当社には,学校づくりのパートナーを担う専門部隊がある。
営業・設計・開発・IT部門からなる「学校教育チーム」は1996年に発足し,
これまで900件にのぼる学校教育施設を担当してきた。部署を横断した連携で,
つねに顔を突き合わせながら,戦略的に活動を展開している。
特集の最後は,スペシャリスト集団の素顔を交えた活動を紹介し,鹿島のめざす学校づくりを探る。
構想や計画づくりの担当としてチーム立上げ当初から,設計以外のところを全部やるという思いでした。経営者の視点に立った学園経営シミュレーションやデータベースを構築し,コンサルティング業務を重ねてきました。いまは,学校の主人公である生徒側の目線に立って学校づくりを考える段階に入ってきたと思います。そのひとつとして結実したのが奈良学園のスクールプロジェクトだといえるでしょう。お客さまの語られる言葉のなかに,どんな学校をつくりたいかという意思やイメージが何らかのシグナルを発しています。それをいつでも確実にキャッチしていきたいと思います。
チームに入る前は残念ながらこの存在を知らなかったのですが,お客さまに“鹿島には学校専門のチームがある”ことを驚かれ,インパクトの大きさや強みを実感しています。社内のデータベースやナレッジの蓄積が充実しており,顔が見えることで他部署へも依頼がしやすく,実務面でも心強いのです。
担当した西南学院小学校の設計では,一見,ただの大きな空間に思われがちなアトリウムも,生徒さんや先生方へのヒアリングを重ねて魅力的な空間とし,できた後にはコンセプトや使い方の説明をすることで,よりよく使ってもらえるようになりました。どんなところに的を絞れば学校建築がよくなっていくのかが徐々に見えてきていると思います。
学校教育チーム16年の継続で,社内外にまさに“顔の見える”しくみが育ってきたように感じます。また,受注実績の増加に加え,BCS賞の連続受賞※など,事業・設計・施工がトータルに評価されてきたことに,手ごたえをおぼえます。
昨年の東日本大震災の影響もあり,災害対策へのニーズは変わらず多く聞かれます。もちろん安全面はもっとも大切な要素ですが,同時に,最近は品質を確保したうえでの使いやすさであったり,いかに手間をかけずにメンテナンスができるかも重要なポイントのひとつです。
学校施設は同じ敷地での建替えを希望されるケースが多く,工事期間中の代替地の検討や,あるいは「居ながら®工事」による学業の継続,生徒の安全確保などといった課題が重なります。そうした複雑化した課題の解決にゼネコンの総合力が評価されてきました。プロジェクトの事業予算の検討,新校舎のプランニング,狭小な敷地での施工計画や工期短縮のノウハウなどの蓄積された実績が鹿島の強みです。
情報化の潮流は教育のスタイルも年々進化させています。文部科学省は2020年度までに実現をめざす「教育の情報化ビジョン」を掲げました。たとえば「児童1人1台情報端末をもたせる」といった方針のもとでは,黒板に向かって一様にノートを書き記す時代の「教室」とそのかたちが変わってくるのは必然のことでしょう。私どもはITと建築空間との融合をめざしていますが,“かたちの見えないIT”を提案する難しさと日々格闘しています。
校舎のエンドユーザーとなる先生や生徒たち。彼らとの会話から読み取る“学校への思い”を大切にし,その学校の個性を生かした学校づくりを心がけています。そのために不可欠な情報交換,調査・分析や技術は,学校教育チームの腕の見せどころです。
最近の当社の学校づくりが評価されてきたのだとしたら,コミュニケーションを大切にしたプロセスや,後世に残るようなアイデンティティをもたせた“どこにもない学校づくり”のコンセプトやかたちではないでしょうか。
学校という建物は,必ず誰もが経験する施設なので,自分自身をその学校の生徒や学生として想定することができます。自分の経験値や理想をもとにその場に置き換えてイメージを膨らませることで,より設計の自由度を大きくし,柔軟な提案ができると思います。生徒や学生たちにとって原風景ともなりうる魅力ある学校をめざしたいと考えています。
地域のなかで歴史を刻み,人を育てる場としての学校は,さまざまな人の思い入れが大きな施設のひとつである。
「お客さまとのお付き合いのなかでわれわれも成長しています」と篠田統括グループリーダーは語るように,
学校が伝統を積み重ねていくのと併走しながら,チームはこれからも魅力ある学校づくりのパートナーとして
成長をつづけていく。
学校・教育施設の豊富な実績や技術・サービスをご紹介しています
https://www.kajima.co.jp/tech/school/index.html
本特集のために,チームメンバーが集結。奈良学園スクールプロジェクトで開発した「スクールパズル」の改良版を用いて,“未来の学校像”について自由にワークショップを行った。「中高一貫の男女共学校,1学年6クラス,設置基準による運動場8,400m2,校地16,800m2」と前提条件を設定している。