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合理化施工でつくる「テクノロジーの聖地」

(仮称)大崎駅西口C地区開発計画

東京都7副都心の一つで,2002年に都市再生緊急整備地域に指定されてから,
大規模再開発が相次ぐ大崎駅周辺地区。かつてのソニー基幹工場跡地に,
オフィスビルの整備が急ピッチで進められている。
このビルは同社グループの研究開発の新たな拠点となる。
施設計画から建設段階まですべてに環境に配慮した合理化施工の現場を訪ねた。

 

図:完成予想パース

完成予想パース

建物断面図

建物断面図

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地図

工事概要

(仮称)大崎駅西口C地区開発計画

場所:
東京都品川区
発注者:
ソニー
CM:
ソニーファシリティマネジメント
設計・監理:
日建設計
電気設備:
関電工(分離)
機械設備:
東洋熱工業(分離)
用途:
事務所,店舗,駐車場,駐輪場
規模:
免震層下部—SRC造一部RC造/ 免震層上部—S造(柱一部CFT構造)
B2,25 F, PH1F 延べ124,021m2
工期:
2009年2月〜2011年3月(東京建築支店施工)
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写真:計画地周辺鳥瞰。右側の超高層オフィスビルはシンクパークタワー,右手前はJR大崎駅(2010年5月時点)

計画地周辺鳥瞰。右側の超高層オフィスビルはシンクパークタワー,右手前はJR大崎駅(2010年5月時点)

写真:計画地全景(起工式準備)

計画地全景(起工式準備)

写真:1次根伐工事。スロープ架設で掘削を合理化

1次根伐工事。スロープ架設で掘削を合理化

写真:3次根伐。山留2段腹起し架設,アースアンカー削孔で着々と掘り進む

3次根伐。山留2段腹起し架設,アースアンカー削孔で着々と掘り進む

写真:B2F立上りB1F,B1F立上り1F床躯体工事。鉄筋工事,型枠工事への「地組み」活用で工期を短縮

B2F立上りB1F,B1F立上り1F床躯体工事。鉄筋工事,型枠工事への「地組み」活用で工期を短縮

写真:1F立上り免震床躯体工事と免震上部1節鉄骨工事。タワークレーンの設置とともに地下躯体工事は終了する

1F立上り免震床躯体工事と免震上部1節鉄骨工事。タワークレーンの設置とともに地下躯体工事は終了する

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伝統の地に新たな研究開発拠点

大手電機メーカーの工場地帯だったJR線の大崎駅周辺地区は,大きく変貌した。鉄道交通の利便性向上と「都市再生緊急整備地域」指定により,大規模プロジェクトの開発が加速し,この10年で乗降客数は倍増。IT系企業などの立地する高度な業務集積と超高層住宅などによる新しい街として活況を呈しており,さらに成長を続けている。

大崎駅西口C地区は,トリニトロンカラーテレビはじめ数々のエレクトロニクス製品を生んだソニー旧大崎西テクノロジーセンターの跡地。周辺オフィスに分散するソニーグループ約4,000人を集約する計画だ。

この施設では,中間層免震構造を採用することで構造部材をスレンダー化し,スパン約24mの無柱空間を実現した。室内を一望できるオフィスは,コミュニケーションが取りやすく,知的生産性が向上する。超高層オフィスビルでは珍しい建物三面バルコニー付きで,メンテナンスや避難安全性にすぐれている。

中1階の免震層を境に地下躯体と地上躯体にわかれて構造の異なる建物を,それぞれに施工の合理化を図った。

実質250日の地下工事にかける

延べ約12万m2の大規模超高層ビル施工に与えられた工期は, 2年余。工期をいかに短縮するかが施工上の最大のポイントで,本支店関連部署の総合力を結集して導き出された施工方法は,「単純化」だった。

「第一の決め手はアースアンカー工法でした」と,建築工事を統括する桐生雅文所長はいう。これまでこの地域でゲートシティ大崎やシンクパークタワーの現場を担当してきた。超高層建築のスペシャリストだ。「隣接する地区での施工経験で周辺地域に土地勘があり,計画敷地の形状や高低差を読み込んで提案しました」。アースアンカー工法は,敷地の狭い都市部の工事では敷地外の公道下へアンカーを打ち込むので,行政協議が必要な山留工法だが,調整して施工できた。「山留壁を支える切梁をなくして地下躯体の構築をさらに単純化できます。50m×140mの細長い地下平面形状は,仮設の作業構台を設置しなくても周辺から掘削できる。さらにスロープでダンプを下ろせば,掘削土を直積みできるのです」。次々と示された合理化施工の説明は,確かに単純明快だった。

掘削土量11万2,000m3,鉄骨1,700t,鉄筋6,700t,打設コンクリート5万6,000m3,型枠10万m2。圧倒的なボリュームの地下躯体の施工。地下の床上などで鉄筋や型枠を「地組み」することで生産性を上げた。地組みは,仮設足場の組立て・盛替え・解体という工程を簡略化することになり,工期短縮はもちろん,仮設材が減り,環境負荷低減にもつながった。足場がなくなることで高所作業などが減り,安全性も向上している。

工期短縮・環境負荷低減・品質確保のための合理化施策は全体で42件,そのうち約8割が地下工事に関するもの。「建物の躯体形状がよかった。逆に言えば立地,計画を読み込んだ上での最適施工法だった。今,地上部の工事が順調に進捗しているのも,地下躯体工事を単純化し,10ヵ月,250日でできたから」と桐生所長は振り返る。

写真:桐生所長

桐生所長

写真:アースアンカー施工により切梁のない山留壁を実現

アースアンカー施工により切梁のない山留壁を実現

写真:掘削土のダンプ直積み(3次掘削)。スロープで直接地下へ

掘削土のダンプ直積み(3次掘削)。スロープで直接地下へ

写真:階高7mの鉄筋地組で継手数を削減(B2F立上り外周壁)

階高7mの鉄筋地組で継手数を削減(B2F立上り外周壁)

写真:鉄筋地組建込みでは仮設足場を削減(B2F立上り外周壁)

鉄筋地組建込みでは仮設足場を削減(B2F立上り外周壁)

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「土」のルーバーが優しく包むタワー

現場を取材に訪れた5月上旬,地上部で4フロア1節に合理化した鉄骨建方が急ピッチで進められていた。その躯体東側を覆う外装ルーバー(保水性テラコッタルーバー)は,タテ・ヨコ140m角の巨大な立面の外観に繊細な表情を与えていた。

テラコッタ=土という自然素材でできたルーバーの多孔質の陶製管で作られ,その管に通水(貯留雨水利用)し,浸透水の気化冷却作用でルーバー自体とその周辺外気を冷やす,ヒートアイランド対策の一つになっている。工事全般を見る山田克浩統括副所長は,「外装ルーバーのユニットは,現場組みして吊り込んでいます。ボルトなど細かい部品が多く,締め忘れでもないかと初めてのことばかりで緊張した」という。一般の超高層ビルにない画期的な計画内容を実現するため,山田統括副所長は工務・計画・工事・機電のスタッフと施工の具体化に向けてスクラムを組む。「全フロアとも建物三面にバルコニーが付いている外装工事には,施工計画の中で超高層マンションでの経験が生かされています」。

写真:山田統括副所長

山田統括副所長

写真:外装ルーバー・基準断面図

外装ルーバー・基準断面図

写真:バルコニーに取り付けられた「すだれ」状日除け=外装ルーバーのモックアップ。陶製管のルーバーに水を通して周辺外気を冷やす

バルコニーに取り付けられた「すだれ」状日除け=外装ルーバーのモックアップ。陶製管のルーバーに水を通して周辺外気を冷やす

写真:現場で一つひとつ組み立てる

現場で一つひとつ組み立てる

3つのGreen——現場の環境活動

環境計画で2050年「環境負荷ゼロ」を長期目標に掲げるソニー。新しいオフィスビルの建設で環境負荷を低減するため,グリーン電力の利用をはじめとした3つのGreenの活動に取り組んでいる

 

Green Powerグリーン電力

現場事務所の使用電力は,空気中のCO2を増やさない自然エネルギーにより発電された「グリーン電力」を利用。発注者のソニーと施工3社(当社,関電工,東洋熱工業)が共同でグリーン電力証書を購入した。

写真:グリーン電力証書

グリーン電力証書

Green Agendaグリーンアジェンダ

使用済みの切手やカードなどを環境団体に送付し,その基金で各地に植樹を行う活動。現場の仮囲いに回収ボックスを設置し,近隣の方々の協力も得ている。

写真:仮囲いに掲示されたグリーンアジェンダの活動

仮囲いに掲示されたグリーンアジェンダの活動

Green Moreグリーン・モア

現場環境向上のため,職長会がグリーン活動を主催。有志で現場内に花や緑を増やすもので,施主や施工者が多数参加して,緑に溢れた現場を作り出している。

完成予定は2011年3月。知的生産性・創造性を最大限に引き出すワークプレイスが実現すると,再び,「テクノロジーの聖地」となる。

写真:構内のプランターには花が絶えない

構内のプランターには花が絶えない

写真:現場の皆さんの集合写真

現場の皆さんの集合写真

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Column 地元に根ざし、地域に貢献する

当社は,大崎駅東口第1地区第1種市街地再開発工事「大崎ニューシティ」(1987年竣工)を初めとし,超高層オフィス2棟を中心とした複合施設「ゲートシティ大崎」(1999年竣工)の建設に携わって以来,今日まで絶えず大崎駅周辺地区で様々な工事を担当してきた。

大崎駅西口の小高い丘の上にある,大崎鎮守・居木(いるぎ)神社。毎月1日早朝,スタッフと職長全員での安全祈願は,以前の現場から行っている大切な行事だ。「宮司の森田義則さんとは長いお付き合いで,工事中も温かく見守っていただいています」と,大崎地区の現場で長く担当してきた利田正人専門役はいう。「地域に支えられている現場として,少しでも恩返しができるようにと,鯉のぼりや,夏祭り,餅つき大会などのイベントを通じて,地元の一員として地域に貢献すべく交流を続けています」。

写真:地域の風景となった現場の鯉のぼり

地域の風景となった現場の鯉のぼり

写真:夏祭りではお神輿が現場にも巡行する

夏祭りではお神輿が現場にも巡行する

Persons 現場の最前線を支える若い力

工務系社員計20名の平均年齢は34歳。打合せや電話応対に,現場事務所内には若い声がひびく。中でも工事課と機電課には入社1年目から5年目までの社員があわせて9名そろい,それぞれ現場の各工種担当として最前線で活躍している。

2年目の渡邉能徳さんは,合計4万2,000m3のコンクリート打設に立ち会った。「経験豊かな上司から数量の拾い方や, 実際の締固めも丁寧に教わりました。この経験を次に生かしたい」と胸を張る。

清永康之さんは4年目で,施工合理化の要,鉄筋の「地組み」の施工計画・段取りを担当。「新しい施工方法に慣れずに手間取ると,工程全体に影響を与えるので遅らせないように頑張りました」という。

その「地組み」を3年目の久家秀大さんが検査する。「地組みは型の崩れが少ないのが利点。自主検査の結果は清永さんにもフィードバックしています」。

5年目の古川晴之さんは,工事係若手の兄貴分。日中は型枠工事の管理で出ずっぱりだが,「大規模現場,超高層の技術をしっかりと習得するために,若手同士でもコミュニケーションを図っている」という。

夕方からの現場事務所は,若手所員の「夜学」の場となる。

写真:若手9人衆。「厳しいなかにも明るく,楽しく,元気よく」

若手9人衆。「厳しいなかにも明るく,楽しく,元気よく」

発掘!旬の社員
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