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Chapter3 “未来をひらく”学校づくり

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学校づくりの企画から設計,施工のプロセスを生徒が参加して行う「スクールプロジェクト」。
奈良学園中学校・高等学校(奈良県大和郡山市)でプロジェクトが始まり,校舎が完成してから3年が経過した。
当時参加したメンバーたちや,学校のその後を追った。

生徒のアイデアが盛り込まれた“学び舎”

「校舎建替えの機会を,教育の場に生かせないか」という学校側の問いかけがきっかけで始まったスクールプロジェクト。当社が立案した企画のもと,学内で生徒・先生・当社社員によるチームが立ち上がった。ランドスケープや環境を学ぶセミナーや,全校生徒のアンケート分析,ゲーム感覚で配置計画を考えられるよう考案した「スクールパズル」などをもとにチームで新校舎のプランづくりが進められ,文化祭でプレゼンテーションが行われた。

生徒のアイデアを存分に盛り込んだプランに基づき,工事がスタート。施工中も生徒オリジナルの「スクラッチタイル」づくり,新校舎の現場見学会,校内のサイン(案内板)を考えるセミナーが開かれるなどプロジェクトはつづいた。生徒の希望や工夫が詰まった“学び舎”が完成したのは開始から3年目の2009年9月のこと。プロジェクトに参加した生徒は後輩に校舎を引き継ぎ卒業し,いまはそれぞれ別の道を歩んでいる。当時高校生だった元メンバー4人と,中心となって活動をしてきた新川雄彦先生に,現在の学校の様子やその後の話を聞いた。

写真:学園のシンボルとして設置された大階段

学園のシンボルとして設置された大階段も,生徒のアイデアによるものだ Photo:福澤昭嘉

奈良学園大和郡山キャンパス

場所:
奈良県大和郡山市
発注者:
奈良学園
設計:
当社関西支店建築設計部
規模:
RC造 3F 延べ10,277m2

2009年8月竣工(関西支店施工)

※『奈良学園スクールプロジェクト』は,
2010年日本建築学会教育賞を受賞している

写真:生徒のアイデアによって,緑化された校舎の屋上

生徒のアイデアによって,緑化された校舎の屋上。景色がよく人気のスポットとなっている。在校生からは「きれいなだけでなく,生徒がいきいきとしているように見えて奈良学園を選んだ」との声もあった Photo:福澤昭嘉

写真:廊下のホワイトボードが連絡板などとして機能している

廊下のホワイトボードが連絡板などとして機能している。「生徒と教員のコミュニケーションをうまくとれるような工夫が多い」と先生方からも評価されている Photo:福澤昭嘉

人生を変えた! スクールプロジェクト

メンバーのひとり,小尾泰輝さんはプロジェクトを聞いた際に,「二度と経験できないことでは」と感じ,メンバーに手を挙げた。やってみるとたいへんな作業だったが,文化祭でのプレゼンがいま大学で発表をする際などの自信につながっていると語る。

現在,大学で都市政策を専攻する山本紋寛さんは,プロジェクトへの参加がきっかけで進路を選択した。ゲーム感覚で配置計画を考える「スクールパズル」を使ってプランを考えたプロセスは,都市計画案や模型製作の実習にリンクしているそうだ。自分の思いを直接伝えてものづくりをしたり,実際の建設業に触れられたことは大きな経験だったという。

同様にプロジェクトが発端となり,中学3年生から安藤忠雄氏の本を読み始めるなど,建築への興味をもった松原一樹さん。プロジェクトが「人生を変える経験」と語り,建築学科へ進んだいまは建築家への道を志している。経験と今後の勉強を糧に,「次の校舎の建替えのときは自分が設計をしたい」と熱く話す。

みんなでものをつくりあげる面白さ

当時,リーダー的存在で活発に意見を出していた森岡礼佳さん。「みんなでひとつのものをつくる面白さ」が忘れられないという。現在は大学でサッカー部の広報を担当し,試合でひとつのことに全員の気持ちをもっていく姿勢や手法が,ものづくりとも共通すると感じている。トラブルが起きたり,悩んだときにはスクールプロジェクトの経験を思い出し,前向きな解決策を考えるのだという。

計画を主導してきた新川先生によれば,生徒のアイデアによる配置構成が機能的で,プロジェクトを経験していない先生からも驚かれるなど,校舎の使い勝手はおおむね良好とのことだ。あらためてプロジェクトを振り返ると,「完成後には生徒たちが何事にも積極的になり,フットワークがとても良くなったようです。プロジェクトを機に建築への興味をもった生徒がいるように,プロのサポートをもらって学校づくりができたのは,とても刺激的でした」。

「スクールプロジェクト」がもたらした物事をやり遂げる自信,建築や都市づくりへの関心,ものづくりの面白さ。いつまでも生徒たちの心に響き,将来の進路や夢を育む存在となったようだ。プロジェクトは教育の場でひとつの役割を果たしたといえるのではないだろうか。

Column 次世代の教室を創造する

教室リニューアルのイメージ

教室リニューアルのイメージ。能動型学習が可能な机・椅子の配置のほか,3つのスクリーンが配され,壁面のホワイトボードには直接書き込みができるなど,多様な講義や活動に利用できるスタジオ型の教室

開成学園・開成高等学校
リニューアル

場所:
東京都荒川区
発注者:
開成学園
規模:
教室改修 延べ100m2

2012年8月竣工(東京建築支店施工)

「壁全体をホワイトボ-ドにするのはどう?」「演劇用の舞台って本当に必要?」……。東京都荒川区・開成高等学校のある教室のリニューアルでは,生徒と先生が一緒になってその活用方法を議論していた。現状は100人が座れるいわゆる大学の講義室ふうの階段教室。授業だけでなく,夏季講習や生徒会活動など多目的に利用されていたが,その老朽化が進行し,改修が必要になった。

改修にあたって校長先生から「単なる改修工事ではなく,次世代の教室空間を研究する機会にしたい」と提案があり,最初は各教科の先生と当社が一緒になって改修計画の検討をスタート。検討が進むに伴い生徒たちが加わり,チームとして計画案をまとめていった。

検討のミーティングは昨夏以降10回を重ねた。先生たちがそれぞれ模擬授業を行ったり,双方向の能動型学習であるアクティブラーニングを実践する大学の講義室を見学に行くなどして,チームで“未来型教室のイメージ”を醸成していった。また,生徒主体で行われる伝統的な体育祭や学年旅行の事前検討会の場を想定するなど,生徒たちによるアイデア出しも進んだ。

活発な議論と並行して,当社が具体的な計画を立案。デジタル教科書を用いる授業からグループ学習,演劇・映画鑑賞,国内外の講演者をスクリーン上に招いたセミナー,インターネットを活用した双方向の授業といった多用途かつ先進的な教室を提案した。

最新鋭の設備を配置したスタジオ型の教室への改修設計のみならず,机や椅子の配置を変えるだけで多目的な利用が可能となる「使い方の提案」を行い,チームの成果としてまとまった。ここでも鹿島の「スクールプロジェクト」がひとつの“カタチ”になった。

生徒や先生が考えた“研究成果”のお披露目は今秋の予定だ。

10回以上行われた生徒・先生とのミーティング

10回以上行われた生徒・先生とのミーティング。具体的なアイデアや意見が活発に交わされた

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