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KAJIMAダイジェスト

Focus1 地下工事

壮麗な姿が人々を魅了する丸の内駅舎の地下では,人々が知ることがなかった地道な作業が行われていた。
全長約335m,総重量7万tもの駅舎を一度鉄骨の支柱で仮受けし,これまで駅舎を支えていた1万本以上の松杭を撤去。
駐車場として利用される地下躯体を構築し,免震装置に建物の荷重を移動した。
巨大ターミナル駅の機能を維持しながら行われた「居ながら」の地下工事に焦点をあて,
100年の歴史を継承するために奮闘した姿を追う。

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東日本旅客鉄道東京ステーションシティ工事区の主任として施工監理を担当した宇野宏司さんと当社JV工事長として施工全般を管理してきた小吹教雄さんの二人に地下工事の思い出や苦労話を語ってもらった。

小吹 宇野さんが現場にいらしたのは,2010年6月でしたよね。ちょうど地下躯体の屋上にあたる免震階の梁と床の配筋検査が大詰でした。
宇野 そうでしたね。逆打ち工法だったので地下躯体構築の初期段階でした。配筋検査は,最も低い所で高さ45cmくらいの空間で行いました。鉄筋の上に膝をつきながらですから,痛さとの戦いでもありましたよ(笑)。
小吹 地下躯体や免震層構築,杭工事,1万本もの松杭撤去,駅舎の仮受けなど,今,思い起こすと地下工事は苦労の連続でしたが,乗降客の方との接点があるドーム内の地下工事は神経を使いました。
宇野 私が最初に本格的に調整した仕事が,まさに北ドーム内の北口改札直下にある地下躯体と床の構築でした。通常,ドーム内の地下工事は,旅客通路と工事エリアを区画しながらの作業でしたが,改札直下だけはどうしても区画できなかったため,土日に改札を約3ヵ月間,一部閉鎖して対応しました。
小吹 宇野さんはじめ工事区の方々には駅との調整に,相当に骨を折ってもらったと思っています。
宇野 毎週金曜の終電後に作業を開始して,月曜始発前には改札を含め全て元に戻す。始発電車の運行を妨げるようなことは許されませんから,大変な仕事でした。
小吹 始発電車に間に合わせるという話だと,改札直下以外でもドーム内の地下躯体や床の仕上げ工事なども同様ですね。終電後の1時から4時までが作業時間となり,覆工板を剥がして戻すことを考えると,実質1時間~1.5時間しか作業時間が無かった。梁の構築は,ひと晩で1本~2本が限界でした。通常3時から覆工板の復旧作業に入っていましたが,始発電車の時刻ギリギリまでかかることもあり,その時は社員,作業員を総動員して作業をしたのを覚えています。
宇野 その日の作業に合わせて,覆工板の剥がす効率を考えた配置計画には恐れいりました。あれだけ複雑なパズルを組むのは,小吹さんにしかできないと思います。
小吹 次の作業の効率のことを考えるのは,施工屋として腕の見せどころです。しかし実際のところ,仮設の床を撤去して完成した石貼りの床を乗降客の方が歩いている姿を見た時は,パズルが終わったとホッとしました。2008年3月から2012年9月までの54ヵ月,4年半もの間,同様の作業が続きましたからね。宇野さんにとっては,2012年6月の北口改札の一部使用開始は印象に残っているのでは?

写真:宇野宏司さん

宇野宏司 さん
担当:施工監理全般 主任
(現 東日本旅客鉄道
東京工事事務所建築計画
建築企画グループ)
在任期間:2010年6月〜
2012年9月

写真:小吹教雄さん

小吹教雄 さん
担当:施工管理全般 工事長
(現 東京建築支店羽田物流
ターミナル新築工事)
在任期間:2007年11月〜
2012年10月

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宇野 確かに区切りとなる大仕事でした。仮設から本設の改札設備に一晩(約4時間)で一気に切り替える作業です。総勢100人超が作業にあたりました。当社の機械や電気担当と一緒に,各会社の作業手順と順番を念入りに計画して,当日の作業に臨みました。全て計画どおりとはいきませんでしたが,なんとか無事に本設の改札にお客さまをお通しした時や,みどりの窓口が稼動したときには,感慨深いものがありました。
小吹 巨大ターミナル駅を稼動させながらの工事で,地下以外にも中央線と近接する部分や設備関連など駅に影響を及ぼす可能性のある工事が多くあり,宇野さんには工事にあたって改札や線路閉鎖など多くの調整をしていただきました。

写真

宇野 当社としては,駅機能を維持して,お客さまにご迷惑をおかけしないことを一番に考えなくてはなりません。一方で,丸の内駅舎の保存・復原というビッグプロジェクトを計画どおり成し遂げることが,私たち工事区の使命でもありました。このバランスを取ることが非常に難しかったですね。例えば,旅客通路も工事エリアもできるだけ広く取りたい中で,その境界線については,10センチ単位での議論となりました。施工計画の細部まで色々と指摘しましたが,小吹さんの作成する施工計画は,お客さま第一の立場を理解してくれており,信頼できましたよ。
小吹 ありがとうございます。この工事を経験したことで,第三者(お客さま)への配慮の重要性を改めて認識しました。私自身も,本当に勉強になりました。
二人 苦労は多かったですが,国民的な注目を集めるプロジェクトを成し遂げたことは誇りに思います。いつかまた一緒に仕事がしたいですね。

写真:改札を使いながら工事エリアでは地下工事が行われていた

改札を使いながら工事エリアでは地下工事が行われていた

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写真:コンクリート打設前の状況

駅舎側には,仮受けするためにRCの「縦梁」と「つなぎ梁」を構築した。写真はコンクリート打設前の状況。レンガ壁を少しずつ壊しながら「縦梁」を駅舎全周に約1,400m構築した。併せて縦梁から横方向に「つなぎ梁」を構築し,「仮受けする鉄骨支柱」へ建物荷重を移した

写真:地下躯体の新設と免震化のため,約1万本の松杭を撤去。鉄骨の仮受け支柱が建物荷重を受けている

地下躯体の新設と免震化のため,約1万本の松杭を撤去。鉄骨の仮受け支柱が建物荷重を受けている

写真:狭い空間で行われた免震装置の据え付け。免震層にはアイソレータ352台とオイルダンパー158台が設置された

狭い空間で行われた免震装置の据え付け。免震層にはアイソレータ352台とオイルダンパー158台が設置された

写真:2012年6月,丸の内北口の改札設備を仮設から本設に,一晩(約4時間)で一気に切り替えた。総勢100人超が作業にあたった

2012年6月,丸の内北口の改札設備を仮設から本設に,一晩(約4時間)で一気に切り替えた。総勢100人超が作業にあたった

写真:切り替え後の丸の内北口改札

切り替え後の丸の内北口改札

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