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KAJIMAダイジェスト

マンション施工最前線

開発者が企画・立案して,設計者が建築物の構想を練る。それを,具現化するのが施工者だ。
施工技術を駆使し,安全に留意しつつ,品質を高めながら工期内に納める。
そこには,知恵と工夫,手間を惜しまないものづくりへの思いがある。
様々な試みに挑戦する最新のマンション建設現場を紹介する。

超高層RC造のPCa化

東京湾岸エリアで建設が進められている「晴海二丁目マンションC1街区新築工事」では,高さ170mを誇る超高層マンション「ザ・パークハウス晴海タワーズ クロノレジデンス」を建設している。このマンションは,免震超高層マンションとしては都内初となる長期優良住宅の認定を受けており,防災備蓄倉庫を備えるなどLCPの観点からも評価が高い。三菱地所レジデンスと当社開発事業本部の共同事業で,設計・監理を三菱地所設計が担当している。構造には,免震コアウォール構造を採用。国内最大級となる1.6m角の角型免震装置を設置し,これを支える杭は拡底部で径4.4mにも及ぶ。これも国内最大規模である。

4月末現在,躯体工事が行われており,49階のうち17階まで施工が進む。「現在,1フロアあたり6日で施工を進めていますが,5日まで持っていく予定です。しかしコアウォールや外装など複雑な構造が多く,施工が難しい」と説明するのは,工事全般を指揮する加藤昌二副所長。構造の中心部を天に貫くように箱形に設けられた免震コアウォールは,コア壁部分に柱と梁を内蔵するため,特殊な施工が必要になる。現場では,施工合理化のため工場でコンクリート部材を製作するPCa(プレキャストコンクリート)化を採用しているが,コア壁の柱部材は梁の鉄筋が大きく飛び出るために公道を運搬できない。こうしたいくつかの部材で,都内では珍しいPCaの現場製作を行っている。

写真:加藤昌二副所長

加藤昌二副所長

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写真:17階まで進んだ躯体工事

17階まで進んだ躯体工事。1年半後には完成する予定

【工事概要】

晴海二丁目マンション
C1街区新築工事

場所:
東京都中央区
発注者:
三菱地所レジデンス,当社開発事業本部
設計・監理:
三菱地所設計
外装・外構デザイン:
リチャード・マイヤー
規模:
RC造(基礎免震構造) B2,49F,PH1F,
883戸(分譲) 延べ99,595m2
工期:
2010年6月~2014年3月

(東京建築支店施工)

図:「免震コアウォール」構造図

「免震コアウォール」構造図
中心部のコアウォールが耐震性を高めるが,
施工は難しい

コアウォールと外部バルコニー

コア壁は,地上部で80cmの厚さがあるが,階を経るにつれて薄くなり,最終的には20cmほどになる。免震装置への負担低減のため躯体の自重を軽くするのだ。厚さが変わると部材の種類が増えてPCaでは対応できず,この部分は現場でコンクリートを打設する。

コア壁の施工に採用したのが,自動昇降式足場付型枠。オーストリアのdoka社が製作する型枠で,土木現場である新東名高速道路佐奈川橋工事(愛知県豊川市)で使用していたものだ。「建築管理本部からの情報をもとに現地でレクチャーを受けました。他にも様々な現場に赴き,現場独自の工夫をみせてもらっています。作業の安全性と施工効率,コストなどを勘案しながら半年かけて計画を練り,いいものは全て取り入れました」と加藤副所長。土壌汚染対策工事には土木社員も所員に加わり,本杭施工時には,その土質のノウハウを提供してもらったという。

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外装のコンセプトデザインは,世界的な建築家であるリチャード・マイヤー氏が手がけている。外部バルコニーがランダムに配置された複雑な外装は,ファサードに躍動感を与えるが,これを実現するためには,スラブを支える支保工が20階程度必要になる。非常に難しく,危険な作業だ。対応策として考案されたのが,国内初となるバルコニースラブと外周梁を一体にしたPCaだった。初の試みであり,現場で現物仮組試験をし,精度確保や施工性の検証を充分に行った。その結果,支保工をなくすことで安全作業が可能になっている。

写真:新東名高速道路佐奈川橋工事

新東名高速道路佐奈川橋工事。ここから自動昇降式足場付型枠を導入した

写真:自動昇降式足場付型枠でコアウォールを施工

自動昇降式足場付型枠でコアウォールを施工


写真:コアウォールの柱PCa

コアウォールの柱PCa。差筋が長いため公道を運搬できない

写真:バルコニーの施工には現物仮組試験を繰り返して臨んでいる

バルコニーの施工には現物仮組試験を繰り返して臨んでいる

写真:構造が複雑なバルコニー部

構造が複雑なバルコニー部

手間を惜しまず良いものを

様々な試みを行いながら工事を進める現場だが,全てが順風満帆というわけではなかった。昨夏の計画停電の影響である。免震工事に使用する免震ゴムの製作工場が,計画停電地域の対象となったのだ。免震ゴムには,27時間熱と圧力を加え続けなければならず,途中で停電になれば要求品質を満たすものはできない。「停電になるかどうかは前日の夜ギリギリに発表されましたから,製作ゴーサインが出せずに工程がずれこみました。すぐに新しい工程表を作成してなんとか無事に進捗しています」。

現在,モデルルームがオープンして,住戸の販売も開始している。6月からは内装工事も始まって工事は最盛期を迎えることになる。内装には,エンドユーザーの生活空間となるため,高い品質が求められる。96タイプの住戸に,それぞれ4つのカラーセレクトと3つのメニュープランが無償でセレクトできる。その組合わせは,同規模のものと比較して倍近くになり,その分施工は難しい。「最終的には,ここに住む人が満足してくれることが一番です。関係者全員が思っていることですが,良いものを創るための手間は惜しみません」。

工期は2014年3月末までだが,内覧会を行うため2013年11月末には完成させる必要がある。残すところ1年半,工事は続く。

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写真:梁・スラブ一体型PCaの設置状況

梁・スラブ一体型PCaの設置状況

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