットして削孔を行います。
外周孔(払い孔)に対して上記手順を繰り返して行います。

以上により、外周孔(払い孔)の削孔精度が向上し、余掘りを抑えた長孔発破が実現します。

図版:挿角照射システムの概念図

挿角照射システムの概念図

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特長・メリットココがポイント

余掘量の軽減が可能

  • 挿角照射システムを採用することで、6mの長孔発破を施工した区間で、余掘り量を平均200mmに抑えることができました。

図版:余掘り量の実測値(6mの長孔発破)

余掘り量の実測値(6mの長孔発破)

周辺地山の緩みを最小化

  • 長孔発破施工時には挿角照射システムと同時に、外周孔(払い孔)ではスムースブラスティングを採用しました。その結果、通常の1発破掘進長2mの箇所と比べて6mの長孔発破の箇所では、周辺地山の緩みを同程度に抑えることができました。

図版:坑壁弾性波探査による緩み領域の調査結果

坑壁弾性波探査による緩み領域の調査結果

適用実績

図版:熊野尾鷲道路逢神曽根トンネル

熊野尾鷲道路逢神曽根トンネル

場所:三重県尾鷲市~熊野市

発注者:国土交通省中部地方整備局

規模:延長2,360m 掘削断面積72.5~94.2m2

学会論文発表実績

  • 「トンネル掘削における6m長孔発破」,火薬と保安,Vol.44,No.2,(社)全国火薬類保安協会,2012年

無水削孔システム
「WALDIS®

水を使わず空気を利用した削孔で、地山の緩みを防止

都市部のような地質の悪い場所で山岳トンネル工法を用いてトンネルを構築する場合、地山のゆるみ防止や切羽安定、地表面沈下防止のため、補助工法として地盤に削孔した孔に鋼管等などを挿入してセメントなどを注入することにより地山を補強し安定させます。

この時、通常は大量の削孔水を使用するため、水により劣化しやすい地質では、周辺の地山を緩めたり、予定された直径以上の孔があいてしまうため、注入材が十分充填されなかったり、地山の支保能力を高められないなど品質面の問題がありました。鹿島が開発した無水削孔システム(WALDIS:WaterLess Drilling System)は、水の代わりに圧縮空気を用いることにより、品質の高い補助工法が施工できるため、地山を補強し安定させた状態で安全にトンネルの掘削ができます。

特許登録済

図版:無水削孔施工状況

無水削孔施工状況

キーワード
補助工法、削孔、先受け工、薬液注入、軟弱地山、切羽安定、ゆるみ防止、沈下防止、ドリルジャンボ

システム概要・採用工事

一般に補助工法としてドリルジャンボを用いて削孔し鋼管を挿入する場合、鋼管(外側の管)とインナー管(内側の管)の二重管で削孔します。その際、先端の掘削用の刃に土が詰まるのを防止すると同時に、掘削時に発生する土を排出するため、大量の削孔水(毎分約70リットル)を使います。これに対して、本システムでは削孔水の代わりに圧縮空気を使用します。インナー管には圧縮空気を送り込むための装置(スイベル)を装着して、先端部分に送った圧縮空気を逆噴射させ鋼管とインナー管の間を逆流させて排出する仕組みを開発し、逆噴射による強い吸引力により土を吸込み排出するシステムとなっています。このため、設計通りの孔を構築できるので、地山のゆるみ防止や切羽安定、地表面沈下防止が確実に行えます。なお、本システムは、鉄道運輸機構九州新幹線新田原坂トンネル(熊本県)に採用されました。

図版:システム概要図

システム概要図

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特長・メリットココがポイント

水の代わりに圧縮空気を用いた確実な削孔

  • 削孔水を使用しないため、周辺地盤を緩めることなく、スムーズな削孔を実現します。
  • 設計通りの削孔により注入ロスが減少するため、従来の削孔に比べ高い地盤改良効果が期待できます。

図版:削孔状況の比較

削孔状況の比較

トンネル汎用機械に簡単に装着可能

  • トンネル汎用機械であるドリルジャンボにWALDIS用アタッチメントを装着するだけでシステムを適用できます。特殊技能を必要としないため、通常の削孔手順で施工できます。

図版:削孔装置

削孔装置

適用実績

図版:新田原坂トンネル

新田原坂トンネル

場所:熊本県鹿本郡

竣工年:2009年9月

発注者:鉄道建設・運輸施設 整備支援機構

規模:内空面積(代表値)65m2 延長2,940m

学会論文発表実績

  • 「無水削孔によるAGF施工の効果について」,土木学会第62回年次学術講演会,2007年

Me-fix®(Metal Eco)工法

高摩擦型鋼管を用いて確実に切羽補強

近年、不良地山であっても、大断面で掘削を行い、早期に切羽を併合することで安全に掘削する事例が、多くなっています。不良地山を大断面で掘削するには、長尺先受け工や長尺切羽補助工で、切羽を安定させることが重要です。しかし、従来の通常鋼管を用いた切羽補強工では、地山と鋼管周囲に十分な付着耐力を確保できませんでした。

鹿島が開発した、「Me-fix工法」は従来の通常鋼管を用いた切羽補強工の弱点である付着耐力を、鋼管表面を縞形状とする事で向上させ、確実な地山拘束力が期待できる鋼管切羽補強工です。長尺切羽補強工で切羽を安定させることで、不良地山でも大断面で合理的に施工できるようになりました。

※Me-fixは、株式会社ケー・エフ・シーの登録商標です。

特許登録済及び特許出願中

図版:Me-fix工法

Me-fix工法

キーワード
長尺切羽補強工、鏡ボルト、切羽安定、補助工法、付着耐力

開発工法の概要

切羽補強工に使用する補強材は、地山の挙動に伴って発生する解放応力にバランスよく抵抗することが必要で、地山と定着材との付着耐力と、定着材と鋼管との付着耐力、および鋼管の継ぎ手部の引張り耐力のバランスが重要な要素となります。

本工法は、従来の鋼管切羽補強工の弱点とされてきた鋼管と定着材間の付着耐力の問題を、ボルトの表面形状を縞鋼板とすることにより解決しました。また、継手部の引張り耐力も、接続部の加工を工夫することにより、従来の補強鋼管(5.2mm)に比べて薄肉(4.5mm)であるにも関わらず、引張剛性は高くなっているのが特徴であり、軽量となったため施工性・経済性の向上にも寄与できる材料です。さらに、鋼管にはスリットを設けてあるため、鋼管切羽補強工法の利点である鋼管と定着材の分別回収を従来よりも容易に行える工法です。

図版:縞付き鋼管の表面形状

縞付き鋼管の表面形状

図版:回収性能を高めるスリット

回収性能を高めるスリット

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特長・メリットココがポイント

優れた補強効果が期待できる高い付着耐力

原位置引抜き試験を行い、従来の通常鋼管とMe-fix鋼管の付着耐力を比較しました。定着材にはプレミックスモルタル(一軸圧縮強さ12N/mm2 材令24hr)と3倍発泡のシリカレジン(一軸圧縮強さ4N/mm2)を使用しました。

  • Me-fix鋼管は通常鋼管よりも、プレミックスモルタルでは9~10倍の、シリカレジンでは5倍の付着耐力が得られることがわかりました。

図版:付着耐力

付着耐力

安全性の高い施工を実現

3次元数値解析によりMe-fix鋼管と通常鋼管の補強効果を比較検証しました。

  • 通常鋼管を用いた従来工法では鏡ボルトを打設後6m掘進した時点で塑性領域がトンネル上方に発達し、地山が崩壊し、1シフト長(9m)の掘進が不可能となりました。
  • 上記のような地山でも、Me-fix鋼管を用いることで9m掘進した時点でも、塑性領域は切羽周辺のみに抑制され、安全な施工が可能となることを確認しました。

図版:3次元数値解析結果

3次元数値解析結果

鋼管と定着材の分別回収が可能

鋼管表面に一定間隔のスリットを設けることで、写真のように鋼管と定着材の分別回収を可能にしました。

  • 鋼管切羽補強工法の利点である鋼管と定着材の分別回収を従来よりも容易に行えます。
  • 産業廃棄物量を抑制できます。

図版:分別回収状況

分別回収状況

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適用実績

図版:万日山トンネル

万日山トンネル

場所:熊本県熊本市

竣工年:2011年11月

発注者:熊本県

全延長:884m

図版:さがみ縦貫城山八王子トンネル

さがみ縦貫城山八王子トンネル

場所:神奈川県相模原市

竣工年:2012年3月

発注者:国土交通省関東地方整備局

全延長:7,148m

図版:立江トンネル

立江トンネル

場所:徳島県小松島市

竣工年:2011年4月

発注者:国土交通省四国地方整備局

全延長:954m

図版:北の峰トンネル

北の峰トンネル

場所:北海道富良野市

竣工年:2013年3月

発注者:国土交通省北海道開発局

施工延長:2,928m

学会論文発表実績

  • 「縞付き鋼管による切羽補強工法の開発」,トンネル工学報告集,第20巻,2010年
  • 「遠心模型実験と数値解析を用いた縞付き切羽補強工の補強効果検証」,土木学会論文集F1(トンネル工学)特集号vol.67,2011年
  • "Verification of reinforcing effects of a tunnel face reinforcement method by centrifuge model tests and numerical analysis",12th ISRM International Congress on Rock Mechanics,2011年

秒時現場設定型高精度電子雷管
「eDev®Ⅱ」

住宅地に近接した現場で振動・騒音をコントロール

近年の山岳トンネル工事は、市街地や民家に近接するものが増えています。掘削に伴って発生する周辺環境への振動や騒音等を軽減する観点から、特に坑口部や市街地通過部においては、振動や騒音を抑えた「周辺環境に優しい発破」が求められています。

そこで鹿島は、Orica社製の秒時現場設定型高精度電子雷管「eDev®Ⅱ」を住宅地に近接するトンネル現場での発破作業に適用し、様々なデータを蓄積しながら、高度な制御発破方法を確立しました。

特許登録済
NETIS KT-140090-A

図版:Orica社製 秒時現場設定型高精度電子雷管「eDev®Ⅱ」

Orica社製 秒時現場設定型高精度電子雷管「eDev®Ⅱ」

※「eDev」はOrica Explosives Technology Pty Ltdの登録商標です。

キーワード
制御発破、秒時現場設定型高精度電子雷管、発破振動対策
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「eDevⅡ」を用いた高精度な制御発破の概要

発破による振動・騒音を低減するためには、装薬孔数を増やし1孔あたりの火薬量を少なくする制御発破が効果的です。ただしその効果を上げるためには、発破の振動・騒音波形が重なり合うことなく確実に分離されることが求められます。また、発破振動や騒音の体感的な不快感を低減させるためには、起爆秒時間隔をできるだけ短く設定し、発破の継続時間を短くすることが有効です。しかし、従来のトンネル発破用電子雷管は、標準的な秒時間隔が30ms(30ミリ秒:1000分の30秒)に固定されており、発破孔全孔を分割して爆破させると、トータルの発破継続時間が長くなります。また、発破を分割できる数(段数)にも制限があり、一段あたりの火薬量が多くなるなど、課題がありました。

「eDevⅡ」は、秒時精度(設定秒時±0.01%)が高く、また、秒時間隔を現場で1ms(1ミリ秒:1000分の1秒)単位に設定できるという特長を有しており、鹿島ではその優位性に着目、住宅地に近接するトンネル現場の制御発破に本格的に適用しました。

図版:制御発破振動の時間波形と周波数特性

制御発破振動の時間波形と周波数特性

特長・メリットココがポイント

起爆秒時間隔を現場で1ms単位に設定

eDevⅡは、起爆秒時間隔を1ms(1ミリ秒:1000分の1秒)単位で設定でき、かつ、現場にて任意に設定できます。

一連の発破試験を通じて振動値や周辺特性などのデータを蓄積した結果、先行起爆孔と後続起爆孔の振動波形が重なり合うことによる振動の増幅を回避しつつ、それぞれの起爆秒時間隔を可能な限り小さくすることで発破継続時間を短縮し、振動値と振動体感をともに抑える発破方法を確立しました。

低周波音圧レベルを4~5dB低減

起爆秒時間隔を短くかつ切れ目なく連続的に設定し、発破の継続時間を1秒程度に抑えるとともに、発生する発破騒音を高周波数帯にシフトさせた結果、工事ヤード外の住宅地における低周波音圧レベルが、従来の雷管と比較し4~5dB低減されました。また、高周波数帯に対して効果が高いとされる、防音扉や防音壁による発破騒音の減衰効果を高めることも確認できました。

図版:「eDev®Ⅱ」現場適用イメージ

「eDev®Ⅱ」現場適用イメージ

適用実績

図版:一級河川安永川トンネル

一級河川安永川トンネル

場所:愛知県豊田市秋葉町ほか地内

竣工年:2015年2月

発注者:愛知県豊田市

規模:トンネル延長L=1,860m 掘削工法TBM導坑及びNATM拡幅 内空断面積70m2

図版:新名神高速道路 箕面トンネル

新名神高速道路 箕面トンネル

場所:大阪府箕面市

竣工年:2018年2月

発注者:西日本高速道路関西支社

規模:トンネル延長 上り線2,576.5m 
下り線2,524m 内空断面積68m2

学会論文発表実績

  • 「高精度秒時電子雷管を用いたトンネル坑口部の周辺環境に優しい発破について」,火薬と保安,2014年11月
  • 「高性能自在制御発破工法の低周波音低減効果について」,トンネル工学報告集

NATBM®
(ナトビーエム)

TBMとNATMの優れた機能を兼ね備えた“NATBM掘削機”を開発

トンネル掘削の代表的な工法である、高速掘進が特長の「TBM」と、地質が複雑な地山に柔軟に対応できる「NATM」のそれぞれの優れた機能を兼ね備えた、“NATBM(ナトビーエム)掘削機”(特許出願中)をコマツと共同で開発しました。

硬質な地山で高速掘削が可能なTBMは、これまで、日本国内では地質が複雑で不良地山が介在するため、補助工法の施工により掘削を停止することが多く、TBMの高速掘削のメリットを十分に活かすことができませんでした。一方NATMは、TBMに比べて掘削速度は劣りますが、トンネル切羽を直接目視で確認しながら、地山の性状に合せて支保パターン(鋼製支保工・吹付けコンクリート・ロックボルト)を選定することで、不良地山に対し柔軟に対応できる工法です。

そこで鹿島はコマツと共同で、「高速掘進可能なTBMの機能」と「不良地山にも柔軟に対応できるNATMの機能」を併せ持つ新たな掘削機の開発を行い、さらなる施工の合理化を可能にしました。

2023年度エンジニアリング功労者賞
特許登録済及び特許出願中

図版:高速掘進のTBMモード

高速掘進のTBMモード

図版:安定掘進のNATMモード

安定掘進のNATMモード

キーワード
TBM、NATM、不良地山、高速掘進、施工の合理化、ハイブリッド型TBM、バケット式掘削機、地山崩落、
押出し、テレスコピック構造、QCDS
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世界初のハイブリッド型TBMで不良地山を突破!

NATBM掘削機は、硬質な地山を掘削する際にTBMモードで高速掘進を行い、不良地山に遭遇した場合はNATMモードに切り替え、掘削を行います。カッタヘッドを開口して内部に装備したバケット式掘削機を前面に出して地山を掘削したあと、支保工を構築しながら安定的に掘進できるこれまでにない掘削機です。これにより、掘削直後、地山が緩む前に支保工で地山を抑えることができるため、脆弱な不良地山で発生する地山崩落や押出しで掘削機が停止するのを回避でき、工期やコストの縮減が期待できます。

NATBMの特徴

① TBMからNATMへの速やかな切り替え

  • 地質の変化に応じて、TBMモードからNATMモードへわずか1.5日で切り替えが可能

図版:TBMからNATMへの速やかな切り替え

② 用途にあわせたカッターヘッドの段階的な開口

  • 前方探査や軽微な切羽補強時には、カッターヘッド上部を小さく開口
  • NATMモードでは、カッターヘッド中央部を大きく開口

前方探査・軽微な切羽補強時とNATMモード切替時

③ NATBMの後退機能

  • NATBM本体は伸縮可能なテレスコピック構造のため、マシンが後退でき、NATMモードにおける前方の掘削作業スペースを確保

TBMの後退機能

TBMの後退機能

④ 不良地山はNATMモードで、地山が緩む前に支保を構築しながら安全、確実に掘進

  • NATBMのカッターヘッドの中央を開口し、内部に装備したバケット式掘削機およびブレーカを出して掘削
  • 掘削後、速やかに支保(鋼製支保工、吹付けコンクリート)を構築し、不良地山の緩みや崩壊を防止

バケット式掘削機で掘削

バケット式掘削機で掘削

掘削後に支保を構築

掘削後に支保を構築

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QCDSの向上による効率的なトンネル掘削作業を実現

  • これまでの山岳トンネルとは異なる、安全・クリーンな作業環境下でトンネルを掘削します。
  • 熟練作業者への依存度が低く、機械による苦渋の無い掘削作業が可能です。
  • 不良地山での地山崩落や押出しで掘削機が停止するのを回避でき、工期や工費の縮減が期待できます。

Q

・地山を傷めずに掘削、掘削後すぐに支保を設置するので地山を緩めず、長期耐久性が向上

C D

・不良地山部での地山崩落やTBM機の拘束を回避

・掘削停止や補助工法追加による工期遅延やコストアップを防止することが可能

・機械化・ICT化による生産性向上でコスト削減が可能

S

・機械化・ICT化された苦渋の無い掘削方法により、熟練作業者への依存度が低い

・地山直下の作業が激減

・切羽付近での重機の入れ替え作業がない

・ベルコンによるずり出しを標準とするため、ずり出し車両が坑内を走行しない

適用実績

図版:新姫川第六発電所新設工事のうち土木工事(Ⅱ工区)

新姫川第六発電所新設工事
のうち土木工事(Ⅱ工区)

場所:新潟県糸魚川市

工期:2017年7月~2022年10月

発注者:黒部川電力

規模:TBMトンネル(Φ4,750mm、L=3,718m)他

学会論文発表実績

  • 「NATM機能付きTBMの実現場への適用(その1) ─新しいTBMの導入─」,土木学会,第75回年次学術講演会,2020年
  • 「NATM機能付きTBMの実現場への適用(その2) ─NATM支保設計─」,土木学会,第75回年次学術講演会,2020年
  • 「NATMへの切替機能を兼ね備えたTBMの施工 ─新姫川第六発電所導水路トンネル─」,トンネルと地下,52巻,1号,2021年

最適自動発破設計システム

岩盤データと理論に基づく評価式に従い、最適な発破を実現

山岳トンネルにおける発破は、近年コンピュータジャンボ導入が進むものの、暗黙知に頼らず岩盤性状に応じた合理的な発破ができているとは言い難い状況でした。そこで、担当者の発破経験によらず地山データに基づき適切な発破を自動で実践するシステムを開発しました。

本システムでは岩盤性状に対し、適切な爆薬量と穿孔配置を決定する評価式を構築しており、これを核として穿孔時の岩盤データから、最適な穿孔数・配置・装薬量を自動生成し、最適発破を実践します。

さらに発破後の出来形スキャン等、発破結果の一元化システムも構築しており、地山変化や発破良否の傾向を把握し、以降の発破へのフィードバックが可能です。

特許登録済

図版:最適自動発破設計の実践

最適自動発破設計の実践

キーワード
山岳トンネル、発破、コンピュータジャンボ、発破設計、最適化
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最適自動発破設計システムの構成

最適発破は①発破データ(穿孔情報や出来形)を定量化し、②そのデータを一元化して見える化し、評価・分析を行ったのち、③その分析結果に基づき最適自動発破設計システムで穿孔・装薬の設計改善を図るというサイクルを回します。

①最適発破の実践
発破指示書を受信したコンピュータジャンボが、指示書通りに自動で穿孔し、各孔に装薬します。発破後には、掘削断面を3Dスキャナで測定し、余掘量が算出されます。

②結果分析/評価
直前の発破で得られた岩盤性状と余掘量データに、蓄積された施工データを加えて分析・評価し、次の発破計画にフィードバックします。

③最適発破設計
岩盤性状データを本システムに入力することで、最適な穿孔数と配置、装填する火薬量などが自動生成され、発破指示書が完成します。この指示書がコンピュータジャンボに送信されます。

図版:最適発破のサイクル

最適発破のサイクル

図版:最適発破設計の現場運用フロー

最適発破設計の現場運用フロー

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特長・メリットココがポイント

限界半径の理論解に基づく
穿孔/装薬設計

岩盤データに基づく合理的な発破設計のため、理論解に基づく評価式を確立しています。

発破設計の因子として岩盤条件・穿孔条件・装薬条件の3条件がありますが、評価式では、これらの因子より、発破孔1孔の起爆が周辺岩盤に及ぼす破壊影響領域(限界半径)を求め、これにより最適な孔間隔を決定します。

図版:破壊影響領域(限界半径)の概念

破壊影響領域(限界半径)の概念

発破見える化システム

発破見える化システムは、発破結果が想定通りに得られているか確認するため、発破条件と結果を一元化し、発破良否の傾向を把握することができます。

これにより元々ばらつきの多い発破結果を統計的に評価でき、要因分析も容易になり、次発破以降の有効な対策を講じることができます。

図版:発破見える化システム

発破見える化システム

最適自動発破設計システム
導入による効果

最適自動発破設計システムを導入したことにより、岩盤性状の変化に応じて穿孔数・装薬量を適正化することができました。システム導入前に比べ、穿孔時間を25%、装薬時間を15%削減でき、発破全体にかかるサイクルタイムを20%削減した実績を得ています。また、余堀量も60%低減したことを確認しています。

図版:最適自動発破設計システム導入による効果

最適自動発破設計システム導入による効果

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適用実績

図版:能越道 鷹ノ巣山2号トンネル

能越道 鷹ノ巣山2号トンネル

場所:石川県輪島市

竣工年:2022年3月

発注者:国土交通省北陸地方整備局

規模:トンネル掘削延長951m 
掘削断面積140m2(最大)

図版:神岡試験坑道

神岡試験坑道

場所:岐阜県飛騨市

発注者:鹿島

規模:トンネル掘削321.3m 
掘削断面積 アプローチ部43.9m2 
自動化施工試験部73.5m2

学会論文発表実績

  • 「山岳トンネルにおけるデジタル技術の活用(10)─地山データと理論解による最適発破設計システム─」,トンネルと地下,2024年1月号
  • 「自動化とデータ分析に基づく生産性の高いトンネル発破掘削の実践」,土木学会,第76回年次学術講演会,2021年

山岳トンネル技術 インデックス

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