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被災現場を歩く~熊本高森線俵山トンネル外復旧工事~

熊本市と阿蘇地域を結ぶ熊本県道28号熊本高森線。その一部である全長2,057mの俵山トンネルは,当社JVが熊本市側1,056mの施工を担当した。同トンネルを含む俵山バイパスが開通したことで,それまでの俵山を越えるルートから距離,時間とも短縮し,交通の利便性が飛躍的に向上した。熊本地震で熊本高森線は阿蘇郡西原村―南阿蘇村間約10kmが被災し,通行止めとなった。なかでも俵山トンネルは,本震直後に「崩落」と報じられた。俵山トンネルを含む県道28号は大規模災害復興法に基づく国の直轄代行が適用され,当社は災害応急対策業務の特定業者として5月27日から調査・復旧工事にあたっている。震災から約2ヵ月たった6月23日,「熊本高森線俵山トンネル外復旧工事」の現場を訪れた。

図版:地図

図版:地図

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6月19日から猛烈な雨が降り続いた熊本地方。曇り空の中,熊本市内から車で現地に向かった。車窓から眺める市内は人びとが行き交い,一見すると日常生活を取り戻しているように見えた。しかし,建物に目を向けると,ところどころに外壁タイルの剥げやひび割れがあり,復興へは道半ばだと痛感した。街には「がんばろう 熊本」と書かれた幟やステッカーが並び,改めて震災の大きさを感じる。

県道28号線から阿蘇方面への迂回路であるグリーンロードを経由し,現地へ向かった。山を縫うように走る片道1車線の道は,道幅が狭く,急カーブが連続し,冬は路面凍結が生じる難所と言われている。峠には濃い霧がかかっていた。

現地に到着すると目の前の土砂が崩れ,2台の重機が処理を行っていた。「九州地方に降り続いた大雨の影響で,20日未明に土砂が崩れ,トンネルへの道が遮断された」と,この現場を指揮する中原和彦所長が教えてくれた。

今回,当社JVが施工を担当する「熊本高森線俵山トンネル外復旧工事」では,俵山トンネルから南阿蘇トンネルにかけて一帯の復旧工事を行う。

阿蘇方面から熊本市方面に向け,約3kmの道を歩き現場の状況を確認した。

写真:中原和彦所長

中原和彦所長

南阿蘇トンネルに入ると,各所にチョークでマーキングがされている。「ウキ,ハクラク…」。被害箇所にその状態を記したものだ。一般的に山岳トンネルは地震に強い構造物と言われているが,今回の西原村と益城町で計測した「最大震度7」の地震は,その周辺地域や構造物に多大な被害を与えている。

南阿蘇トンネルを抜け俵山トンネルへ行くと状況は一変した。坑内に明かりがない。「地震による土砂崩れで電気室が流されてしまい,俵山トンネルは電源を失った。さらに今回の大雨による土石流で,阿蘇側の道路も寸断され,仮設照明設備の搬入ができなくなった」(中原所長)。

懐中電灯を片手にトンネル内へ歩を進めると,しばらくして自然光が入らなくなる。暗闇と静寂感が,恐怖心を煽る。懐中電灯の光を頼りに周囲の状況を確認すると,そこにはコンクリートのひび割れや路面の持ち上がりなどの被害が多数あった。中には覆工コンクリートが大きく剥落し,防水シートが露出し,いま余震が来れば崩れ落ちてしまうのではないかという箇所もある。「覆工コンクリートが剥がれ落ちたもの,大きく斜めに亀裂が走っているもの,コンクリート断面が大きくずれたもの…。地盤によるものか原因はわからないが,トンネル内には様々な被害があった」と中原所長が呟いた。

坑口から1kmほど歩いたあたりで明かりが見えた。作業員が高所作業車に乗り,トンネルに異常がないか目視と打音検査をしているところだった。「現在,3班体制で調査を進めている。調査に抜けがあってはならない。損傷状況を正確に確認したうえで復旧方法を検討していく」(中原所長)。

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写真:暗い坑内で調査を行う作業員

暗い坑内で調査を行う作業員

写真:坑口100m付近。覆工コンクリートが大きく剥落している

坑口100m付近。覆工コンクリートが大きく剥落している

写真:斜めに大きくひび割れ,断面がずれていることがわかる

斜めに大きくひび割れ,断面がずれていることがわかる

俵山トンネルを抜けると,ようやく周辺が明るくなり一時の安堵感に包まれた。しかし,そこで目にした光景はさらに被害の大きさを物語っていた。

坑口の左右の土砂が崩れ,道路はひび割れている。周辺の山々は,各所で土砂が崩れ茶色い断面が見えた。風光明媚な阿蘇の地が姿を変えていた。

現場では,6月29日から本格復旧に着手した。

「一刻も早い復旧を…」。そう願いながら,開通に向けて24時間体制で工事が行われていく。

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熊本高森線俵山トンネル外復旧工事

場所:
熊本県阿蘇郡西原村~南阿蘇村
発注者:
国土交通省 九州地方整備局
工期:
2016年5月~2017年3月

(九州支店JV施工)

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