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Case 3 垣根を越えたコミュニケーション

SNSの登場により,私たちの生活は大きく変わった。
誰もが情報の発信者となり,一瞬にして多くの人が同時にコミュニケーションできる世界になったからだ。
SNSにより社内コミュニケーションを活性化させようとする動きは既に始まっている。
ここでは,当社横浜支店での事例から社内SNSを普及させるためのヒントと,その効果を探る。

社内SNSの思想は
約40年前に生まれた

CASE1,2で紹介したように,新たなICTツールの登場は,業務手法や情報の流れに大きな変化を与える。しかし,ツールを真の意味で普及させるためには,そのツールに込めた思想や思いが必要となる。そのことを横浜支店の社内SNS「Ywai!(わいわい)」が教えてくれた。

「Ywai!」の運用開始は2014年。現在,現場ごとの技術的な工夫から,竣工記念動画(横浜支店では全現場で制作),VRを活用した安全教育の体験会案内,若手のBBQ大会,ジョギングや登山クラブの活動まで幅広い情報を共有して,活発なコミュニケーションが行われている。

この「Ywai!」の思想が生まれたのは約40年前まで遡る。「施工系社員として入社して2,3年目の頃,伊豆半島の小さな改修工事を複数任されていました。花形現場に配置され活躍している同期もいるのに,なぜ自分だけがこんなところにいるのだろう。本当に鹿島建設に入社したのか。寂しさがつのりました。悩みを相談する相手もいなく,孤独感と疎外感で苦しみ続けていました」と若手時代を振り返るのは,野村専務執行役員横浜支店長だ。

こうした経験から“社員一人ひとりを孤独にせずに,全員が常に会社や同僚とつながりを感じられる会社にしたい”。若手社員から管理職,経営層へとキャリアを積み重ねてもこの思いだけは忘れなかった。

写真:野村専務執行役員横浜支店長

野村専務執行役員横浜支店長

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頼もしく輝いて見えた
3人の姿

TwitterやFacebookが社会で話題になり始めると野村支店長は直感した。「若い頃の悩みを解決できるツールなのでは。同じ土俵で,社員全員がフラットにつながり,意見を交わせる場になるはずだ」。すぐに支店の情報システム担当に開発を依頼し,「Ywai!」を立ち上げることになった。

野村支店長が描いた世界は,今,少しずつ実現している。「石川勇太郎君,鹿田康晴君,赤松政成君,本当にいい顔で頼もしく輝いて見えます」と,本誌2018年7月号発行直後に「Ywai!」につぶやいた。「発掘!旬の社員」のコーナーで,横浜市中区で施工中の「北仲北A-4地区計画工事」を舞台に,ICTツールを活かしながら活躍する若手社員3人を紹介した時のことだ。

図版:本誌2018年7月号「発掘! 旬の社員」

本誌2018年7月号「発掘! 旬の社員」

「支店長から直接言葉をもらうなんて。返信する時は少し緊張しました」と3人は本音を見せるが,返信内容には意志が込められている。「住戸の検査が始まるこれからが勝負なので,ICTツールの更なる活用を念頭に効率化を図っていきます」(石川さん),「ICT化支援の種は,現場にこそあると実感しています」(鹿田さん),「良い事例は現場内に留めず展開し,改革に少しでも貢献できるよう努めたいです」(赤松さん)というメッセージを送った。「3人から未来の建設現場を見せてもらい,頼もしく思います」と野村支店長は微笑む。

写真:左から石川勇太郎さん,鹿田康晴さん,赤松政成さん

左から石川勇太郎さん,鹿田康晴さん,赤松政成さん
(鹿田さんは横浜支店建築部建築工事管理グループ所属,他の2人は同支店北仲北A-4地区計画工事事務所所属)

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組織の垣根を越える

こうしたコミュニケーションは,社内SNSがなければ生まれなかったのではないだろうか。従来であれば,野村支店長の言葉は,支店幹部や所長を介して3人に伝わるか,電話やメールで直接伝えたとしても,社員全員がその言葉を知ることはできない。これがSNSというICTツールの力であり,組織の垣根を越える原動力である。「若い頃に,SNSがあれば寂しさを味わうこともなく,改修工事の大切さももっと早くに理解できていたはずです」(野村支店長)。あの時代を忘れない,その思いとICTツールが重なり合い,社内コミュニケーションを活性化させている。

Column

「Ywai!」という文化をつくる

野村支店長の思いを受けて「Ywai!」を構築し,運用・サポートを行っているのが,横浜支店管理部総務グループ(情報システム担当)の持田貢専任部長,吉橋悟次長,鎌田朋子担当だ。

当初,新たなコミュニケーションツールの登場に「炎上」を懸念する声もあがったが,情報システム側の心配は,誰からも書き込みが行われず新たなコミュニティが生まれないことだった。苦労してカタチにしても,使われなければ意味がないと考えていたからである。しかし,野村支店長はじめ支店幹部が,積極的な書き込みを行うことで,その不安は払拭された。仕事以外の親しみやすい情報も多く,徐々に若手社員からの投稿も増え,今では幹部と若手が双方へ「いいね!」とメッセージを送ることも珍しくない。

3人が築き上げたのは社内SNSというシステムではなく,誰もが自由にコミュニケーションできる文化なのだろう。

※「Ywai!」は,横浜の“Y”と“わいわい”話せる場所を掛け合わせたもの。支店内の公募で選ばれた

図版:「Ywai!」の画面をバックにする横浜支店管理部総務グループ(情報システム担当)のメンバー

「Ywai!」の画面をバックにする横浜支店管理部総務グループ(情報システム担当)のメンバー。
左から鎌田朋子担当,持田貢専任部長,吉橋悟次長

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事業継続にも
コミュニケーションツールを

現場と本支店間の情報共有がBCPにおける初動対応を大きく左右する。大規模な自然災害などが発生した緊急事態にこそ社内コミュニケーション力が問われると言える。建設業の特徴としてあげられるのが,事業拠点が日本全国に点在していることだ。そのため,交通網や通信網が遮断された場合,全ての事業所とお互いに連携を取り合うことが困難となる。

当社は,阪神・淡路大震災や東日本大震災などでの経験を踏まえ,ICTツールを活用し,本支店と各地の現場の距離を縮めるため,様々な取組みを展開してきた。

具体的には,本支店は現場カメラの映像を確認することで正確な状況を把握し,チャットやビデオ会議を通したリアルタイムなコミュニケーションで対応策を伝えられる体制としている。

8月28日に行われたBCP訓練でもこうした連携方法が確認された。今後もICTツールを活用したより効果的な情報共有の方法を探っていく予定だ。

当社が担う非常時における災害復旧という社会的使命。ICTツールはこの使命を下支えする。

図版:震災訓練で震災対策本部と他支店間で連絡を取り合う様子

震災訓練で震災対策本部と他支店間で連絡を取り合う様子

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