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特別座談会:建設RXコンソーシアムが描く建設業の未来

本コンソーシアムの会長・副会長の3人に,設立の経緯や目的,その理念,
また本コンソーシアムが現在取り組んでいることや今後の展開などについてお話しいただいた。(敬称略)

メンバー:

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鹿島建設
専務執行役員建築管理本部副本部長

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竹中工務店
取締役執行役員副社長

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清水建設
生産技術本部
ロボット・ICT開発センター長

コンソーシアム参加の
意図について

伊藤

2020年に当社と竹中工務店さんとの技術連携を発表した翌日にさっそく清水建設さんからも技術連携参加の意向のご連絡をいただきました。その後各社からも続々と趣旨にご賛同いただき,2021年9月にコンソーシアム設立となったわけですが,みなさんそこにはどういうお考えがあったのでしょうか。

印藤

まず,ロボット開発には多大な費用がかかり,すべて自社で行うには大変な負担が伴います。また,ユーザー数が限られてしまうため,製品コストがなかなか下がりません。協調できる領域では各社協働で開発することでスケールメリットを得ることができればと考えました。

中嶋

当社も同じ考えです。独自開発では相応の開発コストと担当する社員のマンパワーが必要になり,多くの開発を一気に進めることはやはり困難です。また,個社での開発や利用では,実際にその技術を使って作業を行う協力会社に負担を強いるため,普及させることが難しいという問題もあります。

印藤

たしかに,ゼネコン各社がそれぞれの仕様のままでは,協力会社がロボットを使いこなそうとする気持ちになりにくいですね。協力会社も現状を変えなければいけないという危機意識を持っていますが,変えたくてもどうにもならないというジレンマを抱えていると思います。

伊藤

ロボットメーカーにとっても,一社での利用に限定したロボットでは生産台数が見込めないので開発のインセンティブが小さいですね。また,現場側の受入れ体制の確保や教育,運用体制の整備などの負担も大きくなります。会員みなさんの力を結集してそれらの問題を解消していきたいですね。

図版:3社による技術連携合意時の連携イメージ(2020年10月)

3社による技術連携合意時の連携イメージ
(2020年10月)

分科会による具体的な取組み

中嶋

当社が主査を務める「資材の自動搬送システム分科会」では,現場内での資機材搬送を自動化するロボットの開発を進めています。「墨出しロボット分科会」で検討中のロボットなども加えて,ロボットが夜間に無人で作業を行うことで,朝から作業員がスムースに作業を開始できるよう,作業員の負担軽減や作業の効率化を進めていってほしいと考えています。

印藤

自動搬送などに関しては,なるべく早い段階で,どの会社が開発したロボットでも各社が保有するプラットフォーム下で稼働できるようなゲートウェイの構築が必要ですね。

伊藤

自動搬送,コンクリート床仕上げ,墨出し,照度測定などの各種ロボットやタワークレーン遠隔操作システムなどは,参加ゼネコン各社の現場に早く普及させることで,導入コストを下げ,使いやすいものにしていきたいですね。また,アシストスーツやドローン,バイタルセンサなどを早期に現場適用するため,技術的に先行する市販ツールについて参加ゼネコンの共通ニーズをとりまとめ,建設現場用にカスタマイズして導入する活動を進めています。コンソーシアムの強みを活かしてユーザー数を確保することで,ゼネコン・メーカー双方にとってメリットが得られる枠組みを構築したいと考えています。

印藤

そうですね。「市販ツール活用分科会」では,すぐにでも現場で活用したい技術が対象となっていますので,当社としてもできるだけ早期の実用化を望んでいます。成功事例をどんどんつくって,業界全体に広く普及させていくことが重要ですね。

改ページ
図版:資材の水平搬送ロボット ROBO-CARRIER ロボ・キャリアー

資材の水平搬送ロボット ROBO-CARRIER 
ロボ・キャリアー

図版:タワークレーン遠隔操縦システム TawaRemo®

タワークレーン遠隔操縦システム TawaRemo®

図版:床コンクリート仕上げロボット Newコテキング®

床コンクリート仕上げロボット Newコテキング®

これからのコンソーシアムのかたち

伊藤

ロボティクス・トランスフォーメーションの実現において重要な役割を担うBIMは,建設業界のDXにおいて欠かせない重要なデータベースととらえています。企画・設計から施工,運用管理までの一貫性の確保と,業界で共通したフォーマットを使うことで生産性向上につながっていくと考えていますが,みなさんは技術連携でどのようなことを期待されていますか。

中嶋

ハード技術のみならずソフト技術も含めて,業界標準としての建設デジタルプラットフォームができあがるといいですね。このプラットフォームに多くの関連する情報やサービス・商品を乗せることで,1社だけで実現できる量をはるかに超えたサービスや機能の提供が可能になると思います。

印藤

今後も異業種を含めた多くの企業に本コンソーシアムに参加していただき,検討を深めていくことで,さらにサービスや機能が充実して市場も大きくなっていくと思います。そうすることでロボットやITツールの導入コストがより一層抑えられ,また協力会社の職人さんにとっても,どこの現場でも使い慣れたロボットを使用でき,改善点などフィードバックしていくことで,さらに使い勝手がよくなっていく,良い循環が生まれるのではないでしょうか。

中嶋

あわせて,これら先端技術を活用することで高い品質が確保され,作業所の安全性が飛躍的に向上することを期待したいと思います。建設業は高度な技術を必要とするプロの世界です。ロボットやITツールの活用により,人はさらに高度な作業に従事することができ,技能工不足の解消にもつながります。また高いスキルを必要とする専門職として魅力が高まることで,若年層や女性からも選ばれやすい職種になっていってほしいです。

伊藤

みなさんのおっしゃるとおりですね。協調領域にかかわるロボットやITツールはなるべく早期に業界全体に普及させるべきで,その活動の基盤となるコンソーシアムの会員企業が増えることが望まれます。そのためにはわれわれの活動内容を広く業界の内外に伝えていくことが大切だと思います。

印藤

各技術についてユーザーとなる協力会社への定期的な技術紹介に加え,無料の試行キャンペーンなどができるといいですね。

中嶋

そうですね。各社の技術を互いに把握するための展示会や見学会なども有効だと思います。今年12月には「建設DX東京展」への共同出展も計画していますので,こうした広報活動がコンソーシアムのさらなる発展につながることを期待しています。

図版:外装取付アシストマシン マイティフェザー®

外装取付アシストマシン マイティフェザー®

図版:自走式墨出しロボット

自走式墨出しロボット

改ページ
図版:自動溶接ロボット ROBO-WELDER ロボ・ウェルダー

自動溶接ロボット ROBO-WELDER ロボ・ウェルダー

建築業の将来を担う
若い人たちへのメッセージ

伊藤

われわれ建設業界の喫緊の課題として就業者不足があります。若い人材が入ってこないと業界の未来はありません。そのためにはもっと魅力的な業界にしていく必要があります。そこには生産性向上による働き方改革の実現や安全性の向上が不可欠であり,ロボット化やIT化はその重要なファクターとなりますが,まさに本コンソーシアムはそれを担っているわけです。若い人たちへ建設業の魅力をもっとアピールしていく必要があると思いますので,最後に,将来の担い手に向けてメッセージをお願いします。

印藤

自分のマネジメント力によって社会や人々の役に立つ大きなスケールの建築物をつくることができます。設計者や監理者,さまざまな職種の職人など多くのプロフェッショナルが「建築物を完成させる」という同じ目標に向かって技術力を発揮して完成へとつなげていきます。このように,壮大なスケールとダイナミズムが建設業の魅力です。この魅力はそのままに,これからロボットやITツールがさらに普及していけば,デジタルで“もの”をつくっていく技術も重要となってきます。若い世代の方々には,デジタルスキルを身につけて,自分の力を最大限に出していってほしいと思います。

中嶋

建設業の魅力は,ランドマークや都市を代表する建物の建設に携わることでひとつの文化の形成に貢献し,後世に自分の仕事が残る,レガシーを築くことができるということです。これはものづくりの醍醐味であり,人生に喜びを与え,人生を豊かにしてくれます。この楽しさをぜひ,若い方にも知っていただきたいと思います。

伊藤

建設業は人々が快適で暮らしやすい社会インフラをつくる使命を担っています。創意工夫次第でつくり方も進化させることができます。人が蓄積してきたノウハウとロボットやITツールを適材適所で組み合わせ,魅力ある仕事に変えていくことが可能です。本コンソーシアムの活動を通じて,未来の魅力ある建設業の実現に貢献できれば幸いです。

本日はありがとうございました。

建設RXコンソーシアム第2回総会前に開催
(2022年4月20日)

改ページ

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