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建設業の生産性と魅力の向上を目指す

総会の様子(2022年4月20日)

総会の様子(2022年4月20日)

建設業界の課題解決に向けて

2022年4月20日,建設RXコンソーシアムの2022年度通常総会(第2回)が行われた。本コンソーシアムは,昨年9月の設立時の参加企業16社から,約半年が経過した4月の総会開催時点で73社,5月現在では81社(正会員24社,協力会員57社)と会員数を増やし,現在も増え続けている状況だ。

伊藤会長は総会開催の挨拶のなかで,「本コンソーシアムは,建設業界の喫緊の課題といえる労働力不足の解消,建設現場での生産性や安全性の向上について,建設業界だけでなく異業種の法人にも参加・協力を求め,施工ロボットやIoTアプリの開発と利用に係る『RX(ロボティクス・トランスフォーメーション)』を推進することで解決を図るべく発足した」と,設立の主旨をあらためて述べた。

図版:伊藤会長による総会開催の挨拶

伊藤会長による総会開催の挨拶

建設業界は,高齢化に伴う建設業就業者・建設技能者の減少に加え,いわゆる3K(きつい・汚い・危険)職種と敬遠されがちな傾向があり,新規就業者の確保が厳しい状況だ。日本建設業連合会(以下,日建連)では,2025年度の建設技能者数は216万人まで減少すると試算。また,働き方改革の一環として改正された労働基準法により,建設業では実施が猶予されていた時間外労働の上限規制(原則:月45時間,年360時間)も2024年4月から適用される。建設工事の需要が今後も継続的に見込まれるなか,労働力不足は働き方改革を推進するうえでの足かせとなるばかりか,建物の品質を確保するうえでも重大な問題になる可能性がある。

※わが国の生産年齢人口の減少や高齢者の離職を見込んだ場合の数値
出典:「再生と進化に向けて―建設業の長期ビジョン」,(一社)日本建設業連合会,2015年

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そのため各建設会社では,建設業の生産性や魅力の向上を図る施策を打ち出している。例えば,資材運搬などのいわゆる付帯作業や人にとって厳しい環境下で作業する施工ロボットの開発だ。しかし,開発には過大な費用が伴い,個社が使うだけの台数では量産化による開発コストの回収は難しい。結果,ロボット自体の価格が高額になり,現場への普及が妨げられる要因となる。

グラフ

建設技能者とは,建設工事の直接的な作業を行う技能を有する者のことで,「労働力調査」(総務省統計局)においては「建設業の生産工程従事者,建設・採掘従事者,輸送・機械運転従事者」のことをいう

※出典
建設業就業者数:「労働力調査」「第10~13回改定日本標準産業分類別就業者数」(総務省統計局)
建設技能者数:「労働力調査」(総務省統計局)をもとに国土交通省が算出
建設投資額:「令和3年度(2021年度)建設投資見通し」(国土交通省)

コンソーシアムの概要と仕組み

2020年1月に当社と竹中工務店で技術連携を発表(2019年12月基本合意書締結),さらに2020年10月清水建設が加わって始まった3社技術連携は,その後複数社から参加の打診を受け,この取組みを業界全体に発展させる仕組みとして,2021年9月本コンソーシアムが設立された。

図版:コンソーシアム設立総会(第1回)の会員16社集合写真(2020年9月22日)

コンソーシアム設立総会(第1回)の会員16社集合写真(2020年9月22日)

本コンソーシアムは,正会員として日建連加盟の研究開発機関を有する一定規模以上のゼネコン,協力会員として各技術を実際に活用する協力会社やサブコン(専門工事会社など),ロボットメーカー,ITベンダー,レンタル会社などから構成される。

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テーマごとに共同研究開発の分科会を設置することがコンソーシアムの第一の役割だ。分科会に参加を希望する会員が,相互に共同研究開発契約を結んで開発を進めていく仕組みになっている。分科会では,費用を負担して開発を行うメンバーだけでなく,現場試行の結果をフィードバックすることで開発費用を負担せずに貢献するメンバーの参加も認められる。開発されたロボットやアプリはすべての会員企業が有料で使えるものとし,開発費を負担した企業については利用料を低く抑える。具体的な活動は分科会に参加する会員に委ねられている。

コンソーシアムでは,これからの建設業界はライバル会社として競合関係にありつつも,競争領域ではない協調領域の分野においては,それぞれの技術や知恵を結集して業界全体の魅力を高めていく必要があると考え,活動を推進している。

組織図
  • 総会:
    本コンソーシアム最上位の会議体。
    正会員により構成され,役員の選任など重要案件を決議する。
  • 幹事会:
    幹事(鹿島・竹中・清水)により構成。分科会の設置の決定など,各種審議を行う。
  • 運営委員会:
    すべての会員の運営委員・連絡担当者が参加。技術面を含めた実務的な審議・検討を行う。
  • 分科会:
    共同開発・技術利用のためテーマごとに設置。希望して参加が認められた会員等がそれぞれの分科会に参加し,個別に共同研究契約を結んで実施される。

会員一覧(2022年5月現在)

正会員(24社,順不同):
鹿島建設/竹中工務店/清水建設/淺沼組/安藤・間/奥村組/熊谷組/鴻池組/錢高組/鉄建建設/東急建設/
西松建設/長谷工コーポレーション/フジタ/前田建設工業/戸田建設/矢作建設工業/飛島建設/五洋建設/
東洋建設/佐藤工業/青木あすなろ建設/三井住友建設/東亜建設工業

協力会員(57社,順不同):
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ/建ロボテック/ソフトバンク/エヌ・ティ・ティ・コムウェア/
NTTドコモ/ジー・オー・ピー/日立造船/TSUCHIYA/リバスタ/YSLソリューション/損害保険ジャパン/
東京海上日動火災保険/ベトンテック/カナモト/日鉄溶接工業/ブレインズテクノロジー/L is B/
ジャパンギャランティサービス/スパイダープラス/富士通/セーフィー/三菱商事/きんでん/
ワークスモバイルジャパン/アラヤ/日本電設工業/アート/アクトエンジニアリング/センシンロボティクス/
SORABITO/エイジェック/建設・測量生産性向上展事務局/アクティオ/エアロセンス/西尾レントオール/
アジアクエスト/たけびし/ムロコーポレーション/日揮グローバル/スマートロボティクス/積水化学工業/
レンタルのニッケン/KMユナイテッド/NYKシステムズ/関電工/九電工/東光電気工事/トーエネック/
東レ建設/工機ホールディングス/中電工/旭ウエルデックス/オートデスク/グローバルBIM/OneTeam/
ユアテック/北陸電気工事

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総会技術連携のメリット:

  • 類似の技術開発を同業他社で重複して行っている無駄をなくす
  • 協力会社はどのゼネコンの建設現場でも同じ施工ロボットやITツールを利用できる
  • 施工ロボットやITツールの普及と価格低下を促進する

コンソーシアムの役割:

  • 新技術の共同開発(分科会)
    施工段階で必要となるロボット技術やIoT関連アプリケーションの新規開発,ならびに改良・実用化
  • 既開発技術の共同利用
    既に開発が終わっている技術の実用化に向けた試行段階としての共同利用
  • 情報提供・発信
    実用化が完了し,本会外部での利活用が可能となっている技術に関する情報発信,活用促進

競争領域と協調領域:

  • 競争領域:個社独自に開発し,他社との差別化を目指す技術
  • 協調領域:業界共通で汎用化・低価格化を目指す技術

現在開催中の分科会(2022年4月現在)

  • 1.資材の自動搬送システム分科会
    建築現場内における資機材搬送の自動化を図る。自動搬送台車をはじめ,さまざまな搬送装置やロボットにも対応できる柔軟なシステムを開発する。
  • 2.タワークレーン遠隔操作分科会
    既開発のタワークレーン遠隔操作システム「TawaRemo」のさらなる機能向上を図るとともに,会員企業への展開を進める。
  • 3.作業所廃棄物のAI分別処理分科会
    次の3つをパッケージ化して現場適用と機能向上を図る。
    • ①アプリによる廃棄物AI分別
    • ②圧縮機による産廃容量削減
    • ③満量センサによる産廃容量の見える化
  • 4.コンクリート系ロボット分科会
    各社で既開発のコンクリート系ロボットについて,比較評価と会員企業への適用拡大を進め,改善・改良を図る。
  • 5.墨出しロボット分科会
    各社で既開発のロボットについて調査し,性能比較などの評価を進める。
  • 6.照度測定ロボット分科会
    照度測定から照度調整までを自動的にワンストップで実施できる既開発のロボットについて,現場適用の拡大と改良を進める。
  • 7.生産BIM分科会
    設計BIMを受けた施工BIM,維持管理BIMへのデータフローの整理と,施工者から専門工事会社へのデータ連携について検討する。BIMデータ活用ロジスティクス共通コード等について議論し,業界提言を行う。
  • 8.相互利用可能なロボット分科会
    各社が既開発の各種ロボットについて会員企業に展開するとともに,使用時のフィードバックを受け,機能改善を図る。
  • 9.市販ツール活用分科会
    市販技術をリスト化し,製品仕様,特徴,評価等の情報を一元化して共有する。結果をメーカーやベンダーに提示し,より効果の高い製品への改良を促す。

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