日本溶接協会は,溶接技術に関する研究・標準化・教育・認証などをミッションとする社団法人であり,溶接会館はその本拠となる。
計画にあたっては,溶接技術を必要不可欠としながらも,通常では仕上げや耐火被覆に包まれて見えない鋼構造を可視化することで,会館のアイデンティティを表現することが試みられた。
建物正面は,H形鋼材を壁部とする縦連窓ファサードであるが,このH形鋼上部間はハニカムダンパで連結されており,制震装置として機能する。
外壁面に配置されるため,室内空間の利用上支障とならず,フランジ部は,縦庇として日射遮蔽効果も持つ。新しい制震・外壁システムとして,特許出願中であり,今後はリニューアルへの応用も考えられる。
一方,内部では低層部吹抜け廻りや高層部事務室内などに制震装置が配置される。その内部制震間柱の1本には,全国溶接技術競技会優勝者が,見事な裏波(うらなみ)溶接を施した。
これらの制震装置により地震時における主骨組の損傷を抑えている。また,エネルギー法の構造計算により合理的な制震構造を実現している。
制震装置以外にも,ホール天井の鉄骨梁や吹抜けの鋼製吊階段など,随所に見える鋼構造,さらに,溶接を駆使したレリーフ(ゼロ・ヒガシダ氏)などで,溶接の総合センターに相応しい空間を形成した。
(阿部太郎・刀禰勇郎・村松匡太)
溶接会館(東京都千代田区)
「溶接技術の総合センター」として,約3年の設計・施工期間を経て,2012年3月竣工。コンセプトは,設計・施工各部署の総力で実現された。
阿部太郎(あべ・たろう)
建築設計本部
グループリーダー
主な作品:
- ホテル ベレビュー ドレスデン
- 小倉駅ビル
- 新宿EASTビル
刀禰勇郎(とね・いさお)
建築設計本部
マネージャー
主な作品:
- テクノポートカマタ
- 鹿島静岡ビル
- 汐留タワー
村松匡太(むらまつ・まさたか)
建築設計本部
グループリーダー
主な作品:
- 汐留タワー
- 鹿島本社ビル
- 赤坂スターゲートプラザ