建物も教材
青森県十和田市の北里大学十和田キャンパスでは,獣医学部の2年生から6年生までの約1,500人が学ぶ。38.4haに及ぶ広大なキャンパスで2014年7月に本館A棟・B棟が完成した。それまで分散していた講義室や実習室,研究室,事務室といった中心的機能が両棟に集約された。
評判なのが館内のグラフィックデザインだ。階段の踊り場やトイレの入口に動物の写真が目印のようにグラフィック表現されており,学生の目を引いている。これらはじつは「教材」としてデザインされたものである。階段には写真とともに動物の足跡が描かれ,トイレの入口の写真はオスとメスで区別されている。学生に種別の見分け方を知ってもらおうと,獣医学部の教職員と当社建築設計本部がアイデアを練った。
トイレの入口が写真によって区別されている
階段のグラフィック。動物の種を足跡から識別させるデザインも教材
厳冬の地に親しみやすい研究環境を
獣医学の分野で日本有数の研究設備をもつ十和田キャンパスには,学生が日本各地から集まる。厳冬の地で5年間過ごす学生のためのこうした親しみやすい研究環境づくりは,教職員にとっても重要なテーマだったのである。
研究室の扉にもまた,教員の研究テーマに関連する写真が大きくグラフィック表現されている。学生たちが戸を叩く音も心なしか軽やかに聴こえる。
研究室の入口にもグラフィックデザイン。館内は親しみやすい空間となっている
B棟テラスからA棟を望む。A棟低層部のラーニングスペースは暖かみのある雰囲気
北里大学獣医学部 本館A棟・本館B棟(十和田キャンパス)
- 場所:
- 青森県十和田市
- 発注者:
- 北里研究所
- 設計:
- 当社建築設計本部,東北支店建築設計部(構造)
- 規模:
- A棟─RC造一部S造(KIP-RC・免震構造) 7F
B棟─RC造一部S造(KIP-RC・免震構造) 3F
ロッカー棟─S造 1F
渡り廊下棟─S造 3F 総延べ10,541m2
2014年8月竣工(東北支店JV施工)
子どもの感性を育む自然素材の空間
新潟県新潟市で今年7月に新潟青陵幼稚園の新園舎が竣工した。白く丸みを帯びた外観には,大小さまざまな窓がランダムに穿たれており,一見すると階高がわからない,想像力をかきたてられるデザインだ。
インテリアは一転して,木材がふんだんに使用された暖かみのある空間になっている。新潟青陵幼稚園の特徴はなんといっても豊かな自然環境にある。松林に囲まれた園内を子どもたちは毎日,縦横無尽に駆け回る。自然素材を活かした空間は,園児たちのこうした体験が園内でひとつづきになるよう考えられたものだ。
幼稚園は園児にとって最初に接する社会でもある。色彩が最小限に抑えられた空間は,子どもたちの感性を育む配慮に満ちている。
大小31個の窓が穿たれた新園舎の外観
自然の素材を活かした園舎の空間
新潟青陵幼稚園舎
- 場所:
- 新潟市中央区
- 発注者:
- 新潟青陵学園
- 設計:
- 当社建築設計本部
- コンセプトワーク:
- BAKOKOデザインディベロップメント
- 規模:
- RC造一部S造 2F 延べ1,505m2
2015年7月竣工(北陸支店施工)