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古都の史跡指定区域で創立100周年を刻む全面リニューアル

鎌倉学園中学校・高等学校①

建て替えか,改修か

鎌倉五山第一位の巨刹・建長寺に隣接する鎌倉学園中学校・高等学校で現在,校舎のリニューアル工事が進められている。築40年あまりの5階建て校舎を全面改修する計画だ。2014年4月に始まった3ヵ年III期の工事は,各年でゾーン毎に中央棟,東棟,西棟の順に装いを新たにしながら,2017年4月の全面リニューアルオープンをめざす。

当社ではこの設計・施工を担当するだけでなく,計画以前から学校との意見交換や提案を行ってきた。2010年ごろから鎌倉学園では創立100周年事業として,大規模災害に備えた安全で,高度な学習環境をもった校舎への機能整備を検討し始めた。これを受け,同校の卒業生でもある当社横浜支店営業部の山本啓吾課長代理は,学園に施設の更新を積極的に提案し始めていた。

写真:敷地に隣接する1775年建立の重要文化財・建長寺三門

敷地に隣接する1775年建立の重要文化財・建長寺三門

建て替えか,改修をしながら既存の建物を使い続けるか──「じつはこの選択よりも先に意思決定の態勢づくりをする方が重要だった」と語るのは,この計画のナレッジ支援を展開した開発事業本部の伊藤隆彦部長だ。自由闊達な校風で知られる鎌倉学園では,教職員からもまた施設の更新についてさまざまな要望が出されていたが,これらをなかなか集約できずにいた。

こうした状況を受け,学内では10名ほどの教職員による「総合環境委員会」が組織された。当社では営業,開発,設計,施工の各分野から学校づくりのエキスパートが集結し,伊藤部長はこの旗振り役としてスキームの策定にあたった。

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写真:今年3月にリニューアル工事が完了した鎌倉学園中学校・高等学校の中央棟

今年3月にリニューアル工事が完了した鎌倉学園中学校・高等学校の中央棟。落ち着いたトーンの外壁と白い構造体が凛とした佇まいを醸し出している

カフェテリアのある男子校

学校と当社の間で本格的な検討の態勢が整い,全面改修によるリニューアルを選択することが決まったが,これは鎌倉という立地によるところが大きい。建長寺や鶴岡八幡宮など歴史的な寺社仏閣が数多いこのエリアは国の史跡指定区域である。建て替えの場合,旧校舎と同等規模以上の施設を整備することは,現行の建築規制に照らすと困難であることが検証からわかった。さらに新築工事にともなう一時移転といった学校運営への負担の大きさも懸念された。

こうしてリニューアル化が決まると,総合環境委員会の議論は新設機能の具体化に絞られていく。ICT(情報通信技術・機器)を導入したマルチスペースや,バリアフリー化を目的としたエレベーターの新規設置といった要望がまとまり,横浜支店建築設計部の山下悟志建築設計グループ長が中心となってこれらが具体化されていった。

一方,この時点ではまだ関係者の間で明確なリニューアルのイメージが共有されていなかったと伊藤部長はいう。そんなとき,「議論の潮目が変わる提案があった」。それが「カフェテリア」の新設である。

従来の鎌倉学園は学食がない,伝統校ならぬ「弁当校」だった。そこに「カフェテリア」ができるというのは,学校で“できたて”が食べられるということ。「本当に学校が変わる。それもいい感じで」といった気持ちを皆で共有できた瞬間だった。これをきっかけに議論は深まり,学園刷新に向けた団結が強まっていったのである。

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写真:建長寺境内に隣接する鎌倉学園全景

建長寺境内に隣接する鎌倉学園全景

校内クリアランスツアー

委員会では刷新のイメージが次第にリアリティを帯びる一方,ある問題にも直面していた。既存の空間ボリュームに新たな機能を付加する余地がまったくなかったのである。

そこで行われたのが,校内クリアランスツアーだ。総合環境委員会の教職員が校舎内をくまなく歩き,部屋の要否を吟味して回る。用途があいまいな部屋を一つひとつ見ながら,「継続」か「廃止」か判断していった。当初は委員にも迷いがあったが,次第に積極的に廃止を検討するようになっていった。伊藤部長もツアーに同行し,「部外者の立場から背中を押せるポイントでは背中を押した」という。

新しい機能と廃止する空間がパズルのように組み合わされ,全面リニューアルの計画はいよいよ現実のものとなっていったのである。

写真:ピロティの空間は100席収容のカフェテリアに生まれ変わった

ピロティの空間は100席収容のカフェテリアに生まれ変わった。生徒たちからは「できたてを食べられるのが嬉しい」と評判

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