分科会の具体的な取組み
現在活動中の分科会は9つある。そのなかから2つの取組み事例を紹介する。
①資材の自動搬送システム分科会
資材搬送は建設作業員にとって付帯作業だ。これを自動化することで,建設作業員はより高いスキルが必要なコア作業に携わる時間を増やすことができる。
本分科会では,内装材や設備機器などを搬送するロボットの開発やそのロボットを使うために必要となるシステムの開発に取り組んでいる。
ロボットは搬入トラックから荷下ろしされた資材を1階の仮設エレベーターまで水平運搬し,作業フロアまで垂直運搬。さらに作業フロアでは別のロボットがエレベーターから資材を荷下ろしして作業場所まで搬送するというイメージだ。
②タワークレーン遠隔操作分科会
タワークレーンのオペレーターは,最大約50mの運転室まで梯子を使い昇降する。また,作業開始から終日高所の運転室に拘束されるため,オペレーターへの身体的負担の軽減や作業環境の改善が求められていた。
本分科会では,タワークレーンに複数台のカメラを設置,その映像を見ることで地上の専用コックピットからの遠隔操作を実現する既開発の「TawaRemo®(タワリモ)」について,実現場適用の推進とさらなる機能向上に取り組んでいる。
実適用が進むTawaRemo
横浜市鶴見区で建設中の当社研修施設「(仮称)鶴見研修センター新築工事」では,TawaRemoが活躍中だ。専用コックピット前に並んだモニターと通話機能により,運転席にいるのとほぼ同じ感覚でタワークレーンを操作できる。コックピットはジャイロセンサーによって実際の運転席の振動や揺れを再現する機能(オン/オフ可)があり,臨場感のあるリアルな操縦が可能となっている。
中山卓哉所長は「オペレーターに聞くと,タワークレーンの操作性はまったく変わらないとのことです。安全はいかに危険な状況を減らすかが重要となりますが,運転室への昇降回数を減らすことは高所作業を減らすことにつながりますし,大地震や火災時などの万が一の避難を必要とする場面でも遠隔操縦は大変有効です。TawaRemoの利用により,運転室での食事や休憩,簡易トイレの持込みなど,これまで課題となっていた作業環境の改善を一気に解決できます。また,有資格者であれば誰でも操作可能であり,将来の担い手確保に大変有効だと思います」と話す。
当現場では現場内にコックピットを設置したが,低遅延を実現した通信システムにより離れた場所からでも操作が可能だ。実証実験段階では,大阪に設置された専用コックピットで,名古屋の現場にあるタワークレーンを遠隔操作する実験も行われた。将来的には,専用コックピットを複数台配置したコントロールセンターを設置することにより,オペレーターが現場へ行く必要がなく,また交替で運転を行えるなど,さまざまな業務改革が考えられる。
「実際の運転席にオペレーターがいないことで,マンションに近い当現場では住民との見合いもなくなり,近隣対策上も効果を発揮しています」(中山所長)。
現在,いろいろなメーカーのタワークレーンにも実装できるよう開発が進行している。
これからのコンソーシアムの展開
コンソーシアムでは,活動の成果を積極的に発信し,技術連携の輪をより拡充して,建設業界全体,さらには技術開発や展開を担う異業種を含めたさまざまな企業に参加を呼び掛けている。
今年3月8日には,本コンソーシアム主催による会員向けオンラインイベントが開催された。午前の第1部ではDX/AI技術の最先端についての基調講演やベンチャー企業7社によるショートプレゼンテーションが行われ,午後からの第2部では本コンソーシアム協力会員15社による技術説明会が行われた。8月には第2弾として会員企業向けの展示会をリアル開催する予定だ。
また,12月には本コンソーシアムの活動を広く社会に伝えるべく,「建設DX東京展」への共同出展も計画されている。
これらの活動を通じて,建設業界全体の生産性・安全性と魅力を向上させ,建設就労者の働き方改革や処遇の改善を図り,ひいては若い人の就労の促進が期待される。
さまざまな分野から協力会員として参加していただいている企業に,
本コンソーシアムへ向けた期待や要望などのメッセージをご寄稿いただいた。
オープンで安心・安全な
建設ロボティクスの実現に向けて
NTTコミュニケーションズ
イノベーションセンター/
スマートファクトリー推進室/
スマートシティ推進室
エバンジェリスト
境野 哲(さかいの あきら)
建設業界の
デジタル化支援に向けて
ソフトバンク
代表取締役
副社長執行役員 兼 COO
今井 康之(いまい やすゆき)
RXコンソーシアムと創る
持続可能な社会
富士通
Manufacturing事業本部
エンジニアリング事業部
事業部長
高橋 良徳(たかはし よしのり)