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Category3:専門医療 QOLを高めるがん治療施設

これからの医療は患者さんのQOL(Quality Of Life)を大切にした医療へのシフトが一段と進む。
延命治療のみに偏ることなく,患者さんの人間性や主体性を重視した,患者さんの人生を高める医療だ。
がん医療では,がんの種類や進行に応じた検査・治療施設の拡充とともに,闘病生活に配慮したアメニティも充実している。
QOL の視点から,がん医療の新しいかたちを紹介する。

「メディカルモリノビル」聖マリアンナ医科大学附属研究所 ブレスト&イメージング 先端医療センター附属クリニック

写真:南東側全景

南東側全景

「メディカルモリノビル」
聖マリアンナ医科大学附属研究所
ブレスト&イメージング
先端医療センター附属クリニック

場所:
川崎市麻生区
発注者:
中島豪一,
学校法人聖マリアンナ
医科大学
設計・監理
当社建築設計本部
規模:
RC造 5F 延べ6,317m2

2008年12月竣工(横浜支店施工)

女性医療のQOLを高める新しい施設

川崎市麻生区の小田急線新百合ヶ丘駅近くに建設された複合医療ビル「メディカルモリノビル」は,「地域の医療に“世界スタンダード”の最先端医療サービスを」をコンセプトにしている。メインの施設は,乳腺疾患に特化した診療と高度画像診断施設を整備した聖マリアンナ医科大学の「ブレスト&イメージング先端医療センター附属クリニック」で,乳がんの予防・治療からケアまで,総合的な診療サービスを提供する。日本初の本格的な独立型ブレスト&イメージングセンターである。

5階建てのビルには,3・4階を占める同センターのほかに,NPO法人やヘアウィッグ・アロマテラピーショップなど,がん患者をケアする施設をはじめ,9つの各種クリニックや薬局,コンビニエンスストアなど,女性の生活を総合的にサポートするテナントが入る。

複合医療ビルの設計に当たっては,女性患者のプライバシーに配慮した動線計画を導入。メインエントランスとは別に,ブレストセンター用のサブエントランスとエレベータを設置して,一般利用者との動線を分離した。イメージングセンター(検査・診断)は,ほかの患者さんも利用するため,フロア内も別動線となっている。

構造・設備では,ブレストセンターと一般テナント階の間に設備階を設け,設備のメンテナンスと将来の医療系テナントの更新に容易に対応できる構造とした。

建築も,女性のQOLを高める新しい医療のかたちを創造する,ひとつのツールになっている。

図:断面図

写真:マンモグラフィ室

マンモグラフィ室

写真:化学療法室

化学療法室

写真:ブレストセンター受付・ラウンジ

ブレストセンター受付・ラウンジ

群馬大学 重粒子線医学センター

写真:群馬大学 重粒子線医学センター

群馬大学 重粒子線医学センター

群馬大学 重粒子線医学センター

場所:
群馬県前橋市
発注者:
国立大学法人群馬大学
設計
株式会社日建設計
規模:
RC造 B1,2F
延べ6,317m2

2008年10月竣工(関東支店施工)

切らずに治すがん治療

わが国の放射線腫瘍学・核医学領域で先駆的役割を果す群馬大学が,群馬県と共同で,同大学医学部内に整備した重粒子線照射施設。放射線医学総合研究所が開発した小型重粒子線治療装置の導入全国第1号で,技術実証のモデルケースとして期待される。2010年3月から治療を開始した。

重粒子線治療法は,“切らずにがんを治す”画期的な治療法として注目されている。重粒子線(炭素イオンなど)は,通常の放射線より線量分布の集中性に優れていることから,正常組織への放射線障害を最小限にして,がん局部をピンポイントで治療できる。“切らない治療”は,臓器の機能や形態が温存できるため,治療後の患者さんの早期社会復帰やQOLの向上といったメリットがある。

放射線を使用する施設の施工では,強固な構造体と明確なエリア・動線計画が求められ,当社の原子力施設建設で培ったマスコンクリートによる放射線遮蔽技術や耐震技術が投入された。また,作業工程や設計の見直し,施工技術の改良により,高品質で機能性に優れた施設を実現した。

図:施設内イメージ

施設内イメージ

写真:シンクロトン加速器。炭素イオンを光速の70%まで加速する

シンクロトン加速器。炭素イオンを光速の70%まで加速する

写真:治療室。加速された炭素イオンを患者さんに照射する

治療室。加速された炭素イオンを患者さんに照射する

PERSON 低侵襲ながん治療の普及を施設面でサポートしたい

がんは,1980年代に日本人の死因のトップになり,現在は3人に1人はがんにより死亡していると言われています。その一方,医療の進歩により,がんは決して治らない病ではなくなりました。これからの医療には,単に治すだけではなく,手術や副作用に伴う痛み・体力の消耗を軽減する患者さんに優しい低侵襲な治療法のニーズが高まるでしょう。

低侵襲がん治療の中でいま注目されているのが,重粒子線(炭素線)治療・陽子線治療・ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)と呼ばれる放射線治療です。痛みを伴わず,日帰りでも治療が可能な画期的な療法で,世界的にも日本の技術が秀でている分野です。これらの施設の施工実績をもつ当社は,その経験を生かし,普及をサポートしていきたいと思っています。

がんの撲滅は国民最大の関心事であり,その実現に向けて鹿島の技術が貢献できればと考えており,医療の進歩に対応して建屋として要求されるニーズの変化に応えられるよう,常に最先端医療の動向を把握していきます。

写真:営業本部 医療福祉推進部 部長 阿川清二

営業本部
医療福祉推進部 部長
阿川清二

NEW PROJECT 名古屋市 陽子線がん治療施設整備事業

名古屋市が「21世紀の市民のQOLを支えるまち」を目指し整備する「クオリティライフ21城北」の中核事業として建設する陽子線がん治療施設。施設整備・維持管理を日立製作所が実施する。

図:名古屋市 陽子線がん治療施設整備事業

名古屋市 陽子線がん治療施設整備事業

場所:
名古屋市北区
事業者:
株式会社日立製作所
設計:
株式会社久米設計
事業内容:
RC造 B1,3F  延べ5,624m2

2012年3月竣工予定(中部支店施工)

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