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発掘!旬の社員

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デジタルデザインの旗手として
これからの設計環境をリードする

まだ解法のない課題にも臆せず挑戦していきたい
集合写真

photo: 大村拓也

栗原玄太(左)

くりはら・げんた/宮城県出身/
都市研究学専攻サステナブル環境構成学分野修了

建築設計本部 デジタルデザイン統括グループ チーフ(兼)設備設計統括グループ チーフ

2011年入社。建築設計本部設備設計統括グループに配属となり,医療施設,宿泊施設の設計・改修案件に従事。2016年,関西支店建築設計部設備設計グループに異動。以後BIM推進メンバーとしてBIMを用いた計画,設計に携わる。2021年よりデジタルデザイン統括グループに配属。BIMソフト教育や運用ルールづくりを行っている。趣味は週末の娘とのお出かけ。

石津翔太(右)

いしづ・ しょうた/神奈川県出身/
創造理工学研究科建築学専攻修了

建築設計本部 デジタルデザイン統括グループ(取材当時)
(現在:東北支店建築設計部建築設計グループ)

2016年入社。建築設計本部建築設計統括グループに配属され,コンペへの参加から設計,工事監理などを担当。また,さまざまな案件の特定の部位の設計に参画するなど,業務内容は多岐にわたる。2021年,デジタルデザイン統括グループと兼務になって以降はBIMやコンピュテーショナルデザインツールを用いた設計の高度化推進に携わる。趣味は中国史とワイン。

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新たな設計に向けて

2021年4月,建築設計本部内に新設されたデジタルデザイン統括グループは,BIMやプログラミングソフトを用いた設計業務のデジタル化に向け,既存プロジェクトのサポートと基盤整備を行っている。

デジタルデザイン統括グループ設計BIMグループの栗原玄太さんは社内の多くのプロジェクトにBIMマネージャーとして参画。業務内容はBIMモデルの扱い方から作図ルールの設定,施工業者との連携方法の検討に至るまで案件によってさまざまだ。新たにBIMを導入する現場では関係者の理解度にばらつきがあるため,作業の流れそのものから一緒に考えていく必要があるという。

「当グループは立ち上がったばかり。案件ごとに明確な解法というものはありません。常に今必要とされるものを考えながら動いています」と話す栗原さん。同時に,社内でのBIM教育にも力を注ぐ。「当社では2022年2月より設備設計で『Revit®*1 を使用することが決定し,現在はその普及に向け,全員でステップアップできるような体系づくりを進めています」。

*1 Revit:Autodesk社(米国)が開発したBIMソフト。
建築,設備,施工の分野を一元化し,他のアプリケーションと連動して作業の大幅な効率化が期待できる

同グループのもうひとつの柱であるコンピュテーショナルデザインの領域で活躍する石津翔太さん。環境シミュレーションや膨大な設計条件の整理・出力などデジタルツールを駆使した設計の高度化と効率化を目指す。

「学生時代はむしろ手描きの図面や模型表現など,アナログ志向の強い環境でした」と話す石津さん。大学院時代の講義でデジタルツールの魅力と可能性に触れ,それらを用いた設計に関心を持ったという。入社後も,設計高度化ワーキングへの参画や学生時代の講師を招いて勉強会を催すなど精力的に活動してきた。

プライベート写真

石津さんは高校の同級生で偶然会社が一緒になった高橋亮太さん(建築管理本部建築設備部技術グループ)と一緒に,自然豊かな鎌倉の地に友人の別荘の建替えを計画中。週末は友人家族と打ち合わせをして,要望を聞きながらプランニングを検討している。

転機となった仕事

「関西支店時代にオービック御堂筋ビル(大阪市中央区)の設計に携わったことで,その後の設計活動が大きく変わりました」とふり返る栗原さん。所長をはじめ,BIM推進に意欲的なメンバーがそろった現場では「BIM戦略会議」と称して設計・施工が一緒になって議論を重ねた。課題の早期発見やモジュール化によって作業効率が大幅に向上し,鹿島スマート生産ビジョンの先駆けとしてすべてのフェーズでBIMによるデジタルツインを実現した。栗原さん自身も初めての試みに手探りではあったが,設計から施工への密度の高いコミュニケーションに手応えを感じたという。

栗原さんはオービック御堂筋ビル以降,他の案件でも自力でBIMモデリングを行うなど試行錯誤を繰り返してきた。「ルールを整理しつつ,それを制約と感じさせないような自由な環境を目指したい」と語る。

石津さんの転機となった仕事は担当したHANEDA INNOVATION CITY(東京都大田区)の外装・共用部のデザイン。課題となった床面デザインでは田んぼの畦道から着想し,デジタルツールを用いたタイルの色分けの粗密によってさまざまな場の質が浮かび上がるというコンセプトを具現化した。

タイルの枚数は4万枚にも及ぶ。敷地内のさまざまな与条件をプログラムに組み込み,自動生成されるパターンを提案した。1枚ずつ手で塗り分けていたら膨大な時間がかかるところ,『Grasshopper』*2 を用いることでコンセプトを維持しつつ多数のパターンが検討可能となった。

*2 Grasshopper:3Dモデリングソフト「Rhinoceros」上で動作するビジュアルプログラミング言語。
膨大なパラメータを用いたシミュレーションやアルゴリズミック・デザインの検討に長けている

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また,デジタルデザインと向き合うことで改めて“身体”の重要性を感じるようになったという石津さんは「プログラムに則って生成されたデザインでも,どうしても手を加えたい部分も出てきます」と話す。プログラム上で完結させたい美学がある一方で,人間の感覚や手の操作を許容することにも面白みを感じるという。

建物に実際に触れるのは生身の人。身体スケールへの感性は設計者としてこれからも大切にしていきたいと語ってくれた。

プライベート写真

週末はもうすぐ3歳になる娘と一緒に出かける栗原さん。毎週新しいことを一緒に発見しながら子育てを楽しんでいる。写真は近所で出会った練馬区ご当地キャラ「ねり丸」くん。「娘が新しい言葉を覚え成長がうれしい反面,幼児語が減っていくのが少し寂しい日々」だという。

まずは“やってみよ”

この一年は,デジタルデザインを設計に活かすための土台づくりに走ってきたという二人。「デジタルデザイン」という言葉から受ける印象とは異なり,仕事のなかでは対話の大切さや協働する方への配慮など実感の伴うコミュニケーションを重視している。今後はBIM,コンピュテーショナルデザインとあらゆる分野を相互につなぐ活動を増やしていきたいと意欲的だ。

グループの特性上,前例のない難題に直面することも少なくないという栗原さん。「会議内でも度々上がる『絶えず改良を試みよ,できないと言わずにやってみよ』という鹿島守之助元会長の言葉を胸に,ひたすら頑張っていきたい」と語る姿は頼もしい。

当社のデジタル設計環境のこれからをリードすべく,二人の挑戦は続いていく。

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