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現場社員の言葉で知る「1F」の今 Part 4 海水配管トレンチ内部の閉塞

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現場社員の言葉で知る「1F」の今 Part 4 海水配管トレンチ内部の閉塞

汚染水対策は,「汚染源を取り除く」,「汚染源に水を近づけない」,「汚染水を漏らさない」という
3つの基本方針のもと進められている(「国の計画」,「汚染水対策の概要」を参照)。
この工事は「汚染源を取り除く」に位置付けられる。
2~4号機タービン建屋の海側にある配管やケーブルを収納している地下トンネル(海水配管トレンチ)内に
事故当初から溜まっている高濃度汚染水を取り除く工事だ。

国土の復旧・復興に尽くすのは、土木技術者の使命です

「困難ななかで一歩一歩作業を進めて頂いたことに心から感謝申し上げる。国民の皆さんが,成果に注目しています。これからも,その期待に応えて頂くようお願いします」。4月14日,安倍晋三内閣総理大臣は,首相官邸で工事関係者に労いと感謝の言葉を贈った。厳しい環境下で,確実かつ迅速な施工を実現したことが高く評価された。

この工事を指揮するのは,2012年に着任した出口普(あまね)所長だ。使用済燃料を貯蔵する乾式キャスク仮保管設備の基礎工事,汚染水を保管するタンク20基の設置工事を約1年半で成し遂げた後,海水配管トレンチ内部の止水,閉塞工事を担ってきた。「国土の復旧・復興に尽くすのは,土木技術者の使命です」と信念を語る。それを貫くのは簡単なことではない。高濃度汚染水が留まる約80mのトンネル内に,コンクリートを充填する必要がある。既存技術では流動性が足りない。途中に新たな立坑を構築すれば,被ばく線量増大や工程遅延,汚染水漏洩リスクが発生する。当社技術研究所に協力を依頼し,後にヒーロー(Hilo:High leveling for long distance)と名付けられる新たな充填材を開発。長さ100mの水槽を用いた水中流動実験を重ねる。他の現場同様に厳格な線量管理のもと施工を行い,2015年9月に海水配管トレンチ閉塞へと導き,汚染水の漏えいリスクを大幅に低減させた。現在は,残された小規模トレンチの充填に邁進する。

写真:出口 普 所長

東京土木支店
東電福島第一
土木工事事務所
出口 普(あまね) 所長

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日本一明るく元気な職場

「被ばくリスクがあるのは事実。しかし,他現場でも様々なリスクがあります。リスクというのは,マネジメントできているかが肝要です。被ばくリスクは管理下に置かれている。そう考えれば,普通の現場なのです。下水管リニューアル工事での硫化水素などは,同じくらい怖い存在だと思いますよ」と,「1F」の現場だからといって特別視はしない。現場運営のモットーは“日本一明るく元気な現場”。職住を共にする現場メンバーとの会話は,真剣ななかにも笑い声が絶えない。

「日々の仕事が楽しい」と笑顔で話すのは,宇野忠浩工事係。海外土木支店から派遣されている時に,首相官邸を訪問した。安倍総理との握手が,宇野工事係の心を動かす。その後,長期での赴任を希望。「全面マスクでは会話が聞こえないことが多いです。作業内容を正確に伝えるには,身振りを交えながら図や絵で説明することが大切ですね。会話が通じなかったアルジェリア高速道路での経験が活きています。国難に立ち向かう。これ程,やりがいのある仕事はありません。これからは20代の若手にも自分の経験を伝えていきたいです」。

写真:宇野忠浩 工事係

東京土木支店
東電福島第一
土木工事事務所
宇野忠浩 工事係

〈廃炉まで長い年月がかかると思います。だからこそ着実に,その時にできることを積み重ねて,歩みを止めないことが重要です。そして,鹿島はここから絶対に引いてはいけない〉。本誌2014年3月号で,当時,陸側遮水壁の実証実験を担っていた淺村忠文所長(現 土木営業本部副本部長)が語った言葉だ。

この思いは,多くの人々に確実に引き継がれている。そして,これからも。未来へと向かって。

写真:安倍晋三内閣総理大臣と工事関係者(首相官邸にて)

安倍晋三内閣総理大臣と工事関係者(首相官邸にて)。現場社員のほか,支店関係者,Hiloを開発した技術研究所の所員,グループ会社のカジマ・リノベイトの社員など約40名に,安倍総理が感謝の言葉を贈った。本工事は「2015年度社長表彰」にて,優良工事表彰を受賞した

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