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KAJIMAダイジェスト

活かす取組み

当社では,2010年12月現在,総合職約170名,
一般職約1,000名の女性社員が活躍している。特に,総合職女性社員数は
2007年4月の85名から約2倍になった。今後ますます重要になる,
女性社員を活かす取組みについて,高田淳彦人事部長と,
ポジティブアクション推進を担当する土山淳子人事部次長に話を聞いた。

働きがいのある会社に

写真:人事部長 高田淳彦

人事部長
高田淳彦

既に現在では,「男性だから,女性だから」という観念自体がそぐわなくなってきています。労働人口が減少していく社会においては,男女という観点のみに捉われず,いかに社員の能力を引き出していくか。それこそが重要になってくると思っています。

当社ではこれまでも,女性だからといって特別扱いはしていません。また女性社員自身も,特別扱いされることは望んでいないようです。ただし,能力を発揮する機会が,女性に必ずしも与えられていないことから,女性の能力発揮促進の取組みとして「ポジティブアクション」を推進しています。女性総合職の採用拡大,一般職から総合職への職務変更,現場・営業部門への職域の拡張,社外研修への参加促進などに積極的に取り組んでいます。

この4,5年で現場に配属される女性も,技術系・事務系とも急速に増えており,今後ますます女性の活躍する場は広がっていくでしょう。

そのなかで,出産・育児を安心して行える制度や,キャリアメイクを阻害しないようフォローする制度を整え,制度を利用しやすい環境をつくることは会社の大きな役割です。女性が安心して活き活きと働ける職場は,社員全体にとっても働きやすい職場といえるでしょう。そして大事なのは,「働きやすい会社」であると同時に,「働きがいのある会社」であること。社員が働き続けたいと思える仕事をすることで,制度はさらに活かされていくでしょう。そのためには,社員一人ひとりが個性と能力を発揮して,よりよい会社をつくろうとする意識を持つことが肝要だと思います。

男女の区別は個性の一つです。社員が持つ様々な個性を伸ばし,専門性を高め個人の強みにしていく。それが有機的につながることで会社は発展していくのです。仕事を通して,個性を引き伸ばす努力を重ねてほしいと思っています。

まずはやらせてみる

写真:人事部次長 土山淳子

人事部次長
土山淳子

「女性には無理だ。女性だから無理をさせてはいけない」。女性が本格的に活躍できる環境が整って間もない現在では,予断からそんな発言が生まれても不思議ではありません。私はそのたびに言います。「まずはやらせてみてください」と。

女性の社会進出があまり進んでいない時代,当社でも女性の職域が限られていました。私自身,入社したての頃に「どうして女性はやりたい仕事ができないのか」と不思議に思った記憶があります。

男女に限らず,個人には,得手・不得手があります。職域が広がった現在,女性という一側面だけで,能力の限界を決めつけてしまうのは,あまりにもったいないと思うのです。社員一人ひとりの能力を使いきれないことは,会社にとっても大きな損失になります。

鹿島には優秀な女性社員が沢山います。管理職の皆様には,過去に例がないからといわず「まずはやらせてみてほしい」のです。

当社のよいところは,出来ることがわかったら,男女問わずその人間を認める企業風土があることです。努力は必ず誰かが見ています。女性に限らないことですが,社員が努力を続けて,会社全体のモチベーションが上がっていけば,社員本人にも,会社にも,これ以上のことはないと思うのです。

ここ数年,技術系,事務系の採用が進み,建設現場で勤務する女性社員が増えています。まだまだパイオニア的な存在ですので,私が心配なのは「女性だからといわれないようにもっと頑張らなくては!」と気負いすぎてしまわないかということです。女性が男性化する必要はなく,それぞれの個性を大切にしていけるような会社にしていきたいですし,人事部としても,今後も女性社員が活き活きと個性や能力を発揮できるようにフォローしていきたいと思っています。何か困ったことがあったら,いつでも相談してください。

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女性が活躍する企業

写真:法政大学キャリアデザイン学部 武石恵美子 教授

法政大学キャリアデザイン学部
武石恵美子(たけいしえみこ)教授

法政大学キャリアデザイン学部教授。専門は人的資源管理・女性労働論。筑波大学第二学群人間学類卒業後,労働省(現厚生労働省),ニッセイ基礎研究所,東京大学社会科学研究所助教授等を経て,2006年4月より法政大学。2001年お茶の水女子大学人間文化研究科博士課程修了。博士(社会科学)。最近の著書に,『男性の育児休業』(共著,中公新書),『雇用システムと女性のキャリア』(勁草書房),『人を活かす企業が伸びる』(共編著,勁草書房),『女性の働きかた』(共編著,ミネルヴァ書房),『職場のワーク・ライフ・バランス』(共著,日経文庫)など多数。厚生労働省「中央最低賃金審議会」,内閣府「仕事と生活の調和に関する専門調査会」等の委員を務める。

これからの女性の働き方やその課題について,
人的資源管理・女性労働論を専門として,女性の活躍を推進する
法政大学の武石恵美子教授からメッセージを頂いた。

日本は,女性が働きやすい国とはいえません。子どもを持つ女性の労働力率の低さ,男女間の賃金格差の大きさ,役職者に占める女性の少なさ,女性の活躍を示す指標は,いずれも国際的にみて低い水準にあります。男女の役割に対する固定的な見方や,女性が活躍しにくい雇用慣行などにより,とりわけ育児や介護など仕事以外の責任を持つ女性が働き続ける上で,クリアしなくてはならない多くの課題があるのです。

しかしこれからの日本社会は,少子高齢化に伴う労働力人口の減少により人材は稀少になり,また共働きの増加などの世帯構造の変化により,男女ともに仕事以外の責任を担いながら能力を発揮していく環境を整備していくことが,企業にも社会にも求められることとなります。

加えて,女性活躍を進める欧米の企業では,「ダイバーシティ=多様性」ということにその意義を指摘します。つまり,企業経営を取り巻くマーケットが多様化していくときに,多様な人材を活かしていかないと経営環境の変化に乗り遅れてしまうという危機感が強まっているのです。とりわけ労働力人口が減少局面にある日本で,性別にとらわれて採用や育成を行っていると,有能な人材を活かすチャンスをみすみす見逃してしまうことになってしまいます。日本でも,近年「女性活躍推進」から「ダイバーシティ推進」へと人事戦略の考え方を転換する企業が急速に増えています。経営戦略的にも,また人事戦略的にも,画一的な「日本人・男性社会」だけで突き進むことの限界が露呈してきており,女性をはじめとする多様な人材が活躍する受け皿作りが,人事管理面で重要なテーマになってきているわけです。

これまで,女性の活躍推進は,業種による格差がみられたのは事実です。特に社員に占める男性比率が高く,建設現場を抱える建設業では,女性の活躍を進める上で乗り越えなくてはならない多くの障害がハード・ソフトの両面でありました。しかし,建設業においても,ダイバーシティ戦略の観点から女性が活躍できる取組みが展開されるようになってきました。この点に関して,従来は必ずしも先駆的な取組みがなされなかった分,他業界での多様な取組みを参照しながら,自社の現状に合った仕組みを効果的かつ効率的に構築しているように思われます。

私は,学生に企業選びのポイントを尋ねられたとき,男女にかかわらず「元気なお姉さんがいる企業」を薦めることにしています。そうした企業は,属性に関わらず人材を育成するという経営方針をもち,そのための実質的なキャリア支援を行っており,女性だけでなく男性も働きやすい企業である可能性が高いと考えられるからです。男女といった個人の属性に関わらず人材を処遇する企業は,働く人のモチベーションが向上し,人材の確保・定着も良好であり,経営パフォーマンスも高いといわれています。

ただし,現状において,男女に同じチャンスを与えるだけで女性の活躍の場が自然に広がっていく状況にはありません。女性が活躍しにくい状況,たとえば労働時間をはじめとする働き方の問題や,女性が自身のキャリアを長期的に見据えることができるようなキャリアモデルの提示,特に育児・介護などの家庭責任を乗り越えるための支援など,やりがいのある仕事の提供とワーク・ライフ・バランスを可能にする就業支援・働き方改革を,車の両輪として充実させていくことが必要になります。女性が活躍できる社会は,男性も生きやすい社会であるはずです。今後も,業界をリードする鹿島建設の取組みに注目したいと思います。

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