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Chapter I 「うるおす」 PFIでつくる浄水場の再整備 川井浄水場再整備事業 土木・建築工事

健康で文化的な生活を送るために大切な上水道だが,
心臓部の浄水場など老朽化して更新期を迎えている施設も多い。
更新にあたってその機能を停止させるわけにはいかない。
日本で初めてPFI方式により進められている川井浄水場(横浜市旭区)再整備事業の現場を訪ねた。

地図

図:完成予想パース

完成予想パース

工事概要

川井浄水場再整備事業土木・建築工事

場所:
横浜市旭区
原発注者:
横浜市
発注者:
ウォーターネクスト横浜
設計・監理:
東京設計事務所
規模:
既存設備解体一式
(配水池,ろ過池,排水池ほか)
躯体工事
配水池 RC造 1池 有効貯水量3万t
膜ろ過棟 RC造 B2,3F 延べ7,458m2
排水処理棟 RC造 B1,2F 延べ1,010m2
基礎杭(既製杭) φ600~1,000 L=30m 
土木517本,建築90本 コンクリート約2万4,000m3 鉄筋約2,800t
配管工事 
(鋼管・ダクタイル管・SUS管)
総延長約1,800m (φ200~φ1500)
工期:
2009年6月~2015年3月
(横浜支店施工)
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現役最古参が生まれ変わる

1887(明治20)年,日本初の近代水道・野毛山浄水場が完成。このとき道志川・相模川の取水口から野毛山までの中間地点・川井に,浄水場へ原水を引き込む接合井が建設された。1901(明治34)年に川井浄水場が建設され,関東大震災で野毛山浄水場が崩壊して以降,現存する最古の浄水場として市民の喉を潤してきた。

その後,改修・改築を重ねてきたが,老朽化が著しく耐震性に問題があり,市の再整備方針で,全面的な更新となった。浄水処理に膜ろ過方式を導入して,環境にやさしく,より良質な水を安定して供給する浄水場に生まれ変わる。

●特別目的会社株主の役割分担

膜ろ過装置の製造, 機械・電気工事, 維持管理 メタウォーター株式会社
第三者委託受託, 維持管理 メタウォーター株式会社
ファイナンシャルアドバイザー, 財務管理 三菱UFJリース株式会社
汚泥有効利用管理 月島機械株式会社
機械・電気工事, 維持管理 東電工業株式会社
維持管理 東電環境エンジニアリング株式会社
エネルギーの供給(電力) 東京電力株式会社

●主な協力会社と役割分担

土木・建築工事 鹿島建設株式会社
設計, 工事監理 株式会社東京設計事務所

図:更新手順 既存施設の機能をいかしながら, 段階的に施設を整備する

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土木・建築の連携でPFIを推進

この事業は,日本で初めて浄水場施設全体の更新と運営・管理をPFI方式で実施。ウォーターネクスト横浜株式会社(特別目的会社:SPC)が資金調達を行い,当社が土木・建築工事を担当し,施設完成後に所有権を横浜市に移管したうえで,SPCがその施設の運転・維持管理を20年間行う。設計・建設・維持管理を一体とした事業で,トータルコストの削減を図る。

当社は,配水池・膜ろ過棟・排水処理棟及び配管などを施工する工事を担当。膜ろ過方式による生産水量17万2,800m3/日は,日本最大規模となる。配水池の屋上には太陽光発電パネルが設置され,浄水場で必要な動力エネルギーに供給される計画となっている。

工事全体を統括する冨士田道夫所長のもと,土木の山口留彦副所長と建築の野口信嗣副所長が,土木構造物と建築建屋による複合施設の施工を立体的に調整して進めている。

写真:右から冨士田道夫所長,  山口留彦副所長,  野口信嗣副所長

右から冨士田道夫所長, 山口留彦副所長, 野口信嗣副所長

横浜市の業務要求水準書にしたがって進められた実施設計では,「防水処理をしないコンクリート打放しの配水池躯体は,水密性が最重要であり,温度ひび割れ発生確率5%以下という厳しい条件が課せられた」と冨士田所長は振り返る。「基本計画段階で工事金額はすでに決まっている。要求水準実現のため着工までの設計期間に,発注者のSPC と設計者,施工者による三位一体の協力体制でV/Eを検討しました」。

写真:膜ろ過棟の鉄筋組立状況

膜ろ過棟の鉄筋組立状況

写真:流入管・流出管の施工状況。右は配水池部分

流入管・流出管の施工状況。右は配水池部分

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生きている施設を活かす

浄水場には,接合井や沈殿池,急速ろ過池,配水池などが稼動している。山口副所長は「既存施設を活かしながらの施工で,既設埋設管や電気ケーブル損傷時に備えた緊急体制が必要」という。「埋設物調査担当を任命して,リスクを整理し,緊急時の連絡・仮復旧方法も定めて,日常訓練を実施しています」と,日々新たな埋設物の調査と発見に目を光らせている。

杭打ちや基礎躯体工事が始まったばかりの建築工事。野口副所長は「土木の配管工事など工種間の調整も多く,建築にも土木の仕様や品質管理を取り入れて整備を進めています」と土木・建築一体工事の特徴を語る。「建築工事に続いてプラント設備工事となるため,配管の接続と既設管の切離しとなる3年後の施設稼働まで,気が抜けません」

構内には100年前のレンガ造のろ過池の遺構なども残っており,現場事務所前には当時の英国製の鋳鉄製配管を配したモニュメントも。竣工までの間,現場を訪れる人々を和ませる。

写真:100年前のレンガ造りの着水井

100年前のレンガ造りの着水井

写真:現場事務所前のモニュメント

現場事務所前のモニュメント

写真:掘り出された配管

掘り出された配管

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