ロボットを含む先端ICTを活用し,建築生産活動における生産性向上を目指す「鹿島スマート生産ビジョン」。
そのビジョン実現のため,当社建築管理本部内に立ち上げられたスマート生産推進チームへの問合せは
日に日に増えている。現場との打合せで各地を飛び回るなか,資料作成や社内報告も行わなければならない。
現場のスマート生産を実現するために,自分達の業務を効率化する必要性を感じた彼らは,
新しい働き方へと舵を切った。
ワークスタイルの変革
現場のために考えたいこと,やりたいことはたくさんある。これまで現場で多くの苦労を実感し,そして,これからの建設業界を見据えて成し遂げたいビジョンがあるからこそ,その思いは強い。ただ,案件が増えるのに比例して自身の業務量も増える。時間には限りがあり,従来の仕事の方法,考え方では対応に限界があった。
従来,仕事はリレー方式のように誰かの手元にある情報(業務)が次の人に渡ることでリアクションが起こり,進んでいた。それゆえ,周囲は情報(業務)が個人の手元を離れるまでその内容や状況が分からず,進捗が個人の力に依存する部分が大きかった。
ICTツールはあらゆる情報(業務)の共有を可能とする。場所や時間,組織に制限されない共有は,様々な形態のコラボレーションを実現し,個人の力を組織の力へと昇華させる。
スマート生産推進チームは共有に業務効率化のヒントを見出し,様々なプロセスにおいて活用方法を探り,実践してきた。しかし,その取組みはまだ発展途上だ。全員が同じベクトルを向いてこそ共有の力は活かされる。これまでのワークスタイルを変える一人ひとりの行動力が鍵を握っている。

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会議
日程調整や議事録作成など,会議の前後で複数の付随業務が発生する。その業務負担は特定の人に偏る傾向があり,また情報も個人の手を離れるまでは周囲に共有されてこなかった。
〈デメリット〉
- 日程調整や議事録作成などの付随業務が特定の人の負担となる
- 議事録作成には確認者による指摘事項の反映作業もあるため,展開までに時間がかかる
- 会議に参加できなかった人は,議事録が展開されるまで内容を確認できない
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物決め
発信者から意見が欲しいファイルを関係者にメールで一斉送信し,それに対し確認者が各々のタイミングでメールや電話にて意見を伝えることで合意形成を図っていた。
〈デメリット〉
- メールが錯綜し,内容を整理する作業が手間になる
- 意見を反映させる作業を複数回にわたって行うため,周りはどれが最新版で,
どこまで指摘事項を反映させているのか分かりづらい - 最終決定までに時間がかかる
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タスク管理
誰かがチームの作業一覧を洗い出し,業務分担表の作成や,進捗状況を直接担当者にヒアリングすることで全体の作業を管理していた。
〈デメリット〉
- 担当者へのヒアリング作業が手間になる。
また,タイミングが遅れれば痛手になる可能性もある - 分担表作成業務自体が負担となる
- 担当者へのヒアリング作業が手間になる。
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情報発信
発信者が周知文や資料をメール発信することで周知・展開を図っていた。
〈デメリット〉
- メールフォルダ内で他の内容に埋もれ,見落としや後々の振り返りが困難となる
場合がある - 発信者に問合せが来る可能性が高い。また,そのやり取りは周囲に共有されないため,
同じような問合せに何度も対応させられるなど発信者の負担が大きい - 動画など容量の大きいデータの展開が困難
- メールフォルダ内で他の内容に埋もれ,見落としや後々の振り返りが困難となる

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会議
日程調整は共有のデジタル予定表※1やアンケートツール※2を用いて行う。アジェンダや議事録作成は,参加者が気づいたことや発言した内容を共有デジタルノート※3に書き込むことで共同する。
〈メリット〉
- どこからでも素早く日程を調整することができる
- アジェンダや議事録確認にかかる時間が削減され,情報共有も素早く行われる
- 会議終了時点で参加者全員が目を通した議事録のたたき台が完成している
- 会議に参加できない人も,デジタルノートを確認することで会議の内容をリアルタイムで確認できる
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物決め
複数人で同じファイルや画面を見ながら,チャットやビデオ会議を通して意見交換を行い,その場で意思決定を図る。また,決定に至った経緯を共有デジタルノートに書き込み,記録に残す。
〈メリット〉
- 時間や場所を問わずに,その場で素早く意思決定ができる
- デジタルノートを確認することでいつでも経緯を振り返ることができ,その場にいなかった人にも共有できる
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タスク管理
タスク管理ツール※4を活用してチームの作業を整理する。業務の割当てや個々の期限,進捗状況を可視化し,内容をチーム全員で共有する。
〈メリット〉
- 業務分担表作成にかかる負担を大幅に削減できる
- チーム全体のタスク量や個々の進捗状況,負荷状況を全員がリアルタイムで把握することができる
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情報発信
周知文や資料をポータルサイト※5にアップロードすることで情報共有を図る。また,社内SNS※6を用いることで,発信した情報に対して誰でも自由に意見交換を行うことができる。
〈メリット〉
- ファイルの大小に関わらず,アップロードするだけで情報が共有できる
- 検索機能があり,必要な情報を見つけやすくなる
- 問合せ先が分散されることで,発信者の負担が減る
- 社内SNS上のやり取りは周囲に共有,蓄積される
※1 個人の予定表を他のユーザーと共有することができるツール
※2 アンケート,テスト,投票を簡単に作成し,戻ってきた結果を自動集計できるツール
※3 文字を入力したり図形を描画したりできるほか,画像や音声,ファイルなどをまとめておくことができるツール。
他者との同時編集も可能
※4 新しいプランの作成,タスクの整理や割当て,進捗状況の更新などを簡単に行うことができるツール
※5 ファイルや情報を全て一つのシステムに集約することができるツール
※6 企業向けのセキュリティを備えたFacebookのようなソーシャルネットワーキングサービス
※1〜6は当社が導入しているOffice365でも実践できる