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3環状道路を造る:新たな発想が品質・安全を守る 東京外かく環状道路

東京外かく環状道路(外環道)では,千葉県区間といわれる松戸市小山から市川市高谷に至る延長約12kmの区間で工事が着々と進められている。この地域は南北方向へアクセスする道路が少なく,慢性的な渋滞が続いている。また,渋滞を避けようとする車が生活道路などに入り込み,交通環境の悪化が課題となっている。そのため,高速道路部と国道部(国道298号)が一体的に整備される外環道への期待は高い。

現在,当社は国土交通省発注の「堀之内地区函渠その5工事」,当社JVが東日本高速道路発注の「国分工事」と「市川中工事」を担当している。

図版:高速道路部が地下に整備される区間の標準構造。当社および当社JVは高速道路部(高速自動車国道)を中心に施工を進めている

高速道路部が地下に整備される区間の標準構造。当社および当社JVは高速道路部(高速自動車国道)を中心に施工を進めている

図版:東京外かく環状道路地図

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新鮮なコンクリートを打つ

3つの工事のうち,最初に着工したのが「国分工事」で,2010年1月から工事が進められている。市川市堀之内1丁目付近から南へ約1.8kmが工事区間となり,開削工法によって,高速道路のコンクリート躯体を構築していくなかで,様々な当社の技術やアイデアが活かされている。注目すべきはコンクリート工場(バッチャープラント)を現場に設置していることだ。ダム以外の土木現場でバッチャープラントを設置した例はほとんどないという。「コンクリートは鮮度が命です。良質なコンクリートを打つためには,練りあがって直ぐに打つのが一番。現場外から生コンを搬入するという既成概念に囚われない柔軟な発想が必要でした」と高野卓所長は話す。土木管理本部,技術研究所の協力のもと,より良い品質のコンクリートを打つため表層品質を評価する手法も適用し,品質・耐久性をスパイラルアップさせる取組みを積極的に推進する。

図版:高野卓所長

高野卓所長

図版:現場内のバッチャープラントとミキサー車

現場内のバッチャープラントとミキサー車

図版:高速道路となるコンクリート躯体。良質のコンクリートが打設されている

高速道路となるコンクリート躯体。良質のコンクリートが打設されている

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一般車両と工事車両を立体交差で分離

工事用車両に関する施工条件が新たな発想を生み出した。周辺環境への影響を考慮して,一般道から工事車両は現場に入ることができず専用道路を使うことが条件だった。車両台数も定められているため,骨材搬入後には掘削土を積んで帰れるよう調整した。また,一般道と専用道が交わる部分では,オーバーブリッジと呼ばれる専用の立体交差を設け,安全確保しつつ工事車両による渋滞を回避している。「周辺道路はバスの対面通行が難しい場所もあります。さらなる渋滞を発生させることは絶対許されませんから,オーバーブリッジの提案は効果的でした。周辺道路の渋滞を見るたびに,早く外環道をつなげなければと思います」(高野所長)。完成を目指して,工事に邁進する日々が続く。

図版:オーバーブリッジは一般道(下部)と専用道(上部)を立体交差化

オーバーブリッジは一般道(下部)と専用道(上部)を立体交差化。安全確保しつつ工事車両による渋滞を回避している

【工事概要】

東京外環自動車道 国分工事

場所:
千葉県市川市堀之内
1丁目~国分1丁目
発注者:
東日本高速道路
工期:
2010年1月~
2015年3月(予定)
規模:
延長約1.8km
掘削工約83万m3
コンクリート工約21万m3
ほか

(東京土木支店JV施工)

道路の役割を実感して

バッチャープラントやオーバーブリッジといった取組みを継承するのが「市川中工事」である。これまでの掘削作業に加え,今年度から躯体構築作業が本格化する。「国分工事」の南側工区境から約1.5kmが工事区間。河川(真間川),鉄道(京成本線),幹線道路(国道14号)が交差していることから,一部区間で国道部(国道298号)も地下化される。そのため躯体形状が複雑化するとともに,非開削施工を行う箇所もあり,千葉県区間のなかでも最も躯体構築の難度が高いことが特徴だ。さらに,周辺は住宅のほか学校,病院,商業施設などがあり,より一層の周辺環境への配慮が求められる。青梅トンネル,真名工事など圏央道の施工に携わってきた奥本現所長は「掘削土が約95万m3,コンクリート量も約21万m3とスケールの大きい現場です。これだけの現場を任されるのは,土木技術者冥利に尽きる」と話す。東日本大震災では,緊急物資輸送を支えるインフラとして,道路の役割を改めて実感した。道路というインフラを造る仕事をしていることが誇りだという。

図版:奥本現所長

奥本現所長

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図版:市川中工事の躯体構造イメージ

市川中工事の躯体構造イメージ。一部区間で国道部も地下化されるため,標準構造(地下1階構造)に加え,複雑な躯体構造があり,難度の高い工事となる(左CGは地下2階構造で4連構造をもつ躯体の例)

【工事概要】

東京外環自動車道 市川中工事

場所:
千葉県市川市国分1丁目
~新田2丁目
発注者:
東日本高速道路
工期:
2010年11月~
2015年11月(予定)
規模:
延長約1.5km
掘削工約95万m3
コンクリート工約21万m3
ほか

(東京土木支店JV施工)

現場で働く皆が主役

「土木の基本中の基本が詰まっている」と語るのは,大橋ジャンクションの所長を務め,現在「堀之内地区函渠その5工事」を統括する品田康二所長。「国分工事」の北側工区境から約500mが工事区間となる。連壁,掘削,山留め,躯体構築という土木のオーソドックスな工種の“現場感”を若手に伝え,現場を主体的に牽引できる人材の育成に力を注ぐ。また「現場作業&管理の見える化ボード」を現場内に設置して,各協力会社が,どこで何をしているのかを“見える化”して,現場内の情報共有化を促す。各ボードの内容には20代の若手が責任を持つ体制とした。品質とコストのバランス感,そして何より安全に対しての動機付けが狙いだという。「外環道という大きなプロジェクトを担う主役だと実感してもらいたい」(品田所長)。人づくりの現場がここにある。

図版:品田康二所長

品田康二所長

図版:「現場作業&管理の見える化ボード」は現場内の情報共有化を促す。現場で働く皆が外環道を造る主役だ

「現場作業&管理の見える化ボード」は現場内の情報共有化を促す。現場で働く皆が外環道を造る主役だ

【工事概要】

堀之内地区函渠その5工事

場所:
千葉県市川市堀之内
2丁目~堀之内1丁目
発注者:
国土交通省
工期:
2012年8月~
2015年5月(予定)
規模:
約500m
掘削工約23万m3
コンクリート工約5.5万m3

(東京土木支店施工)

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