労働時間削減のためには組織としての取組みもさることながら,
社員一人ひとりのスキルアップもその鍵を握る。能動的に自らのスキルを高めることで,
働き方を変えていくこともできる。
建設とデジタルの知識を
併せ持った社員
デジタルの時代が到来し,絶え間ない変化が急速に起こっている。現在はデジタルの知識や技術は欠かせないものとなった。今後当社を牽引するのは,建設の知識・経験にデジタルの知識を併せ持った社員である。当社ではデジタル推進室(以下,デジ推)が中心となり,社員の業務効率化につなげるため,基礎から高度なものまで,社員のレベルに合わせた様々なデジタル人材育成メニューの構築を進めている。
スキルに応じた様々なメニュー
メニューは「基礎(知る)」「初級(使う)」「上級(使いこなす)」「高度(リードする)」の大きく4つのカテゴリーに分類され,基本的なデジタル技術・活用法から,専門的な課題解決のリードまで,様々なことを知り,体験し,学ぶことができる。
例えば基礎の「これだけはおさえたいExcel 基礎/ Word 基礎」の eラーニングでは,Excel・Word 文書を効率的に作成,修正する技を学ぶことができる。昨年,社内で実施された「働き方改革や残業規制対応に関する意見募集」で多く挙がった,「すぐに使える,ちょっとした時短テクニックが知りたい」との声に応えるものだ。このほか基礎では,約200もの講座から自分に合うものを受講できる。また,初級・上級・高度では,対面やオンラインで講師による直接の指導を受けながら,数日から数カ月かけるメニューもあり,自分に合ったものに取り組める。
各メニューは,社内で定期的に受講者を募集しており,イントラネット上の鹿島DXポータルから申し込むことができる。
今後も,業務効率化の実行を目指し,現場・建設業に寄り添った育成体系・教育メニューの更新を続けていく。
Microsoft Power Platform
上級セミナー第1回生が
活動中
当社は,業務のデジタル化・効率化を後押しするツールとして,Microsoftが提供するローコード開発ツール「Microsoft Power Platform」を導入し,ツールの活用を促進するために初級(概要を知る)~中級(使い方を学ぶ)~上級(実務への活用)までの学習コンテンツを提供している。
9月12日,外部講師を招いた上級セミナーがKX-SQUARE(東京都豊島区)で開催され,第1回生は,本社・支店・工事事務所から種別の枠を超えた9名が参加した。セミナーは全9回(うち2回は対面必須)で今回が2回目,受講期間は2ヵ月にわたる。
受講者が日ごろ業務で抱える課題を持ち寄り,業務で使えるアプリを作成し,自部署で実際にアプリを活用することが目標となる。受講者のひとりは「自部署からも期待されて参加している。成果を出したい」と意気込む。10月31日に予定される発表会に向け,忙しい業務の合間を縫いながら活動中だ。
膨大な品質記録書類の集計
デジ推が主催する初級教育メニュー「課題発見!解決デジタルアンバサダーワークショップ」でRPA・OCR※1に触れ,学んだ成果を活かしミルシート※2集計業務を従来の6時間/週から42分/週にまで削減した社員がいる。
橋本尚範工事課長は,地上58階,高さ194.95m,延床180,827m2の超高層マンション建設現場で,品質管理責任者を担う。その業務のひとつに,膨大な量の品質記録書類の集計がある。鉄筋量は約28,000tにも及び,ミルシートは1枚ずつ集計後,様々な社内外への提出書類に転記しなければならない。最盛期は,毎月ミルシートが数百枚入った段ボールがいくつも届く。検査対応のため,タイムリーな処理も必須だった。
デジタルを知り,現状を変える
この作業をなんとか効率化できないか考えた橋本工事課長は,デジ推が企画する,eラーニング(基礎)を自ら申し込み受講した。その後,さらなるステップアップのため,本ワークショップを受講した。「プログラムなどの専門的な話はなく,心理的安全性の高い中で,くすぶっていたものに火をつけてもらいました」と研修時の環境の良さを語る。
その後,ワークショップの分科会や,デジ推のサポートを得て,現場にOCRを導入。安定した認識精度を確保するために,設定の微調整を十数回重ねるなどの改良を加えながら,OCR処理したデータを様々な社内外への提出書類に出力できるようにすることで,業務効率化を達成した。
橋本工事課長はミルシートだけではなく,コンクリート試験結果集計にもOCR処理を応用するなど,新たに得た知識の活用の幅を広げている。「他人に仕事の流れを説明し,それをシステム化してもらうことはすごく労力がかかります。自分でシステムを作ることができれば,改良も早くもどかしさもありません」と,最前線にいる社員がデジタルを自ら知ることで現状を変えていくことを体現している。
課題を共有しチーム鹿島で対応
今回の取組みを支援したデジ推中山理沙課長代理は「このワークショップは参加する社員が自分の業務の課題を持ち寄り,自ら考えてもらうことを大事にしています。種別を超えた参加も特長のひとつです。新しい仲間を見つけ,課題に取り組む体験をして欲しいです」と説明し,積極的な参加を呼び掛ける。
中川康子担当は「一人ですべてをパーフェクトにできる人はいないと思います。課題に一人で向き合うのではなく,ITスキルがある人,課題を持っている人,業務知見がある人がそれぞれ補い合って,チーム鹿島で対応しましょう」と悩みを共有することの大切さを強調する。