緻密な調査分析を重ね,
風土に適した緑地環境を知る
材木の産出から生態系保護,
森林クレジットの取得まで
北海道開発が盛んに行われた明治期に,政府から借り受けた尺別の地が当社グループの山林経営の原点である。開拓に伴い行った原生林の伐採,材木化によって副産物的に林業に着手することとなったが,軽井沢から寒気に強いカラマツの種子を取り寄せるなど,その土地に合った樹種を探求し,営林努力を重ねた結果がいまの尺別山林の姿だ。手入れの行き届いた森には,キタキツネをはじめとするさまざまな動植物が息づき,豊かな生態系が育まれている。
尺別山林の管理は当社グループのかたばみ興業(以下,かたばみ)が行う。北は北海道から南は宮崎県まで,気候も植生も異なる国内各地の5,500haの山林を管理している同社は,環境省のオフセット・クレジット(J-VER)認証*1を申請,取得の実績があり,現行制度となるJ-クレジットの取得にも意欲的に取り組む。温暖化対策に国を挙げて取り組む中で,カーボンニュートラル達成の要となるカーボンオフセットに山林管理で貢献する。
*1:森林は間伐をはじめとする適切な管理によってCO2吸収能力が高まるため,CO2排出を埋め合わせるカーボンオフセット効果が認められている。J-VERはカーボンオフセットを行う際に必要なクレジットを発行・認証する制度として2008年に環境省が創設。2013年より経済産業省・環境省・農林水産省が運用するJ-クレジット制度へ移行した
人びとに愛される風景を,より安全に
かたばみが行う樹木管理の現場は山林の中だけではない。東京を代表するイルミネーションの名所「表参道ケヤキ並木」(東京都渋谷区・港区)の約1.1kmにわたる管理にも携わっている。樹木医資格保有者が,150本以上あるケヤキの樹木診断,根・幹の状況を診断しカルテに記録,危険度の高い樹木には樹勢回復や植替えなどの処置方法の提案を行う。
曹洞宗大本山「永平寺」(福井県永平寺町)は鎌倉時代の1244年に開山。その長い歴史の中で育まれた木々は,近年になり枯れ枝の落下や幹折れなどが多発し,2010年の強風による巨杉の幹折れを機に環境保全対策に着手した。境内の建物と森林の保全,人命保護のため,かたばみの樹木医らが樹木の診断と対策実施に努めている。樹木のケアで,残したい風景を次世代へつなぐ。

表参道ケヤキ並木
photo: PIXTA

ケヤキの状況の調査,診断作業風景

永平寺境内

木に登り隅々まで目視で診断する