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昨年度の建築設計本部新入社員が,「第25回建築環境デザインコンペティション」(東京ガス主催)
最優秀賞を受賞しました。設計事務所や建設会社の社員,建築専攻の学生など,将来有望な若者たちを中心に,
想像力あふれる高いレベルの作品が寄せられることで注目されるコンペです。
作品『まわり窯のレシピ』に込められた熱い思いを,チームの皆さんから伝えてもらいましょう。

構想まで

私たちは,新入社員研修という枠組の中で,当コンペに挑戦する機会を得ました。建築家・隈研吾氏を筆頭に,錚々たる審査員の方々より与えられた課題は「場所に向かい合うコミュニティ施設」。課題文には,日本社会の近代化のシンボルとしてつくられてきたコミュニティ施設に生じた現代的な問題が示され,私たちに,これからのコミュニティのあり方とそれに相応しい建築の提案を求めていました。それは,建築を考える上で切っても切り離せない「場所」と「人のつながり」について,徹底的に思考を深める時間の始まりでした。

写真:柴田統括グループリーダー(前列右)と受賞者(後列左から根本真孝,吉田清人,小林啓明,G.D.S・西山剛生,アルモ設計・上野真理/前列左から久田昌典,宮川裕輔,新野惠理,平井倫之)

柴田統括グループリーダー(前列右)と受賞者(後列左から根本真孝,吉田清人,
小林啓明,G.D.S・西山剛生,アルモ設計・上野真理/前列左から久田昌典,
宮川裕輔,新野惠理,平井倫之)

私たちはその中で,茨城県笠間市という場所に出会いました。江戸時代から続く陶業の街です。しかし,同市内に20ヵ所ほど存在していた「登り窯」全てが,先の震災で崩壊してしまいました。そして,この窯を再生しようと動き出した人々の存在を知ったのです。その時,私たちはふと思いました――「窯の再生を通じて生まれた人々のつながりは,窯が元の姿を取り戻した途端に消えてしまうのではないだろうか。些細だけれど心強いこのつながりを,建築の力で持続させられないだろうか」――ここから作品が生まれました。

『まわり窯のレシピ』

『まわり窯のレシピ』は,登り窯の再生をきっかけに,「つくる」「たべる」という人間の根源的な営みから,人と場所,人と人がつながり続ける枠組みと,その仕組みの提案です。「まわり窯」は,登り窯とそこから出るエネルギーを再利用する施設(キッチンや風呂など)からなります。それらを直列につなげ,敷地である小さな山をぐるりと回るように配置しています。素材もエネルギーもかたちも“回る”ことが,この名前の由来です。

「レシピ」は“参加と創造”を意味します。使う人自らが,たべものづくり,たてものづくりに参加することで,人や場所とのつながりが創造される,という私たちの期待が込められています。

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私たちの身のまわり

受賞後,たくさんの「おめでとう」を頂きました。中には,「ありがとう」と言って下さった方もいました。示唆に富むアドバイスを下さったDA・企画グループと同期の皆さん,事前に熱い講評を頂いた諸先輩方,傍で見守って下さったグループの皆さん。今回の受賞は,このつながりがあってこそ,手が届いたものでした。

確かに,この提案は夢物語かもしれません。しかし,3.11直後に入社し,これから現実に建築をつくろうとする新入社員が今できることは,共に理想を描くことなのかもしれません。貴重な機会を頂けたことを,新入社員一同深く感謝し,これからの糧にしたいと考えています。

建築環境デザインコンペティション参加について 建築設計本部 柴田 作 統括グループリーダー(コンペ・アドバイザー)

建築設計本部では,1年を通じ新入社員研修を実施しています。当コンペへの参加もその一環で,毎年,建築・設備・構造設計社員が混成チームを編成し,課題分析からアイデア出し,計画案の構築,プレゼンテーションまで協同します。

キックオフから提出まで約2ヵ月,週1回,定時後の2時間,発表形式でディスカッションを繰り返しました。みんなが業務の合間をぬって一生懸命考えてくるので,私たちアドバイザーも真剣です。パース表現は魅力あるプレゼンテーションに不可欠であり,関係会社のアルモ設計ほかプロのレンダラーに参加してもらっています。自分たちのアイデアを彼らにどう伝え,表現してもらうかも,研修の一環です。『まわり窯のレシピ』は,1次・2次審査とも圧倒的な支持を得て最優秀に選ばれました。人々の絆をつなぎ希望ある未来を描くために,建築に何ができるのかを正面から問い直し,具体的でリアルな空間と生活を提案したことが評価されたと思います。

意見の相違を恐れずに,お互いの考えを活発に出し合うコミュニケーションの中でこそ,より広い発想と強いアイデアが生まれることを,この研修を通じ実感してもらいたいと考えています。

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