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福島第一原子力発電所

事故の余波が大きく残る福島第一原子力発電所。
昨年12月17日,政府は,原子炉の冷却が進んで冷温停止状態を達成し,
事故収束に向けた工程表ステップ2の終了を確認と発表した。
今後廃炉に至るまでには数十年かかるともいわれており,
福島をもとの状態に戻すためには,長きにわたる取組みが欠かせない。
当社はかつて,1号機から6号機までの発電所(原子炉・タービン・他)建屋の建築工事を担当した。
そして今,事故収束に向けた作業を続けている。

福島第一原子力発電所

福島第一原子力発電所では多くの関係者が収束に向けて懸命の作業を行っており,当社もこれまで,様々な作業に従事してきた。東京建築・土木支店が主体となって現地対応を実施。放射線管理を徹底し,全国の支店から駆けつけた応援社員の従事期間は放射線量を考慮して2ヵ月間としている。加えて,重機の無人化施工などを行い放射線量の低減に配慮する。現在までに,土木・建築を合わせ,373人の社員と延べ6万4,000人あまりの作業員が従事している。

写真:原子炉建屋3号機の現況(提供:東京電力)

原子炉建屋3号機の現況(提供:東京電力)

写真:高線量下の無人化施工を支えるクレーンの遠隔操作室

高線量下の無人化施工を支えるクレーンの遠隔操作室

写真:昨年6月には中村社長が現地入りして社員を激励した

昨年6月には中村社長が現地入りして社員を激励した

写真:津波対策として構築された防潮堤(提供:東京電力)

津波対策として構築された防潮堤(提供:東京電力)

図:当社が携わってきた主な工事

改ページ

福島第一原子力発電所建築担当の所長に就いて7年半になりますが,この1年は言葉では言い尽くせない激動の1年でした。特に最初の1ヵ月はまさに非常事態で,小名浜東電事務所内で寝袋に包まれて泥のように眠りにつく日もありました。当時は緊張の連続で,寒いとか苦しいという感覚はありません。気が張っていたのでしょう。どうにか社員を守らないと。その思いばかりでした。

3月11日は,午後に休みをとり富山の自宅に帰宅する予定でした。電車がいわきを出たところで被災し,高台の高校に避難して一夜を明かしました。翌日,社員の車に同乗して,葛尾村に自宅がある菅野浩副所長を訪ねました。ここを仮の対策本部として,土木・建築社員10人程度が集まり状況の確認を行いました。土木担当の社員は早い段階でサイト内に入り,緊急対応に当たっていました。

私自身がサイト内に入ったのは,3月14日の朝。免震重要棟の状況を確認しました。この頃,現地では情報が錯綜して判断がつかず,東京と福島を往復しては関係者と対策を協議しました。Jヴィレッジを拠点にした本格的な作業に入れたのは,3月17日のことです。

その後,就労環境なども改善され,現在では万全の態勢で作業に臨んでいます。“国土を守るために,日本で最も重要な作業に従事している”と社員・作業員は強い使命感を持っています。震災から従事している東京電力関係者,当社社員,作業員の方々には本当に頭が下がります。現在,当社管轄で300人以上の作業員が入っていますが,これからは将来を見据え,原子力業務に携わる人材の確保・育成が重要になってきます。事故収束に向け,今後も全国からのご支援を切にお願いすると共に, 復旧に向けて努めてまいります。

写真:東電福島いわき出張所 高木了靖所長

東電福島いわき出張所
高木了靖所長

写真:事故収束に向けた工程表ステップ2完了に伴い,東京電力の西澤俊夫社長(左)から感謝状を受領する高木所長

事故収束に向けた工程表ステップ2完了に伴い,東京電力の西澤俊夫社長(左)から感謝状を受領する高木所長

改ページ

3月11日の東日本大震災以来,福島第一原子力発電所の復旧作業は東京電力の方々の指導の下,まさに全企業一丸となった懸命な努力により,一歩一歩確実に前進してきました。その中で当事務所も各企業さんと協力しながら,微力ながら復旧作業に全力を尽くしてきました。

当事務所が第一発電所構内で携わった作業としては,津波及び爆発によるがれきの撤去運搬,度重なる余震から懸念される津波対策としての防潮堤設置,汚染水漏洩防止を目的とした薬液注入を7月まで行いました。8月以降は建築の建屋カバーリング設置のサポートとして,3・4号機の建屋がれき運搬を開始して,12月からは海側遮水壁設置工事に着手しました。

そのほか,第一発電所構内の津波などで被害を受けた車両の撤去,第一発電所に搬入する大型資機材の20km圏境界での積替運搬,20km圏内での生コンクリート製造・管理,第一発電所構内の給油,第二発電所内荷役など,様々な作業を4月以降継続して行っています。

これまで,当事務所には全国の支店から延べ50人以上の応援社員の方々が現場管理に従事してきました。当事務所所員を含め,応援社員の方々の協力なくしては,ここまで復旧作業を遂行することができなかったと痛切に感じています。

現在は発電所構内の放射線量も減少し,東京電力が対策本部を設置している免震重要棟までは全面マスクを外して,通常のサージカルマスクで行けるようになりました。環境改善が進んでいく中,今後も全国からの応援社員による協力をお願いすると共に, 復旧に向けて努力していく所存です。

写真:東電福島土木工事事務所 日比康生所長

東電福島土木工事事務所
日比康生所長

写真:震災当初からの懸命な作業に対して,東京電力福島第一原子力発電所の吉田昌郎前所長(左)から感謝状を授与された

震災当初からの懸命な作業に対して,東京電力福島第一原子力発電所の吉田昌郎前所長(左)から感謝状を授与された

改ページ

column 徹底した放射線管理

当社では,原子力施設構内の管理区域で作業に従事する職員・作業員の安全な作業環境を確保するために放射線管理基準を定めており,事故前後にかかわらず,この規則をもとに,関係法令などを遵守し作業にあたっている。放射線量の累積管理値は,国の基準50mSv/年より低い40mSv/年。アラーム付きポケット線量計を身につけ,毎日の線量を記録・把握するほか,クイックセルバッジ(放射線感応物質)を赴任中常時携帯し,赴任中のトータル放射線量を測定している。ホールボディカウンタによる診断も月に1度行い,電離放射線健康診断など必要な健康診断も行っている。厚生労働省は事故を受け,緊急対応時の累積管理値を250mSv/年まで引き上げたが,当社では線量管理値の引上げは行わず,40mSv/年のままとしている。

column 周辺自治体での取組み……「除染モデル実証事業」

日本原子力研究開発機構から受託しているこの事業は,放射線量が20mSv/年以上100mSv/年未満の地区を対象に様々な除染方法を試験し,評価するものです。特に原子力発電所から20km圏内の除染は初めての試みであり,今後の標準を決める重要な位置づけになっています。公募にあたっては,全社を挙げてプロジェクトチームを構成し,オール鹿島で除染モデル事業の技術提案をしました。受託後は,東京土木支店に加え, 東北支店も参加して今後の本格除染を見据えています。2月現在, 田村市や葛尾村, 富岡町などで, 50名ほどの職員と600名を超える作業員が従事しています。

写真:除染モデル実証工事事務所 西川武志所長

除染モデル実証工事事務所
西川武志所長

写真:桜の除染作業。様々な除染方法を試験している

桜の除染作業。様々な除染方法を試験している

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