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現場社員の言葉で知る「1F」の今 Part 2 3号機・2号機原子炉建屋

KAJIMAダイジェスト

現場社員の言葉で知る「1F」の今 Part 2 3号機・2号機原始炉建屋

現在,1~3号機の使用済み燃料取り出しと燃料デブリの取り出しに向け,順次作業が進んでいる。
当社JVは,3号機のガレキ撤去・除染を終え,遮蔽体設置工事を実施,
燃料取り出し用カバーの設置準備を行っている。
また,2号機では,作業の支障となる周辺建屋の解体や路盤整備を完了。10月から工事用構台の設置が始まった。

3号機
新たな技術にチャレンジしたいという気持ちが,自分を突き動かしてくれた

2011年9月,水素爆発で建屋上部が崩壊した3号機のガレキ撤去が始まった。5年前,大型クローラークレーンや解体用重機を遠隔操作するモニターには,複雑に絡み合うガレキが一面に広がっていた。そして今,鉄骨が整然と並ぶ映像を同じモニターで見ることができる。この鉄骨は,遮蔽体と呼ばれる線量低減対策の一つで,建屋に蓋をするように設置されている。

この作業を牽引してきた3人の社員がいる。3号機のカバーリング工事を担う菊池淳計画長,肥田泰明工事長,宮崎美穂職員である。菊池計画長は,震災時に担当していた横須賀の火力発電所の応急対応後,2011年12月からガレキ撤去の計画を進めてきた。「散乱するガレキを見た時は,途方に暮れ,どこから手をつけたら良いのかわからない状態でした」と振り返る。様々なトラブルと対峙しながら,ガレキ撤去・除染を進める。遠隔操作技術や重機,ガレキの3次元モデル作成などでは,本社・支店からの支援を受け,一つひとつ丁寧にガレキを拾い上げ,遮蔽体の設置への道筋を開いた。

写真:燃料取り出し用カバーが設置された3号機の模型と肥田泰明 工事長、宮崎美穂 職員、加藤和宏 工事長、菊池 淳 計画長

東京建築支店 
東電福島3号機原子炉
建屋カバーリング
JV工事事務所
肥田泰明 工事長
宮崎美穂 職員
加藤和宏 工事長
菊池 淳 計画長
(写真左から)

燃料取り出し用カバーが設置された3号機の模型。現在,カバーの設置準備を行っている

改ページ

如何にして遮蔽体を設置するか。肥田工事長と宮崎職員は,2012年から計画を始める。肥田工事長は,東日本大震災の時,所属していた建築管理本部から東北地方に派遣され,被災状況調査に奔走した。「着任から4年が経ちました。福島行きを打診された時は,家族のことなどを考えると複雑な思いもありましたが,“復興の役に立ちたい”“無人化施工など新たな技術にチャレンジしたい”という気持ちが,自分を突き動かしてくれました」。遮蔽体に用いる鉄骨は,大きなもので重さ20t,長さ20mを超える。通常の建築現場では使わない代物を,約40m吊り上げ,建屋上部に敷いていくのだ。2016年9月現在で計画の約85%が完了。「全国から集まる社員の多くは,短期の勤務です。特殊な作業の勘所を整理し,短時間で習得してもらえるよう努めています」と宮崎職員。都内の建築現場で工事管理を担い,前職は鉄鋼メーカーというキャリアを持つ。

写真:遠隔操作の状況

遠隔操作の状況

遮蔽体の作業計画は,主にクレーンジブの先端と中間および作業構台の四隅に設置されたカメラからの写真をもとに行われる。図面にはないコンクリートや段差など細かな情報について,現場でガレキを撤去してきた菊池計画長から情報を引き継ぐ協力体制をとる。現場には行かない宮崎職員にとって貴重な情報だ。

「1F」の南方約50kmに位置する小名浜港の埠頭に,もう一つの現場がある。ここで燃料取り出し用カバーの設置に向け,ドーム状の屋根部材などを組み立てる作業が行われた。いわば本番に向けた予行演習だ。「施工計画どおりに進められるか,徹底的に検証を行った」と語るのは,現場を率いる加藤和宏工事長。これから始まる構内での作業に向けて,放射線下での作業や海上輸送などの計画を進めている。

「JV他社の社員も含めて全国に仲間の輪が広がり,国や地域のためにという共通の思いを持って,現場が一丸になれることが魅力です」と4人は語ってくれた。

写真:「1F」の南方約50kmに位置する小名浜港の埠頭

「1F」の南方約50kmに位置する小名浜港の埠頭。燃料取り出し用カバーの設置に向け,ドーム状の屋根部材などを組み立てる作業が行われた

写真:震災直後の状況、ガレキ撤去・除染完了状況、大型遮蔽体設置完了状況(鉄骨が建屋上部に並ぶ)

震災直後の状況

ガレキ撤去・除染完了状況

大型遮蔽体設置完了状況
(鉄骨が建屋上部に並ぶ)

改ページ

Voice 今こそ,現場のチーム力と当社が持つ技術力・ノウハウを結集すべき時

3号機の最上階にあるプールから,使用済み燃料を取り出すためのカバーの設計を担当しました。設計にあたっては,実際に施工を行う現場目線に立って,何を重視し,どんなことに頭を悩ませているかを第一に考えました。それは,放射線下での有人作業を極力少なくして“作業員の被ばくを最小限に抑えること”です。

カバーは,燃料取り出し用の設備が走行する架台(FHMガーダ)とドーム屋根からなります。その大きさは,全長約57m,地上高さ約54m。爆発で傷んだ建物に荷重がかからないよう,巨大な橋のような構造となっています。また,ガーダ中央部には揺れ止め用にダンパを2台配置しています。これだけの規模の構造物を,大型クローラークレーンによる遠隔操作で造り上げるために,徹底した軽量化と大型ユニット化に取り組みました。約680tのFHMガーダを10分割,約490tのドーム屋根は16分割して組み立てます。各パーツを接合するボルト本数が極力少なく済むようディテールを工夫し,ボルト締めや玉外し以外は遠隔操作で行うことで,人手による作業を限界まで減らす設計としました。

写真:松尾一平 設計室長

原子力部 
松尾一平 設計室長

当社の現場社員は優秀で,目の前の課題を自らの手で解決していく力を持っています。しかし,「1F」での作業全てが“誰も取り組んだことのないこと”と言っても過言ではありません。今こそ,現場のチーム力と当社が持つ技術力・ノウハウを結集し,困難に立ち向かっていく必要があります。これは一過性であってはならず,継続的な取組み姿勢が必要だと考えています。

改ページ

2号機
様々な要素技術を組み合わせて,上部解体の技術を確立していきたい

「まさに,坂道を上り始めたところ。2号機は,水素爆発を起こしていないから難しい」と切り出したのは,井上隆司所長。震災直後から3号機のガレキ撤去・除染を行い,現在2号機の燃料取り出しのための施工や中長期的計画を担当している。当面の目標は,オペレーティングフロアへアクセスする構台を設置すること。そのために,周辺建屋の解体や路盤整備などの準備工事を進めてきた。10月からは鉄骨工事に着手し,施工のピークを迎えている。

「彼がいなければ,工事は止まっていたかもしれない」と井上所長が評する右腕がいる。影山泰計画長だ。7,8号機の計画を進めている時,東日本大震災が発災。その後,「1F」の現場勤務を希望しながらも,社内外との調整業務など後方支援を全力で遂行してきた。2014年,希望がかない2号機の現場へ。「構内には,当社に限らず数多くの工事が輻輳しています。全体の動きにアンテナを張り,工事に影響がある要素があれば,関係者と早めの調整を心掛けています」と影山計画長は語る。関係者間の利害が錯綜するなかでも,状況を正確に把握し,理解しあえる関係を築いている。

準備工事に続くターゲットは,原子炉建屋の上部解体フェーズだ。「どんな機械でスラブを切るのか。解体しながら放射線低減対策を如何に施すか。技術的に解決すべき課題は数多ある」と井上所長は言う。3号機と同様に人が近づくことができないため,遠隔操作が必須である上,放射性物質の飛散を防止するため粉塵を出さない工法などが求められる。「国内外には様々な技術を持った企業があります。そうした要素技術を組み合わせて,上部解体の技術を確立していきたい。その技術をフィードバックすることで,これまでにない画期的な施工技術になるはず」と,影山計画長は今を見つめながらも,長期的な展望を語る。そのためには,全社的かつ継続的な支援が必要となる。

「誰も取り組んだことがないことに挑みたい。そうした志のある若手にとって,力を発揮できる最高の舞台です」(井上所長)。

写真:井上隆司 所長

東京建築支店 
東電福島第一2号機燃料取出用架構
JV工事事務所
井上隆司 所長

写真:影山 泰 計画長

東京建築支店 
東電福島第一2号機燃料取出用架構
JV工事事務所
影山 泰 計画長

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