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3号機カバーリング工事と汚染水対策

当社は様々な工事に取り組んでいるが,そのなかでも継続的に計画を進めているのが3号機の安定化と,汚染水対策。
無人化施工や凍土壁の構築など,これまでに例のない難工事に挑んでいる。

3号機カバーリング工事

当社が担当する建築工事のなかで,メインになっているのが3号機原子炉建屋の安定化。最終的には廃炉をめざすが,3号機は水素爆発でがれきが散乱し,当初から高い放射線量下に置かれていたため,まずは放射線量の低減作業に迫られた。作業の手順は,複雑に積み重なっているがれきを撤去し,カバーリングに干渉する建屋周囲の構築物を解体する。次いで,オペレーティングフロアの小がれきの収集・吸引,切削などの除染を実施した後に厚さ15cm程度の遮蔽材を設置。線量を十分に下げたうえで,使用済核燃料プールから核燃料を取り出すために原子炉建屋をカバーで覆う。このカバーは,放射性物質の拡散防止や雨水流入防止,使用済核燃料棒の取出し用機械設置などを目的に築造する。

がれきの撤去は2013年10月に完了し,現在は放射線量を低減させるための除染工事が行われている。

写真:無人重機による解体作業

無人重機による解体作業

写真:遮蔽作業イメージ

遮蔽作業イメージ

写真:がれき撤去は2013年10月に完了

がれき撤去は2013年10月に完了

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図版:3号機原子炉建屋カバー計画完成予想パース

3号機原子炉建屋カバー計画完成予想パース

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無人化施工

一連の工事で欠かせないのが,無人化施工の技術。高い放射線量下での施工になるため作業員の立入りに大幅な制約を受ける。雲仙普賢岳の噴火など自然災害復旧工事で用いられてきた従来の無人化技術を改良したもので,通信には,作業エリア周辺に無線LANをメッシュ状に張り巡らせ,遠隔操作室との間を高速で送受信できる光ファイバーで結び,重機ごとの操作信号や搭載カメラ映像などを受信できる仕組みを考案。大型クレーンや解体用重機など多数の建設機械を同時に遠隔操作できるシステムを実用化した結果,約500m離れた建物内で遠隔操作することが可能になった。そのほか,構台設置や重機への燃料供給などを無人化する方法も開発している。

解体されたがれきの搬送作業では,自律走行システムを搭載した重機で構内保管施設に運搬・保管を実施している。がれき撤去・解体工事で発生した鉄筋コンクリートガラや鉄骨を鋼製コンテナに格納し,クローラダンプとフォークリフトで構内の保管施設へ運搬する。これまでに大規模造成工事などで培った情報化施工技術を応用し,GPSアンテナや方位計,監視用カメラ,レーザスキャナなどを搭載させることで設定したルートに沿って,誤差や前方障害物の有無を自らが判断しながら走行,停止,方向転換などを自動的に行う。この技術は,平成24年度土木学会賞・技術開発賞を受賞している。

写真:クローラダンプに様々な計器やセンサを搭載して自動走行を実現

クローラダンプに様々な計器やセンサを搭載して自動走行を実現

図版:無人化施工イメージ

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汚染水対策

現在,課題となっているのが汚染水対策である。当初から当社は海側の遮水壁の構築を担当している。これは1号機~4号機の汚染水が港湾に漏えいした際の海洋汚染拡大防止を目的として,既設護岸の前面に鋼管矢板で遮水壁を設置する工事。当社の施工延長は520mほどで,作業船をつかって海上から先行削孔を行ったうえで,長さ約25mの鋼管矢板404本を打設して構築する。2012年4月に本格着工した工事は,鋼管矢板の打設はほぼ完了して2014 年9月までに海側遮水壁が完成する計画となっている。

一方で,地下貯水槽や汚染水貯蔵タンクから汚染水の漏えいが発生した。これを受けて政府は国費投入を決定し,陸側にも遮水壁を構築することになった。1号機から4号機の建屋を囲い込むように遮水性の高い壁を設置し,山側を含めた外側から建屋に向かう地下水の流れを遮断する。これにより,建屋周辺の地下水位を低下させ,建屋内への地下水の流入を抑制することが目的である。

当社は,この遮水壁に凍土方式を提案した。これは配管を地中に埋設し,冷却材を循環させて周りの土を凍らせることで壁を構築するもので,遮水効果と施工性などに優れる。全長約1,600mの凍土壁でプラント全体を取り囲み,地下水の流入を遮断する。2013 年度末までにフィージビリティー・スタディを実施した後に,工事に着手して2015年度上期の運用開始を目標にしている。

また,海水配管トレンチ内の汚染水の除去のために,2号機と3号機トレンチのタービン建屋接続部分を凍結工法で止水する工事も進行している。

図版:汚染水漏えい防止イメージ

汚染水漏えい防止イメージ

写真:汚染水対策 イメージ

図版:凍土壁造成のイメージ

凍土壁造成のイメージ

写真:凍土モックアップ

凍土モックアップ

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Column これまでに派遣された社員と徹底した線量管理

当社では,現場の施工管理を行う社員を3ヵ月ローテーションで派遣している。各支店からの応援も多く,これまでJV社員を含め延べ12万7,101人の社員と延べ20万,159人の作業員が作業に従事してきた(2013年12月末現在)。放射線下の作業には,作業域線量計測や線量計,防護装備などの管理を行う現場放射線管理と,健康診断や入退域申請,線量管理と通知などの管理を行う事務放射線管理の機能が必要となる。事故以前は,電力会社の仕組みに沿って対応していたが,事故以後は独自の計画と実施が求められるようになった。放射線管理グループを結成して放射線管理システムを構築したことで,現在では,線量管理や健康診断有効期限管理などを一括して行えるようになっている。

また当社では,社員・作業員の安全・健康を考慮し,一貫して独自の線量管理基準(40mSv/年,80mSv/5年)を定めて管理を行ってきた(法定限度は50mSv/年,100mSv/5年)。線量管理値と同様 に,電離検診やWBC受検の頻度も都度見直しを行い,社員・作業員の健康状態を把握するよう努めている。

3年間を振り返って

福島第一原子力発電所へ着任したのは,2011年1月17日でした。それから,2ヵ月もたたない3月11日に震災が発生して,3号機爆発直後のがれきの撤去から様々な緊急工事に,全国からの応援社員の力を得て対応してきました。その努力が認められて,同年11月2日に東京電力の吉田昌郎元発電所長から最後の感謝状をいただいたことは今でも印象に残っています。

2013年の春以降,国を挙げての緊急対応を求められています。対応の規模はオールジャパンですが,まずは全社一丸となって,国難に対応する必要があります。そのためには多くの社員の力が必要となってきます。

報道ではトラブル関係の紹介が多いですが,現在の発電所内の放射線量は以前に比べて減少し,放射線防護対策も格段に進歩したといえます。発電所内の作業は適切な防護装備とルールを順守することにより,安全に作業できるものと確信しております。

今後長期間の対応が求められる発電所内の対応に東電福島土木統合事務所より多くの社員の力と理解を切望致します。

写真:東電福島土木統合事務所 日比康生 所長

東電福島土木統合事務所
日比康生 所長

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