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集合住宅建替事業

昭和30年代から本格的な供給がはじまった分譲マンション。
耐震性能不足や老朽化で更新時期を迎えているものは100万戸に上るといわれ,
大規模修繕や建替えなどの対策が重要な課題になっている。
「パークハウス千里中央」を例に,集合住宅の建替えについて説明する。

国策による建替え促進

戦後間もない昭和30年代,郊外に大規模な街を設けるニュータウン構想が各地で進められた。大量の人口が都市に流入して住宅不足に陥ったためである。その先駆けといわれるのが大阪の千里ニュータウン開発。大阪府豊中市と吹田市の1,160haのなだらかな丘陵地に,15万人が居住する計画は,1961年に開始された。旧日本住宅公団が1967年に分譲した新千里北町第三団地住宅(豊中市)もその計画のひとつ。千里ニュータウンの中心部に位置しながらも豊富な緑を残す計画で,ニュータウンの成長を象徴する集合住宅だった。

40有余年を経て,建物の老朽化や設備機能の陳腐化,入居者の高齢化などの問題を抱えるようになった。特にバリアフリーは未整備で,エレベータもなく居住者が安心して住み続けることが難しくなった。管理組合を中心に10棟162戸からなる団地の再生に向けた検討がはじまった。

こうした問題は,全国各地が抱える課題で,その対策としてマンションの建替えは国策としても推し進められている。税制などの優遇措置が取られているほか,2002年には建替えを促進する「マンションの建替えの円滑化等に関する法律(円滑化法)」が制定されている。

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図:マンション建替え手法別事業フロー

“生活空間としての価値”を継承

マンションはそれぞれの住民が専有部を所有するため,建替えには所定の法規に従った住民の合意が前提となる。2011年10月現在で,建替えが完了しているものは全国で167件。実施準備中のものを含めても200件に満たない。「住民一人ひとりの置かれている状況や価値観が異なりますから,建替えの合意形成は非常に難しい」というのは,関西支店営業部開発事業グループの細井久寿グループ長。建替え事業にはいくつかの手法があるが,建替えは基本的に住民が費用を負担して行われる。この負担を軽減するために容積率を高くして住戸数を増やし,余剰住戸を売却して建設費用に換えるのが建替えの考え方の根本になるのだという。

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パークハウス千里中央では,2007年5月の管理組合総会で建替え推進決議が可決。三菱地所・当社グループが事業協力者に選定された。計画では,この土地が育んできた“生活空間としての価値”を次世代に継承することをコンセプトに据え,周辺環境との調和を図ることをめざした。豊かな緑の移植保存や各棟の両端をひな壇状にして建物の圧迫感をなくすなどの工夫が凝らされている。このほかにも免震構造や3戸1エレベータ方式,24時間有人管理,高齢者対応の間取りプランなどを採用して安全性・プライバシー・セキュリティにも配慮した。これらの計画は,民間事業者がコンペで提案して住民がこれを評価・選定するというステップで練り上げられた。「ここは,緑被率が高いことで有名でしたから,それを生かした計画になっています。また,バリアフリーもめざし,住民に優しい計画になったと思います」(細井グループ長)。

写真:説明会

説明会

写真:臨時総会

臨時総会

写真:細井久寿グループ長

細井久寿グループ長

写真:従前の建物

従前の建物

千里ニュータウンの再生をリードする

事業は,途中で大きな壁にぶつかった。サブプライム住宅ローン問題に端を発する世界的経済不況の到来だ。「長い年月がかかる事業ですから,その間に状況が変わることもありえます。不況とマンション市況の低迷に苦しみましたが,我々も住民の方々の居住条件の悪化につながらないよう努力しました」。2008年9月に一括建替え決議が可決成立した。これを受け,翌年10月に解体工事に着手。2012年1月末には再建マンションが引き渡された。「住民の方々の評価はまずまずで,業界での評判もよい。建替え事業としては良い事例になったと思います」と細井グループ長は語る。「住宅は住民一人ひとりの大切な財産。建替えで価値を高めなければなりません。そのためには,地域の風土や歴史を理解したプランニングをして,人々が住み続けたいと思えるものを提案すること。一軒一軒通い,聞いて,説明する。住民の思いや家族構成,要望などを考慮しながら,信頼関係を構築して一緒に進めていく。それ以上のことはありません」。

千里中央エリアでは,続々と再開発が始まっている。この建替えの成功例は,今後の千里ニュータウン全体の再生を考える上でも注目を浴びている。

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写真:パークハウス千里中央

パークハウス千里中央 事業協力者:三菱地所レジデンス,当社関西支店営業部/
設計・監理 意匠・設備:三菱地所設計/構造:当社関西支店建築設計部/
規模:RC造一部S造(免震構造) B2,12F 総延べ 44,633m2/総住戸数363戸

写真:キッチンルーム

キッチンルーム

写真:サブエントランスのシンボルツリー

サブエントランスのシンボルツリー。豊かな自然を受け継ぐように,多くの樹木が移植されている

写真:リビングルーム

リビングルーム

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