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当社グループ専用対話型AI「Kajima ChatAI」

当社は6月から,自社専用の対話型AI「Kajima ChatAI(カジマ チャット エーアイ)」を構築し,
当社および国内外のグループ会社(一部を除く)従業員約2万人を対象に運用を開始した。
生成AIの活用は,業務効率や生産性を飛躍的に向上させる大きな可能性を秘めている。

鹿島グループ専用の安全な環境

当社は重要情報の漏えい発生リスクを考慮し,以前はChatGPT※1の業務利用を禁止していた。一方で生成AI※2の利用は,従業員の業務効率化や生産性向上に寄与する点もあることから,安全性を担保した当社独自のChatGPT環境の構築を進めてきた。

Kajima ChatAIは日本マイクロソフトのAzure OpenAI Serviceを活用し,ChatGPTと同等のAIモデルを社内に構築したもので,入力した情報が外部の学習に利用されない鹿島グループ専用の安全な環境となっている。さらに,利用時の従業員認証や利用履歴の記録など,独自の機能を付加したことで,より安全に利用できる。

Kajima ChatAIの利用用途は多種多様。情報収集・分析,アイデア出し・企画書,議事録,メール代筆,英語や中国語の翻訳,プログラミングなど様々な使い方が考えられる。現在は,1日当たり平均1,000回以上質問され,鹿島グループ全体の業務の生産性向上に役立っている。

便利な最新ツールである一方で,利用上の注意もある。AIが作成する回答には真偽が確かではない情報も含まれているため,鵜吞みは禁物だ。国によっては政府が利用自体を禁じていたり,回答が既存の著作物と類似している場合,回答を利用する行為が著作権侵害にあたる可能性もある。利用上の注意事項を確認の上,活用したい。

※1 大規模な文章を学習して,質問に適すると推測する回答を,確率的に単語列の次に来る単語を予測し,
自然な文章として生成する

※2 人間が作成する文章や画像などのコンテンツを自動生成する人工知能技術

“プロンプト”を工夫する

Kajima ChatAIは対話形式で,文章・プログラムなどを生成して短時間で回答してくれる。しかし単純に「…について教えて」「以下の文書を要約してください…」と入力しても,一定の精度では回答してくれるが,思いどおりにいかない場合もある。

この時,プロンプト※3を工夫することで,より適切な回答が得られる。例えば図1のようなプロンプトを入力すると会議の議事録の要約をきれいにまとめてくれる。社外のサイトでは役に立つプロンプトが多数紹介されており,参考サイトを当社イントラネット上で紹介している。

既にイントラネット上では,施工ハンドブックの注意点をまとめてくれるようなプロンプトを例示しているが,今後も,業務で役立つプロンプトが共有される予定もあり,ますます効果的な利用が見込まれる。生成AIは進化のスピードが目覚ましく,性能も日々進歩している。当社はさらなる効果的な活用に向け,進化に追従する環境構築を加速していく。

※3 AIに対する指示や入力文

図1 プロンプトの例

図版:図1 プロンプトの例

チャット画面の例

図版:チャット画面の例
改ページ

Action システム開発の時間短縮!全体的な品質もUP

丸一日かかるものが数十秒

Kajima ChatAIを業務効率化に結びつけているチームのひとつが建築管理本部建築工務部生産推進サポートグループだ。当グループは,当社グループ会社OneTeamと協力し,建築現場のICTツールの普及展開,検査や調査業務の支援などを通じて各支店の生産推進サポートを支援し,現場の業務効率化を推進する。

当グループではRPA業務支援を担うチームのメンバーが,システムを自動化するシナリオ開発にKajima ChatAIを活用している。例えば「VBS言語で複数のPDFファイルを結合したい。コードを作って」と指示を出すと,コードを出力し,回答したコードの説明までしてくれる。コードをゼロから作り出す作業や,修正作業などに用いている。

当グループの次席として,実務と管理の中心を担う河野正浩課長代理は「チームにはITの基礎知識が全くない人もいます。調べながらコードを書くと,丸一日かかるものが,数十秒で回答が返ってきます」とその能力にはじめは驚いたという。RPAチームのリーダーを務める善生(ぜんしょう)彩友美担当は「エラーの出る回答でも何度か問答すれば,コードの80%までは作ってくれます」と大部分をKajima ChatAIが短時間でこなすことができること,さらに,チームリーダーとして業務を進める際の指示の出し方について,アドバイスをもらい励まされたこともあるという。

チームの力を底上げ

プログラミングなどITに関する専門的な知識を有するOneTeamの乙訓(おとくに)昇培担当と肆矢(よつや)隆人担当は,「調べにくかったプログラミング言語でもサクサク情報が出てきます。メジャーで情報量が膨大な言語では,取捨選択が難しい人にとっても,必要な情報に辿り着きやすいです。ITの知識が無い人でもすぐに戦力となるので,人手が増えた感じがします」と効果を実感している。

「開発時間が短くなると,システムチェックの時間にあてられ,全体的な品質も良くなっています。教師役としてチームの力を底上げしてくれますし,この生成AI自体が人として働いている感覚です」(河野課長代理)。

写真

RPA業務支援を担うチームの中心メンバー。
左から肆矢担当,善生担当,乙訓担当,河野課長代理

interview

潜在能力が高いツールを,
ぜひ活用してください!

Kajima ChatAIサービス開発の中核を担った,当社ITソリューション部データ・システム技術グループの3名に,開発当時の様子や現在の利用状況,今後について話を聞いた。

開発経緯を教えてください

生成AIのビジネス利用は,ChatGPTが注目を集める前から調査・研究を進めていました。今年になってChatGPTが急速に認知されましたが,入力したデータがAIの学習に使われるなど情報漏洩リスクが懸念されるため,当社では4月に利用を禁止しました。その代替策として,鹿島専用のChatGPTを構築して鹿島グループに提供することとしました。

開発の際に意識したことは

安心・安全な環境を構築するというセキュリティの意識はもちろんですが,開発スピードも意識しました。禁止した時点で,代替策のリリース予定を明示し,優先順位の低い機能をある程度削るなどして,各所からの早期のリリース要望に応えるべく努めました。ただし,使えないものを提供しても意味がないので,一般に公開されているChatGPTと同程度の使い勝手を目指しました。

開発にあたり苦労したことは

開発時は世の中にまだ同種のシステムをつくるノウハウがほとんどない中で,情報収集を行わなければなりませんでした。Microsoftの米国本社からSNSで発信される情報なども随時チェックしました。

活用状況はいかがですか

6月に公開してから,Pythonなどのプログラミング言語やExcel関数に最も多く利用されています。事務系・技術系問わず全ての職種で活用されていますが,管理部門と比較すると現場での利用がまだ少ないと感じています。現場では,社外向けのメールの代筆や報告書,議事録の要約などに利用している方が多いようです。今後は,もっと現場業務の生産性向上,時短につなげられるよう活用を促進していきたいと考えています。

最後に

公開から3ヵ月経った現在は,平日平均で1,000件程度の利用があります。若手社員だけでなく,入社30年以上の利用者も多いです。

一方で「誤回答・嘘があり業務にあまり使えない」という声もあります。うまく使うにはプロンプトを工夫する必要があるなど,Kajima ChatAIはまだ発展途上にあります。みなさんの業務に役立つものと確信し,バージョンアップをこれからも続けていきます。まだ使ったことがない方はぜひ利用していただき,有効な活用法や課題をフィードバックしていただきたいと思います。

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左から川村正治次長,高橋健一グループ長,佐藤眞輝主任

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