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Part 2 安心して暮らせる社会の実現に向けて

SDGsのゴール「11.住み続けられるまちづくりを」は,都市と人間の居住を包摂的,
安全かつ強靭で持続可能にすることを目標としている。
また,政府のアクションプランにおいても「持続可能で強靭な国土と質の高いインフラの整備」とあり,
災害大国であり,これまで幾度も甚大な自然災害に見舞われたわが国として
取り組むべき課題が掲げられている。「防災」という観点から,当社がこれに寄与する技術を紹介する。

今を拓き,未来を築く研究者たち
美シール工法開発メンバー

(左上から時計回りに)吉田祐麻研究員,光山恵生研究員,
向俊成研究員,濱田那津子研究員,渡邉賢三上席研究員,
坂井吾郎グループ長,芦澤良一主任研究員,高木英知研究員

災害情報共有技術開発メンバー

(左上から時計回りに)宮永隆司課長代理,
畑田朋彦上席研究員,山本学上席研究員,山中徹上席研究員,
鈴木雅靖専任次長,近藤宏二プリンシパルリサーチャー,
日下彰宏サブリーダー,永田茂リーダー

コンクリート構造物の耐久性向上

国策である国土強靭化の実現には,耐久性の高い長寿命な構造物を構築する技術が必要だ。土木材料グループでは,2014年4月に積水成型工業,東京大学石田哲也教授と共同で「美(うつく)シール®工法」を開発した。

開発にあたり着目したのが,コンクリートの耐久性と表層品質の関係だ。コンクリート構造物は,塩分などの劣化因子が外部から浸透し,内部の鉄筋が腐食することで劣化する。そのため,コンクリートの表層部分の品質を高めることが耐久性向上につながると考えた。

美シール工法では,予め型枠に高撥水性特殊シート「美(うつく)シート®」を貼り付けてコンクリートを打ち込み,脱型時にシートをコンクリート側に残置させる。シートの効果により表面の気泡が低減し,かつシートによる長期間の養生により,コンクリートの表面が外気に晒されず湿潤状態を保つことができるため,緻密な仕上がりとなる。

日本海沿岸の厳しい環境下で塩害暴露試験を行い,通常工法に比べて塩害抵抗性が約4倍,中性化抵抗性が約3倍向上することを確認した。これまで,国道45号長部高架橋工事(岩手県陸前高田市)の橋脚部や,東京港内に位置する中防内5号線橋りょうほか整備工事(東京都江東区)のすべての橋台,橋脚に適用されている。

この度,これまで2人以上の人員が必要で技量差が課題となっていた美シートの貼付作業を自動で行う装置を開発し,「ひとりで」,「早く」,「きれいに」貼り付けることが可能となった。今後さらなるノウハウを蓄積し,コンクリート構造物全般への適用を目指す。

改ページ
図版:通常工法と美シール工法の違い

通常工法と美シール工法の違い

図版:美シートの自動貼付装置

美シートの自動貼付装置

災害に常に備える

東日本大震災以降,国や自治体はハザードマップの公開を積極的に行っている。当社では,技術研究所が開発した災害情報共有技術である「オンライン・ハザードマップ」,「リアルタイム・ハザードマップ」を全社で共有することで,災害への備えや発災後の復旧に活用している。

「オンライン・ハザードマップ」は,公開されたハザードマップ上に,当社の現場や竣工物件を重ねて表示し,被災リスクの想定を支援する技術だ。地震・津波・洪水・土砂災害など,災害の種類に応じてマップを作成することで,近年増加している台風や豪雨による被害に対応する。さらに,発生が危惧されている首都直下地震や南海トラフなどの大規模災害も網羅している。

一方,「リアルタイム・ハザードマップ」は当社が施工中の現場や竣工物件と,リアルタイムで得られる震度分布や実況降雨分布などのマップとを重ね合わせることで,発災中から発災直後の災害対応に活用する。現場稼働中に災害が起きた場合は,その場にいる社員が被害状況を確認できるが,休日や夜間の場合にはすぐに状況が掴めない。リアルタイム・ハザードマップでは,このような状況を勘案した上で,推定される被害を把握することも可能である。地震の場合,防災科学技術研究所が地震発生から10分程度で公開する情報を基に,建物位置における,計測震度・地表最大速度・地表最大加速度や構造被害の有無を推定する。現在は地震,降雨情報に対応しており,今後対応範囲の拡充を図る。

技術研究所では,昨年11月にBCP・リスクマネジメントチームを組織し,様々な災害に対する自社のBCP強化,顧客対応,研究開発を推進する体制を整備することで,災害への備えを強化している。

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図版:オンライン・ハザードマップ

オンライン・ハザードマップ

図版:リアルタイム・ハザードマップ

リアルタイム・ハザードマップ

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