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Chapter III 「くりかえす」 持続可能な仕組みをつくる技術とマネジメント

持続可能な循環型社会の実現のため,下水処理や廃棄物処理への省エネルギー,
省資源,再利用,減量化の仕組みが求められている。
当社は,基礎的研究段階から技術研究所をはじめ環境本部などの部署が連携し,
さらに実施に向けては環境分野専門のグループ会社が協力している。
低炭素社会の実現に向けた,技術開発や管理運営の取組みを探る。

低炭素社会実現のための未来型エネルギー~微生物燃料電池

下水処理施設や廃水処理プラントで生成するバイオガスのエネルギー活用はすでに実用化されているが,さらなる低炭素社会実現に向けて,より直接的でコンパクトなエネルギーの回収システムが求められている。

10年ほど前に電流を発生する微生物の存在が明らかになった。当社技術研究所では,この電気生成微生物に着目し,この微生物を利用した先端バイオテクノロジーに取り組んでおり,東京大学と共同で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の技術開発プロジェクトに参画した。

微生物燃料電池は,燃料電池の触媒として微生物を用いることで,有機物から直接電気を取り出すことができ,汚泥の発生が非常に少ない特徴がある。模擬廃水では約130W/m3の電力が確認された。実用化にはさらなる効率化など課題も残されているが,この技術で発電機のいらない電力回収型廃水処理プロセスが可能となる。21世紀のバイオマスエネルギー転換のカギを握る技術として期待されている。

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図:微生物燃料電池

写真:使用した小型微生物燃料電池試験装置

使用した小型微生物燃料電池試験装置

写真:開発したカセットエレクトロード微生物燃料電池

開発したカセットエレクトロード微生物燃料電池

図:将来のエネルギー回収型廃水・廃棄物処理システムの提案

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化石燃料を使わない下水汚泥の減量化~メタサウルス®

下水処理で発生する汚泥は,多くが産業廃棄物として民間に委託し,処分されている。下水道の普及に伴い,汚泥処分費用の増大が下水道事業財政を圧迫している。当社はこの課題に着目し,負担を軽減する下水汚泥の処理技術「メタサウルス®」を,三菱長崎機工(株)・(財)下水道新技術推進機構との共同研究で開発した。

下水汚泥の有機分を加水分解する,三菱長崎機工(株)の「水熱処理技術」と有機物を高速で消化する当社の「メタクレス:高温固定床式消化技術」を組み合わせた。下水汚泥を従来の脱水汚泥に比べて5分の1前後に減量化,消化槽の処理日数を20〜30日から5日に短縮する。必要な熱エネルギーはすべてメタサウルスで生成される消化ガスで賄える技術となる。

長崎市西部下水処理場内に実証プラントを設置し,2009年5月から実証実験を開始。2011年1月末終了まで延べ1万4,139時間稼働し,このほど実用化の目処がついた。3月末に(財)下水道新技術推進機構が交付する「新技術研究成果証明書」を取得。今後,下水汚泥処分に困っている自治体に対して積極的に技術PRを展開していく。

写真:実証プラント全景

実証プラント全景

図:システムフロー

システムフロー

水処理施設の設計から維持管理まで~カジマアクアテック

上下水道施設,廃棄物処分場,資源リサイクル施設などの環境インフラ施設の更新工事が増加している。近年,これらの整備事業では,事業主体である自治体や民間事業者から,施設の設計・施工のみならず維持管理まで一貫した取組みを求められるケースが増えており,公共インフラにおける官民連携(PPP)による整備が,積極的に進められている。

当社の環境系グループ企業のひとつであるカジマアクアテック(株)では,現在,北海道・石狩川流域下水道「奈井江浄化センター」をはじめ,全国で70件以上の当社施工の水処理施設で運転・維持管理業務を受託している。

鹿島グループは,設計・施工から維持管理まで一貫した業務で,PPPによる公共インフラの長期的で安定したサービスを支える。

図:設計,施工,維持管理のフロー

設計,施工,維持管理のフロー

写真:石狩川流域下水道奈井江浄化センター施設鳥瞰

石狩川流域下水道奈井江浄化センター施設鳥瞰

写真:中央監視。蓄積された実績に基づくきめ細かい運営管理

中央監視。蓄積された実績に基づくきめ細かい運営管理

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column 水をいかす“楽園”づくり~蓼科高原チェルトの森/鹿島リゾートの民間水道事業

八ヶ岳山麓南西に広がる「蓼科高原チェルトの森」(長野県茅野市)は, 1967年開発工事に着手した「南蓼科台別荘地」をルーツとする草分け的な別荘地である。晴天率の高い乾燥した気候で,夏の爽快感は“楽園”そのものだが,雨が少なく水利権が地域の課題とされていた。

チェルトの森のある古田山地区には流れ清水と呼ばれる湧水があり,農業利用されなかったので,別荘地の水道用の水源として活用した。民間による水道事業の先駆けとして,井戸のボーリング技術が確立されていない当時,湧水利用は別荘地のセールスポイントとなった。

別荘地内外には,鳴岩川・矢元川・樽日影川・柳川が流れる。サンショウウオが生息するという湧水は,周辺地区からも水汲みに訪れる名水。湧水及び地下水の6ヵ所の水源から,12ヵ所の配水地などを経由して,約1,400戸の別荘に,計画給水量約 2,044m3を供給し続けている。

写真:八ヶ岳を望む別荘地「蓼科高原チェルトの森」(鳴岩地区)

八ヶ岳を望む別荘地「蓼科高原チェルトの森」(鳴岩地区)

写真:苔生した森の中を流れる湧水のせせらぎ

苔生した森の中を流れる湧水のせせらぎ

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