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KAJIMAダイジェスト

3環状道路を造る

離れた場所を短時間でつなぎ,新しい人の流れをつくり,物流の効率化を図る高速道路。
1kmを走行するのに1分足らず――。
その何秒かのために労苦を惜しまず,数年をかけて高速道路を造る人々がいる。
数多の技術を駆使し,様々な工夫を凝らしながら3環状道路を造る現場を紹介する。

高度な土木技術が都心の地下を拓く 首都高速道路中央環状線

首都高速道路中央環状線(中央環状線)の全線開通に向け,最盛期を迎えているのが,山手通りの直下で進められている中央環状品川線の工事。当社JVは,大井ジャンクションと大橋ジャンクションを結ぶ2本の超長距離シールドトンネル(約8km)のうち,大橋方面への本線となる「中央環状品川線シールドトンネル(北行)工事」を担当し,品川線の中間部分付近では「五反田出入口工事」の施工を進めている。また,供用中の新宿線と品川線を接続する「中央環状新宿線大橋地区本線接続工事」を担っている。

新技術で高速道路の出入口を造る

「五反田出入口工事」は,大橋方面に進入する五反田入口と,大橋方面から山手通りに出る五反田出口を構築する工事で,約1kmが工事区間となる。地下に整備される高速道路の出入口は,一般に地上部から掘削する開削工法によりトンネルを構築して,予め構築されている本線トンネルに接続する方法がとられるが,地上交通や地下埋設物への影響が課題となる。交通量の多い山手通りの交差点では通行止めができず,上下水道・ガス・電気・通信ケーブルなどの地下埋設物も複雑に交錯していた。そのため,一部の区間(3箇所)では,地中だけで工事が可能な非開削工法を用いているのが特徴。当社JVは,工程短縮のため「パイプルーフアーチ工法」を提案した。

図版:首都高速道路中央環状線地図

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図版:五反田出入口完成イメージ

五反田出入口完成イメージ

図版:五反田出口完成イメージ

五反田出口完成イメージ

図版:五反田入口完成イメージ

五反田入口完成イメージ

この工法は,まず2本の本線シールドトンネルの上部に,10数本の鋼管をアーチ状に並べて屋根を形成して,パイプ周りの土を凍らせ止水し,鋼管内部と鋼管間にモルタルを充填する。その後,シールドトンネルとパイプルーフで形成された空間を掘削し,出入口となる鉄筋コンクリート造の躯体を築造して,トンネル内部からシールドトンネルの壁(セグメント)を撤去することで,接続が完了する。

図版:躯体とシールドトンネルが一体となった状況

躯体とシールドトンネルが一体となった状況。トンネルの壁(セグメント)を撤去して接続する

「掘削の効率化を図るため,シールドトンネルとパイプルーフの間に,支保工・支持杭などを用いずに構造的に安定させています。これまで事例がなく,新たな挑戦でした」と話すのは岩下善一郎所長。厳密な構造解析や実験を繰り返してきたという。「理屈的に成立していても,現場では何が起こるかわかりません。現場は24時間体制で苦労が多い工事ですが,一緒に働く皆が頑張ってくれたから,ここまでこれた。躯体構築完了までのあと半年が勝負」と岩下所長は気を引き締める。

図版:岩下善一郎所長

岩下善一郎所長

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図版:「パイプルーフアーチ工法」により,2本の本線シールドトンネルとパイプルーフで形成された空間

「パイプルーフアーチ工法」により,2本の本線シールドトンネルとパイプルーフで形成された空間。掘削を効率化するため支保工・支持杭を使わない構造を実現している

図版:施工手順

地中に鋼管をアーチ状に挿入して屋根(パイプルーフ)を構築。鋼管周りの土を凍らせて構造的に安定させる

パイプルーフの下を掘削して,出入口となる躯体を構築

躯体を構築後,シールドトンネルの壁を撤去して出入口と一体化する

【工事概要】

中央環状品川線シールドトンネル(北行)工事(五反田出入口工事)

場所:
東京都品川区,目黒区
発注者:
首都高速道路
工期:
2007年2月~2015年3月
規模:
コンクリート工53,000m3 掘削工140,000m3 
土留壁工22,000m2 ほか

(東京土木支店JV施工)

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超難工事が日本最長の道路トンネルを生む

“自動車が走っているトンネルの壁を撤去していく作業”が想像できるだろうか。しかも最大深度はビル20階に相当する約60mの地下工事。それが,「中央環状新宿線大橋地区本線接続工事」だ。供用中の新宿線から大橋ジャンクションへ連結するシールドトンネル側面に約200mの鉄筋コンクリート造の拡幅躯体を構築,トンネルと一体化して,トンネルの壁を撤去。その後に品川線のトンネルと連結して新宿線と品川線がつながる。

「供用中のトンネルの壁を切り開いて撤去する工事は,世界で初めてといっても良いかもしれません」と説明するのは,約6年前から施工技術や工法を検討してきた藤田隆雄所長。その方法は,大橋ジャンクションと連結する供用中のトンネル側面を掘削し,上部から床版(拡幅躯体)を構築していく。最初の床版(上床版)を構築するための空間は,パイプルーフを補助工法として,山岳トンネルで用いるNATMを適用した。「供用中のトンネルや地山を絶対に動かすことはできない」(藤田所長)。地盤や既設トンネルの動きを予測した解析値と実測値をリアルタイムで照らし合わせながら,慎重に作業を続けた。その後,供用中のトンネル内に仕切りパネルを設置してトンネルの壁を撤去。現在,躯体構築,トンネル壁の撤去がほぼ完了し,掘削した部分の埋戻し作業が進む。

図版:藤田隆雄所長

藤田隆雄所長

「この工事には新工法がある訳ではなく,NATMなど既存技術の組合せです。ただ,都市部の狭い地下空間で,これらの技術が使えることを実証できた成果は大きい」。超難工事に携わった人たちの苦労は,当社の技術・ノウハウを蓄積させる。そして,新宿線の山手トンネルと接続されると合わせて約18kmとなり,日本最長の道路トンネルが誕生する。

図版:品川線本線となる拡幅躯体からシールドトンネルの壁を撤去する様子。右はイメージ図

品川線本線となる拡幅躯体からシールドトンネルの壁を撤去する様子。右はイメージ図

図版:NATMで構築された床版(拡幅躯体)を造るための空間

NATMで構築された床版(拡幅躯体)を造るための空間

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図版:シールドトンネル側面に約200mの鉄筋コンクリート造の拡幅躯体を構築

シールドトンネル側面に約200mの鉄筋コンクリート造の拡幅躯体を構築

図版:施工手順

供用中のトンネル側面を掘削。山岳トンネルで用いるNATMにより床版(拡幅躯体)を構築する空間を掘削

上部から品川線本線へ接続する拡幅躯体を構築して,地盤とトンネルを安定させる

供用中のトンネルの壁を撤去。作業中は仕切りパネルを設置して高速道路を走行する車の安全を確保

【工事概要】

中央環状新宿線大橋地区本線接続工事

場所:
東京都目黒区
発注者:
首都高速道路
工期:
2008年8月~2015年3月
規模:
地中連続壁工(CMS工)13,114m2 
掘削工(開削+NATM)100,458m3 躯体工45,086m3 ほか

(東京土木支店JV施工)

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