1923(大正12)年9月1日の関東大震災から100年の節目を迎えた本年。
当社はこれまで地震に関するさまざまな調査・研究を行い,地震対策に関する技術開発を進めてきた。
今月の特集では,あらためて地震の基礎を学び,今後想定される巨大地震に触れ,
いざというときに身の安全を守るポイントや防災への備えを取り上げる。
これまで世界各地で大きな被害をもたらしてきた地震。その発生メカニズムや専門用語を基礎から紐解き,超高層や免震建物の揺れの計算において重要な長周期地震動をはじめ,首都直下型地震や南海トラフの巨大地震など近い将来発生が予測される大規模地震の最新情報を解説する。
(青字はプラスαの基礎知識)
100年前に起きた巨大地震
まず,100年前に発生した関東大震災を振り返ってみよう。
1923(大正12)年9月1日午前11時58分32秒,神奈川県西部直下から断層破壊が始まり,相模湾,さらには千葉県の房総半島先端に到るプレート境界部の断層が動いた。のちに「大正関東地震」と呼ばれる巨大地震である。
激しい揺れによる建物倒壊などの被害に加え,各地で被災した家屋から出火,おりからの強風により延焼し,東京や横浜は大火災に見舞われた。そのほか,津波や土砂崩れ,液状化などさまざまな被害が広範囲で発生。この大災害を「関東大震災」と呼ぶ。
激しい揺れと大火災で甚大な被害に
この地震では,埼玉県,千葉県,東京府(現・東京都),神奈川県,山梨県で震度6の揺れが観測されたほか,北海道の道南地域から中国・四国地方にかけての広い範囲で,震度5から震度1の揺れが観測された※。当時は震度階級が6までしかなかったが,相模湾沿岸地域や房総半島南端での家屋の倒潰状況などから,これらの地域は現在の震度7相当の揺れと推定されている。
全半潰・焼失・流失・埋没による家屋被害は総計約37万棟に上り,死者・行方不明者は全体で約10万5,000人に及び,うち約9万人が焼死といわれる。
大正関東地震の概要
当社はこれまで,防災の観点から関東大震災をはじめ,地震に関するさまざまな調査・研究を重ねてきた。地震の性質や被害状況などを再評価し,正確に知ることが制震・免震技術などの震災対策につながると考えたからだ。
以降では,地震の揺れに関する基礎知識や専門用語を解説していく。