地震の原因となるプレート運動
地球の表面は,大小多数の「プレート」と呼ばれる岩盤で覆われている。地震が発生する原因は,このプレートの運動と深くかかわっている。
プレートは地下のマントルの対流により,年間数cmの速さで移動する。プレートの周辺部には圧縮されたり,引っ張られたりする巨大な力が働く。この力が地震を発生させる原因となる。
地球表面で起こるさまざまな地学的現象をプレートの運動で説明しようとする理論を「プレートテクトニクス理論」という。実は,このプレートテクトニクス理論にさきがけ,1910年代にウェゲナーによる「大陸移動説※」が提唱されていた。当時は実証的なデータがなく,立証されるには至らなかった。その後,1960年代に入ると,地磁気の研究など科学的証拠の積重ねによりプレートテクトニクス理論が確立され,地震や火山活動などの説明が可能となった。
※大陸が地球の表面を移動し,その位置や形状が変わるという学説
複数のプレート同士の境目を「プレート境界」という。地震が発生した場所を世界地図に表すと,地震はプレート境界周辺に集中していることがわかる。プレート境界周辺では,地震や火山活動,地殻変動など地学的な現象が活発に起こっている。

世界の主なプレートと2011~2020年に発生した地震分布。プレート境界周辺で地震が多く発生していることがわかる
気象庁「世界の主なプレートと地震の分布」
(https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/
jishin/about_eq.html)をもとに編集・加工して作成
日本列島周辺のプレート
日本列島とその周辺は,海洋プレートである「太平洋プレート」「フィリピン海プレート」,大陸プレートである「北アメリカプレート」「ユーラシアプレート」の4枚のプレートが会合する位置にある。そのため,日本は狭い国土ながら,世界で発生する地震のおよそ10%にあたる非常に多くの地震が日本とその周辺で発生している。
日本周辺のプレートの移動

日本列島は,主に大陸プレートである北アメリカプレートとユーラシアプレートに位置する。海洋プレートである太平洋プレートは東南東から年間約8cmの速さで,またフィリピンプレートは南西から年間3~5cmの速さで日本列島に接近し,大陸プレートの下に沈み込む
小規模なプレートを考慮した分類では,南西日本が位置するユーラシアプレートの一部は「アムールプレート」に分類される。また,東北日本が位置する北アメリカプレートの一部は「オホーツクプレート」に分類される。
断層面と断層運動
地下のプレート境界では,どのような力が働いているのだろうか。
プレート運動による伸張・圧縮の力で,地下の岩盤にひずみが蓄積される。そのひずみが耐え切れなくなったとき,岩盤のある面が食い違って「断層」ができ,地震が発生する。その食い違い面を「断層面」といい,「断層面」を境に急速にずれ動くことを「断層運動」という。
岩盤に力が加わることにより岩盤が変形してその中にストレス(応力)が発生する。この変形の大きさを「ひずみ」という。弾性領域(力を除くと元の状態に戻る領域)では応力とひずみが比例する。弾性応力を超えると岩盤が破壊される。

地震発生のメカニズム
日本列島とその周辺で起こる地震は,発生する場所や仕方によって,いくつかのタイプに分類される。
[プレート境界地震]
海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込むとき,大陸プレートの先端が引きずり込まれる。プレート同士の接する部分(断層面)がひずみに耐え切れなくなると,大陸プレートの先端が跳ね上がるような断層運動が起きて地震が発生する。これを「プレート境界地震」という。この断層運動は,長い年月で繰り返し起こり,例えば南海トラフが位置する東海沖や四国沖では100年程度の間隔で巨大地震が発生している。また,地震時の海底における地殻変動によって津波が発生する場合も多い。
代表的な地震として,南海トラフ沿いで「東南海地震」(M7.9,1944年)や「南海地震」(M8.0,1946年)が,相模トラフ沿いで「関東地震」(M7.9,1923年)が,日本海溝沿いで「東北地方太平洋沖地震」(M9.0,2011年)が発生している。
[海洋プレート内地震]
地中深くに沈み込んだ海洋プレート内でプレートが割れるような大規模な断層運動が起こり,地震が発生する。これを「海洋プレート内地震」という。
「昭和三陸地震」(M8.1,1933年),「釧路沖地震」(M7.5,1993年)が代表的。
[内陸地殻内地震]
大陸プレート上の内陸側では,プレート運動によるひずみが岩盤に蓄積され,比較的浅い場所(地下数km~20km程度)で断層運動が起こり,地震が発生する。これを「内陸地殻内地震」という。われわれが生活する直下の浅い位置で発生する地震,いわゆる「直下型地震」では,甚大な被害が起きる場合がある。
代表的な地震として,「兵庫県南部地震」(M7.3,1995年),「熊本地震」(M7.3,2016年)がある。
一度できた断層が繰り返し活動し,将来も活動する可能性がある断層を「活断層」という。地震には,ほかに火山活動に伴う火山性地震がある。
