新しい街の軸線に沿った日射を遮る縦型ルーバーが印象的な低層棟
区画整理により「街」のポテンシャルが一変したこの地に,一本の「櫻」の木が象徴として残った。この櫻を中心に社員の憩いの場となる緑豊かな中庭を造り,それを取り囲んで,機能ごとに分節化した低層棟,高層棟,既存棟の建築群を配した。
「81m」の連続性をコンクリートフレームとPC版で構成した低層棟は,計画道路に沿って横に伸びる力強い安定感を際立たせるとともに,高層棟とのコンポジションにより上昇感を強調している。周辺環境への圧迫感を和らげ,街ゆく人々に緑豊かな中庭を視覚的に提供するために,アイレベルは透明性の高いデザインとした。ストリートから垣間見える中庭は,既存樹の櫻の花びらが季節感を感じさせ,街との一体感をもたらしている。高層棟は環境に配慮した開放的なガラスカーテンウォールとし,執務空間からその豊かな緑を享受できるようしつらえた。
中庭に面した各々の外装デザインは,個性的ながら互いに融合している。特に社員のコミュニケーションの場となるテラスに面した外壁は,優美にカーブした曲面の壁に,櫻の「花びら」をイメージした丸窓を設けた。花びら舞う姿を印象付けるとともに,春がくれば満開となる櫻を誰もが待ち焦がれている。
(小松啓一・大平直子)
インテリアに映し出された花びら
櫻越しに見る,花びらをモチーフとした曲面の壁
(Photo: 松村写真事務所 松村芳治)
IDEC本社・技術研究センター
- 場所:
- 大阪市淀川区
- 発注者:
- IDEC
- 設計:
- 当社関西支店建築設計部
- 用途:
- 事務所
- 規模:
- S造 B1,7F
延べ11,500m2
2013年2月竣工(関西支店施工)
中庭を中心とした建築群
小松 啓一
(こまつ・けいいち)
関西支店建築設計部
担当部長
主な作品:
- 松村石油研究所
- 鳴門パークヒルズ
ホテルリッジ - アップル心斎橋
- ラウンドワン千日前
大平 直子
(おおひら・なおこ)
関西支店建築設計部
設計主査
主な作品:
- 木下記念事業団
神戸学生会館 - ホテルモントレ京都
- ルネッサ難波タワー