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未来のアスリートとともに:栃木県総合スポーツゾーン新スタジアム

現在建設が進む栃木県総合スポーツゾーン新スタジアムは,
25,000人収容の県内最大級となるスポーツ施設。2022年「いちご一会とちぎ国体」・
「全国障害者スポーツ大会」のメイン会場やフットボールスタジアムとして使用される予定だ。
当社はここで大型PCa段梁のダイナミックな施工に取り組んだ。工事の様子は見学会をはじめ,
テレビ・新聞などのマスコミにも広く公開し,開かれたスタジアムを目指している。

図版:スタジアム外観(完成予想図)

スタジアム外観(完成予想図)

栃木県総合スポーツゾーン 
新スタジアム新築工事

場所:
栃木県宇都宮市
発注者:
栃木県
設計:
久米・AIS・本澤JV
用途:
陸上競技場兼サッカー場
規模:
RC造一部SRC造 屋根S造 延べ42,168m2
工期:
2017年4月~2019年10月
(関東支店JV施工)
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図版:スタジアムは,長辺方向(南北)約250m,短辺方向(東西)約200m,周長約720mの楕円形状(撮影:2019年8月4日)

スタジアムは,長辺方向(南北)約250m,短辺方向(東西)約200m,周長約720mの楕円形状(撮影:2019年8月4日)

図版:当社は北エリアの新スタジアムの施工を担当している

当社は北エリアの新スタジアムの施工を担当している

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図版:基本断面図

基本断面図

図版:工事中のスタジアム内部。メインスタンドにはVIP席が設けられている

工事中のスタジアム内部。メインスタンドにはVIP席が設けられている

段梁はPCaブロックを現場で圧着

観客席を支える上部スタンドの躯体は,工場で製作したPCa部材で構築されている。その中でも最大の部材となるのは,階段状の梁,「段梁」である。段梁はいくつかのPCaブロックにPC鋼線を通して引っ張り(緊張),一体化(圧着)するPCaPC工法でつくられる。工場で製作した4~14ピースのPCaブロックを現場で地組みした段梁は,長さ15~34m程度,重さ70~210t程度にもなる。

比較的小さい段梁はフィールド内の地上で組み立て,とくに重量が大きい200t前後の段梁は下部スタンドに設置した構台の上で地組みすることにより,クレーンの揚重距離を小さくした。

図版:段梁の地組みイメージ

段梁の地組みイメージ。高さ2m程度の支保工上に寝かせた状態で組み立てる。それぞれのPCaブロックは鉄筋ではなく,PC鋼線を通して引っ張り(緊張),一体化(圧着)させる

圧巻の超大型クレーンによる段梁取付け

地組みした段梁は,スタンドに設置する角度に調整しながらクレーンで吊り上げる。全部で66本。最盛期には750tクローラクレーン2台が導入された。非常にダイナミックな作業だが,取付工事はとても繊細だ。

サイドスタンド用の段梁は,長さ15m,重さ70tの小さいタイプである。梁を支える2本の直柱からそれぞれ20本ずつ出ている鉄筋継手を段梁裏面の孔に同時に差し込む。

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図版:段梁建方には750t超大型クレーンを使用

段梁建方には750t超大型クレーンを使用

図版:取り付ける角度に調整しながら段梁を吊り上げる

取り付ける角度に調整しながら段梁を吊り上げる

図版:長さ15m,重さ70tのサイドスタンド用段梁のダイナミックな取付け

長さ15m,重さ70tのサイドスタンド用段梁のダイナミックな取付け

図版:2本ある直柱からはそれぞれ20本の鉄筋継手が出ており,段梁裏面の孔に同時に差し込む

2本ある直柱からはそれぞれ20本の鉄筋継手が出ており,段梁裏面の孔に同時に差し込む

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一方,メインスタンド用は長さ30m,重さ150tの大型の段梁で,直柱とY字の形をした柱で支える。直柱との接続はサイドスタンドと同様に鉄筋継手。Y字柱の2ヵ所の接続は,先に仮設鉄骨ジョイントで接合し,ボルトで本締め後接合部を配筋,コンクリート打設を行った。

これだけの重量物となる段梁を,クレーンによって誤差数ミリ以内ですべて同時に納めるのは,高度な技術と経験が必要となる作業だ。

特徴ある外観の「おわん型形状」の曲線は,裏面が平らな下部床版を,少しずつ角度を変えて架設した多角形によって形づくられている。この曲線を表現するために全部で1,500枚以上もの下部床版が使われた。

図版:メインスタンドには長さ30m,重さ150tの大型段梁が立ち並んでいく

メインスタンドには長さ30m,重さ150tの大型段梁が立ち並んでいく

図版:外から見るスタジアムのスタンド。平らな下部床版の角度を変えて組み合わせることにより曲線が表現されている

外から見るスタジアムのスタンド。平らな下部床版の角度を変えて組み合わせることにより曲線が表現されている

県民に長く愛されるスタジアムに

本スタジアムの工事は,広く公開し,常に県民に開かれて行われた。昨年6月から県のウェブサイトで現場見学会の募集を開始。これまで27回もの見学会が実施され,近隣住民や学生,各関係団体,県内外の視察団などの見学会も含めると計129回,延べ3,500名を超える見学者が来場した(2019年6月末時点)。

普段は見ることができない建設中の現場を公開するのは,愛着をもって県民がスタジアムを利用してほしいという県の願いであり,コンセプトである「“百年”愛される」を工事中から取り組んできたからだ。当社JVは,県の意図をくみ,安全に十分配慮したうえでの見学会実施に最大限の協力をしてきた。

引渡し予定は今年10月。その後フィールド内や外構の工事が続き,2020年4月より使用が開始される。本スタジアムは2020年東京オリンピックにおけるハンガリー陸上競技選手団のキャンプ地として決定した。サッカーでは,宇都宮をホームタウンとする現在J2の栃木SCがこのスタジアムを本拠地とする構想をもっており,将来J1への昇格が期待されている。

これから栃木県の新たなランドマークとして200万人の県民が誇れるスタジアムとなっていくことだろう。

interview

スタジアム系スポーツ施設のスペシャリストとして

写真:石井 正樹 所長

栃木県総合スポーツゾーン 
新スタジアム新築工事事務所
石井 正樹 所長

上部スタンドをすべてPCaPC工法で行うのは初めての経験でした。段梁に屋根骨格が載るため,先端の高さは数ミリ単位の精度が求められる非常に難しい作業となりました。無事高さが計画通り納まってできたときはうれしかったですね。

1991年入社以来,不思議なことに,長野オリンピックのエムウェーブ建設や西武球場(埼玉県)の屋根架構工事,埼玉スタジアム2002新築工事と,当社を代表するスタジアムに多く携わってきました。今回このスタジアムを任されたのも何かの縁かもしれません。

この工事現場では,県民にスタジアム建設のご理解と愛着をもってもらうため,見学会を多く開きました。発注者である栃木県のほか当社内の関係部署やJV関係者など,いろいろな方面から見学の希望をいただき「普段見ることのできない生の建設現場を見ることができ感動した」「立派なスタジアムをつくってください」など,激励の言葉をいただきました。

昨年の夏休み期間中には県の見学会を3回開催するとともに,小・中学生対象の鹿島サマースクールも行われ,当現場にも大勢の子どもたちが来場しました。みな大きな構造物の工事の迫力に圧倒されながらも,こちらの説明に熱心に耳を傾けてくれました。いわば未来のアスリートである子どもたちが愛着をもってこのスタジアムを利用し,いずれは選手となって活躍してくれたらうれしく思います。また,次代を担う世代に工事や建設業に興味をもってもらうきっかけを提供できたことは,これからの建設業にとっても大きな意義があったのではないかと思います。

図版:スタジアム見学会の様子

スタジアム見学会の様子

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