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削孔誘導システム「MOLEs」
実切羽面の削孔誘導を効率化する新削孔誘導システム
山岳トンネル工事においては、工期短縮と余掘り低減のため、火薬装填用の発破孔の削孔にあたり、計画通りの削孔位置、削孔角度、削孔深さとなるよう正確かつ迅速な削孔作業が求められます。従来この作業はオペレータの経験によるところが大きく、将来的には熟練作業員不足が懸念されています。
近年、ICTの発展に伴い開発されたガイダンスシステムやフルオート削孔が可能なコンピュータジャンボは、マシンそのものが高価等の理由で、広く普及するまでには至っていません。
ドリルジャンボに後付け設置されたMOLEs
そこで鹿島は、山岳トンネルの効率的かつ高速な施工を目的としたドリルジャンボの新しい削孔誘導システム「MOLEs(モールス)」を開発しました。
特許登録済
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キーワード
- 発破掘削、ICT、削孔誘導システム、余掘低減
削孔誘導システム「MOLEs」の概要
削孔誘導システム「MOLEs」は、光波測量によりドリルジャンボ自身の位置や姿勢を把握するターゲット(❶)、切羽面の凹凸を把握する3Dスキャナ(❷)、切羽面とブームの動きを捉える動画カメラ(❸)、削孔誘導画面を表示するモニター(❹)から構成されています。従来の削孔ガイダンスシステムで必要であった電気式のモーションセンサ類が一切不要のため、振動や粉じん、削孔水による故障も少なく、汎用のドリルジャンボへの後付け設置も容易です。
システム構成
本システムでは、切羽面をスキャニングし、実切羽の凹凸面を座標として把握した上で、計画発破孔の位置と削孔角度を正確に算出し、モニターに誘導ガイダンスを表示する機能を付加しました。これにより、仮想切羽面での誘導で生じていた操作性の悪さや実切羽面とのズレはなくなり、正確かつ迅速な削孔作業が行えるようになりました。
誘導あり・なしによる発破進行長と余掘りの違い
特長・メリット
モニター上に3色の誘導表示
本システムは、3Dスキャナによって得られる実切羽面の凹凸座標から誘導ラインを計算し、リアルタイムにモニターに映し出します。モニターには誘導ラインと3色の誘導マーカーが表示されています。オペレータはその誘導ラインに自身の操作するブームの位置を合わせ、誘導マーカーの示す通りに削孔するだけで、所定の削孔位置・削孔角度、削孔長に削孔することができます。オペレータの技量に頼ることなく確実な削孔が容易に行えます。
モニター上の画面表示
誘導手順
安定した発破進行長の確保
本システムを導入後、導入前に比べて切羽左右の進行差が減少し、切羽面の凹凸も少なくなりました。また、1発破ごとの進行長も導入前と比較して約25%向上し、安定した発破進行長を確保することができました。また、このシステムを適用した岩手県の唐丹第3トンネル工事では月進270mの日本記録を達成しました。
MOLEs適用前後の発破後切羽面凹凸状況
適用実績
国道45号
唐丹第3トンネル
場所:岩手県釜石市唐丹町
竣工年:2018年3月
発注者:国土交通省東北地方整備局
施工延長:トンネル延長L=3,023m
内空断面積95m2
学会論文発表実績
- 「差角誘導システムの適用による余堀りの低減効果の検証」,土木学会年次学術,2018年
- 「汎用型ドリルジャンボに搭載する差角誘導システム(MOLEs)」,建設機械施工,2017年
- 「発破掘削時の差角誘導システムの開発」,土木学会年次学術,2016年
自動スライド型枠
クレーンを使用せずに型枠のスライド作業を全自動化
「自動スライド型枠」は、ダム等の大型構造物において、油圧ジャッキによるセルフクライミング装置と、電動モータを動力とした鋼製型枠の自動脱枠・水平移動機構を組み合わせ、一連の型枠スライド作業をクレーン作業なしで全自動化するものです。これまで、幅60m(ダム堤体4BL分(1BL:幅15m))の型枠を自動で一括スライドさせることに成功し、従来工法に比べて、作業時間を約半分に短縮することができ、作業人員も大幅に削減できました。
自動スライド型枠では、全ての電動モータ及び油圧ジャッキを同時に制御することにより、幅60mの鋼製型枠が一体となって作動し、型枠スライドに必要な一連の作業(脱枠、水平移動、スライド、セット)を全て自動で行うことができます。
特許出願中
幅60mの型枠を自動で一括スライド
関連情報
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キーワード
- 型枠、スライド、自動化、生産性向上、工程短縮
特長・メリット
作業の省力化・平易化が可能
電動モータを用いて型枠の脱枠と水平移動を行い、油圧ジャッキによるセルフクライミング装置で鋼製型枠をスライドさせるもので、1人の作業員がタブレット端末を操作することで行えます。
また、とび工(型枠大工)、クレーンオペレータ等の特殊技能労働者でなくても作業を行うことができ、誰でも同じ精度で型枠スライド作業が可能となり、作業の省力化・平易化により、生産性が向上します。
作業の省力化・平易化が可能
作業人員の削減及び作業時間の短縮を実現
従来のクレーンによる型枠スライド作業に比べて、作業時間を約半分に短縮することができ、作業人員も大幅に削減することができます。
従来工法と自動スライド型枠の比較(幅60m当り)
並行作業が可能
これまで打設面に配置していたクレーンが不要となるため、スライド作業と並行して、打設面清掃・打設準備等の別の作業を行うことが可能となります。
また、コンクリートなどの材料運搬をするダンプトラックとクレーン作業との錯綜が減り、運搬効率の向上による打設速度の向上が期待でき、生産性及び安全性が向上します。
並行作業が可能
高所でも安全に作業が可能
型枠作業のための足場(プラットフォーム)が躯体に常に固定されており、高所でも安全に作業することができます。
また、従来工法の3m幅でのスライド作業に比べ、60m幅を一括スライドするため、端部作業の発生頻度が劇的に減り、安全性が向上します。
高所でも安全に作業が可能
適用実績
大分川ダム建設
(一期・二期)工事
場所:大分県大分市
竣工年:2019年11月
発注者:国土交通省九州地方整備局
規模:中央コア型ロックフィルダム
堤高91.6m 堤頂長400m
堤体積387万m3
幾春別川総合開発事業の内
新桂沢ダム堤体建設
(第1期・第2期)工事
場所:北海道三笠市
工期:2016年8月~2021年3月
発注者:国土交通省北海道開発局
規模:重力式コンクリートダム
堤高75.5m 堤頂長397.0m
堤体積59.5万m3
(いずれも嵩上げ後)
小石原川ダム本体建設工事
場所:福岡県朝倉市・東峰村
工期:2016年4月~2020年3月
発注者:水資源機構
規模:中央コア型ロックフィルダム
堤高139m 堤頂長568m
堤体積830万m3
学会論文発表実績
- 「コンクリートダム下流面への自動スライド型枠の適用実績」,土木学会第74回年次学術講演会,Ⅵ-716,2019年
コンクリート注文・製造・管理の自動化システム
複数箇所の同時打設時のコンクリート注文・製造・管理を自動化
新桂沢ダムでは、4台のクローラクレーンにて複数ブロックを同時に昼夜打設し、コンクリートの運搬先が多岐にわたること等から、人為的ミスによるコンクリートの誤運搬が引き起こす打設遅延対策や打設間違いのリスク回避策が求められました。そこで、コンクリートの注文、製造、運搬、打設までの一連の管理をIoT、ICTを利用して「見える化」することによって、打設当番やコンクリート運搬車両の運転手、クレーンオペレータ、バッチャープラントオペレータ、JV職員が、いつでもどこでもコンクリートの注文、製造、運搬、打設状況を把握し確認できる「コンクリート注文・製造・管理の自動化システム」を開発、導入しました。その結果、今までにない管理形態と見える化によって誤運搬、打設間違いのリスクを回避でき、効率よく無駄のないコンクリート打設を行うことが可能となりました。
特許出願中
システム概念図
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キーワード
- コンクリート、バッチャープラント、コンクリート打設、運搬、品質管理、自動化、生産性向上、省力化
特長・メリット
コンクリートの製造・運搬状況を正確に把握
複数の打設場に配置された打設当番がタブレット端末を用いて注文したコンクリート情報は、打設箇所に紐付けされた累計バッチ番号、配合、数量を表示したアイコンとなって計量→製造→積込→運搬→打設のそれぞれの状況においてデジタルデータ化されクラウドサーバーを利用して「見える化」し情報共有されます。
複数の打設場所からのコンクリートの注文や製造、運搬状況を一元管理し、リアルタイムで把握できるため、確認作業が大幅に減り生産性が飛躍的に向上します。
4か所での打設状況が一元管理され、生産性が飛躍的に向上
コンクリート打設業務の合理化・生産性の向上
従来、打設当番は無線や携帯電話によりコンクリートの注文を行ったり運搬状況を確認していましたが、本システムの導入により、コンクリートの注文・取消し・変更といった注文管理、製造有無や運搬状況、到着予定時刻等の確認に要していた時間が大幅に削減され、打設当番は打設作業により集中できます。さらに、注文したコンクリートの到着予定時刻を精度よく把握できるため、段取り替え、打設位置変更、配合変更などがより計画的に行えるようになりました。さらに打設記録もタブレット端末を用いて入力(プルダウンで定型コメント選択や自由コメント入力)できるようペーパーレス化機能を備えたことで、生産性が大きく向上しました。
コンクリート注文~製造イメージ図
タブレット端末によるコンクリート注文管理の合理化
注文したコンクリートがバッチャープラントで計量開始されるまで、いつでも注文の取消し、数量変更、一時停止や別注文の挿入といった注文指示がタブレット端末で行えます。事前計画した打設順序通りのコンクリート種別と数量を複数注文しておけば、自動的に製造・運搬が行われるため、打設当番はタブレットの注文管理画面を確認するだけで、注文したコンクリートの状況(未製造、製造済み、運搬中、打設済み)が一目で確認できます。打設当番が交代しても注文履歴は全て引き継がれます。
注文済みのコンクリート状況をリアルタイムに表示
クラウドサーバーを活用した打設進捗管理
打設当番がタブレット端末を用いて入力した打設開始日時、打設に使用するクレーン、打設ブロック番号、打設標高、打設計画数量、打設当番氏名や注文したコンクリートの配合、数量、製造時間、運搬開始時間、打設完了時間および品質試験室で実施した試験結果などは全てクラウドサーバーでデータを共有化しています。また、これらのデータを加工、自動計算、グラフ化した打設進捗等の結果や試験室の検査データも、いつでもどこでもJV職員や打設当番が確認することができます。
コンクリート品質管理システム画面(左)
- 品質試験室で実施した試験結果もタブレットで閲覧可能
- 現場で計測したコンクリート温度をタブレットで入力可能
打設進捗管理画面(右)
- 打設速度(移動平均値)を表示
- 打設進捗は計画値と実績値をグラフで表示
- 打設終了予測時間も自動計算
コンクリート品質管理システム画面
打設進捗管理画面
打設日報の自動作成機能
当該ブロックの打設が完了し、「打設完了」ボタンをタブレット端末から入力すると、自動的に打設日報をエクセルファイルで作成します。打設当番は従来必要であった事務所に戻ってからの打設日報作成作業を短時間で終了することが可能となり、業務の効率が大幅に向上しました。
打設日報出力例
適用実績
幾春別川総合開発事業の内
新桂沢ダム堤体建設
(第1期・第2期)工事
場所:北海道三笠市
工期:2016年8月~2021年3月
発注者:国土交通省北海道開発局
規模:重力式コンクリートダム
堤高75.5m 堤頂長397.0m
堤体積59.5万m3
(いずれも嵩上げ後)
学会論文発表実績
- 「次世代コンクリート出荷管理システムの適用実績」,土木学会第74回年次学術講演会,2019年
A4CSEL®(クワッドアクセル)
建設機械の自動化による次世代の建設生産システム
建設作業の多くは人の手に頼ってきましたが、ここ数年、熟練技能者不足と高齢化だけでなく建設作業者全体の大幅な減少傾向が続いています。また、年々減少しているものの労働災害件数の全産業における発生率は依然高い状態にあります。
これらの課題・問題の解決には生産性と安全性を飛躍的に向上させる施工システムが必要と考え、鹿島は、作業指示を送ることで、自動化された建設機械が自律・自動運転を行い、必要最小限の人員で多数の機械を同時に稼働させることをコンセプトとした、次世代の建設生産システムを実現しました。
A4CSEL(Automated / Autonomous / Advanced / Accelerated Construction system for Safety , Efficiency , and Liability)は、従来のリモコン等による建設機械の遠隔操作とは異なり、人間がタブレット端末で複数の建設機械に作業計画を指示することにより、無人で自動運転を行うものです。
国土技術開発賞二〇周年記念大賞
平成30年度日本建設機械施工大賞 大賞部門最優秀賞
第19回国土技術開発賞 最優秀賞
平成28年度土木学会賞 技術開発賞
第46回日本産業技術大賞 文部科学大臣賞
特許出願中
A4CSELのダム堤体での施工イメージ
関連情報
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キーワード
- 自動化、振動ローラ、ブルドーザ、ダンプトラック、ダム工事、生産性、効率化
A4CSELの概要
A4CSELは専用の自動機械を使うのではなく、汎用の建設機械にGPS、ジャイロ、レーザスキャナなどの計測機器及び制御用PCを搭載することによって自動機能を付加し、自動運転を実現していることが大きな特長です。また、施工条件の異なる数多くの作業での熟練オペレータの操作データを収集・分析し、自動運転の制御方法に取り入れているため、熟練オペレータと同等の品質が得られます。更に、リアルタイムでの自己位置・姿勢、周辺状況の計測結果から、人や障害物の他、走路の安全性などを認識し、自動停止、自動再開などの機能を備える等、安全性を確保した自律運転を実現しています。
A4CSELによって少人数で多数の建設機械を扱うことが可能となりました。また、機械に設置されたセンサ類から得られる出来形などの施工データを3次元設計・施工モデルへ反映させることで、CIM、i-Construction※の推進にも貢献します。
※i-Constructionは国土交通省国土技術政策総合研究所長の登録商標です。
自動化装備した振動ローラ
自動ブルドーザのシステム構成
A4CSELによる自動運転
自律型自動振動ローラによる
転圧作業の自動化
汎用の振動ローラを自動運転可能に改造し、五ケ山ダムのRCDコンクリートの転圧作業に初めて実適用しました。直線走行、切り返し走行とも、誤差が±10cm以下に収まっていることが確認され、熟練オペレータと同等の施工精度を確保しています。大分川ダム、小石原川ダムではロックフィルダムのコア材の転圧を複数の自動振動ローラで行いました。
自動振動ローラ
自律型自動ブルドーザによる
まき出し作業の自動化
コマツ製のICTブルドーザに自動化機器・装置を搭載し、熟練オペレータの実施工における操作データを分析するとともに、走行経路やブレードの高さの違いによって、材料の広がり形状を予測するシミュレータを開発し、自動ブルドーザの制御方法に適用することにより、土砂はもとより、より条件の厳しいRCDコンクリートのまき出しにも適用できることを五ケ山ダムで確認、大分川ダム、小石原川ダムではコア材のまき出しを行いました。
自動ブルドーザによるまき出し状況
自律型自動ダンプトラックによる
運搬と荷下ろし作業の自動化
振動ローラとブルドーザの自動化に続き、ダンプトラックの自動化を行いました。55t積級の汎用ダンプトラックにGPS機器や制御PC、自動化機器等を搭載し、あらかじめ指示された位置までの自動運搬と、指定位置でのダンプアップ(荷下ろし作業)の自動化に成功しました。
中央コア型ロックフィルダムである大分川ダムにおいて、堤体のコア材盛立作業に自動ダンプトラックと自動ブルドーザの導入試験を行い、自動ダンプと自動ブルドーザを連動させ、コア材の運搬→荷下ろし→まき出し→整形の一連の自動化の流れを確認しました。
自動ダンプトラック
大分川ダムにおけるA4CSEL(動画:3分00秒/音声あり)
小石原川ダムでコア材の盛立を実施
2018年11月、小石原川ダム本体建設工事(福岡県朝倉市・東峰村)において、A4CSELの自動化重機により、初めて本格的な堤体の盛立作業を行いました。管制室からの指示により、自動ダンプトラック3台、自動ブルドーザ2台、自動振動ローラ2台の計7台の自動化重機が、5時間にわたる連続作業を行い、コア材一層分(約1,300m3)の盛立を完了しました。
小石原川ダムでの本格稼働実績をもとに、成瀬ダム堤体打設工事(秋田県雄勝郡東成瀬村)に、自動化重機を20~30台規模で適用し、台形CSGダムの堤体打設作業を行う予定です。
(上)管制室から自動化重機に指示を出す
(右)小石原川ダムでのコア材盛立の様子、自動ブルドーザの後ろで自動振動ローラが転圧を行う
小石原川ダムにおけるA4CSELのコア材盛立の様子(動画:3分03秒/音声あり)
適用実績
五ケ山ダム堤体建設工事
場所:福岡県那珂川市
竣工年:2018年3月
発注者:福岡県
規模:重力式コンクリートダム
堤高102.5m 堤頂長556m
堤体積93.5万m3
大分川ダム建設
(一期・二期)工事
場所:大分県大分市
竣工年:2019年11月
発注者:国土交通省九州地方整備局
規模:中央コア型ロックフィルダム
堤高91.6m 堤頂長496.2m
堤体積378.1万m3
小石原川ダム本体建設工事
場所:福岡県朝倉市・東峰村
工期:2016年4月~2020年3月
発注者:独立行政法人水資源機構
規模:ロックフィルダム
堤高139m 堤頂長約550m
堤体積約830万m3
学会論文発表実績
- 「振動ローラの自動転圧システムの開発 ― RCD ダム施工での試験適用」,土木学会,第70回年次学術講演会,2015年
- 「ブルドーザの自動撒出しシステムの開発」,土木学会,第70回年次学術講演会,2015年
- “Next Generation Construction Production System Focusing on Automation Technologies of Construction Machines”,The 7th Civil Engineering Conference in the Asian Region(第7回アジア土木技術国際会議) Proceedings,2016年
- 「建設機械の走行制御と目標経路生成について」,第16回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会,2015年
人工筋肉ロボットの伐採重機への適用
「キッタロー君®」
運転席搭載型ロボットによる伐採作業の無人化施工システム
中間貯蔵施設の建設工事では、山林の伐採作業が多く発生することが予想されますが、山林は住宅地、道路と違い未除染区域であることから、重機オペレータの被ばく量低減が重要な課題です。
鹿島では、運転席に搭載するだけで様々な重機を遠隔操作できる人工筋肉ロボット「アクティブロボットSAM※1」と、伐採用アタッチメントである「フェラーバンチャザウルスロボ※2」を組み合わせた伐採用無人化施工システム「キッタロー君」をコーワテックと共同開発しました。
※1 コーワテックの製品
※2 松本システムエンジニアリングの製品
フェラーバンチャ仕様伐採重機
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キーワード
- 遠隔操縦、リモコン重機、人工筋肉ロボット、人工筋肉、伐採、伐倒、抜根、フェラーバンチャ、A-SAM、キッタロー君、
無人化、ロボット、ラジコン、自動化、建設機械
システムの概要
人工筋肉ロボット(A-SAM)は、搭載型の遠隔操縦ロボットで、重機の機種やメーカーに限定されることなく、運転席に搭載することで遠隔操縦を実現できます。人工筋肉とは、エアチューブに入れるエア圧力を制御し、エアチューブ膨張時の収縮を利用した機構です。
従来の伐採工事は、チェーンソーを使った手作業が主体でしたが、近年は機械化施工が進んでいます。伐採用アタッチメント(フェラーバンチャ)は、伐採工事で使う複数の作業を可能にするアタッチメントで、立木の伐倒、抜根、木材の移動、掘削、転圧の5つの機能を有しています。
人工筋肉ロボット(A-SAM)
フェラーバンチャの機能
システムの特長
人工筋肉ロボットによる
遠隔操作
人工筋肉ロボットは、重量52kg程度で、3分割が可能で、運転席への設置も2名で1時間程度で行うことができます。また、リモコンでの遠隔操作については、目視並びにカメラ映像による操作が可能で、10分程度の練習で行うことができます。
リモコン及び運転操作状況(カメラ画像による運転)
遠隔操作の様子(動画:30秒/音あり)
伐採用アタッチメント(フェラーバンチャ)
フェラーバンチャはベースマシンとなる油圧ショベルのバケット部に装着するアタッチメントですが、伐採する木材をつかむ⇒切る⇒切ったまま把持⇒移動⇒集積まで、伐採工事で行う複数の作業を1台で行うことができ、作業の大幅な効率化が図れるとともに、オペレータの被ばく量を大幅に低減することができます。
人工筋肉ロボット(A-SAM)搭載の伐採重機運転状況
4ブームフルオートコンピュータジャンボによる
施工の合理化
専任のオペレータ1名によるせん孔作業を実現
山岳トンネルの現場では発破孔のせん孔位置合わせが自動で行えるドリルジャンボが導入されてきています。しかし、これまでのコンピュータジャンボは作業員がキャビン内の小型画面を見ながらブームを誘導しなければならず、作業員の熟練度に依存するとともに、1ブームあたり1名の作業員が必要でした。
そこで鹿島は、日本初となる4ブームフルオートコンピュータジャンボ(アトラス社製XE4C)を、新区界トンネル(岩手県)の本坑掘削に適用しました。
同機が持つフルオートせん孔機能により、専任オペレータ1名によるせん孔作業を実現し、最新鋭ドリフタの機能向上により、せん孔時間が2分の1以下に低減、また、余掘りも40%低減できることを確認しました。
令和元年度日本建設機械施工大賞 大賞部門最優秀賞
アトラス社製XE4C 4ブームフルオートコンピュータジャンボ
関連情報
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キーワード
- 急速施工、コンピュータジャンボ、フルオートせん孔
4ブームフルオートコンピュータジャンボの概要
従来のコンピュータジャンボは、作業員がキャビン内の画面を見ながらブームをせん孔位置に誘導しなければなりませんでしたが、この4ブームフルオートジャンボのフルオートせん孔機能は、あらかじめ入力したせん孔位置に機械が自動で位置合わせを行うため、作業員の熟練度に頼らないせん孔作業を実現するとともに、4ブームを1名のオペレータで操作することが可能となっています。また、同機は、これまでのジャンボに比べ、ドリフタのせん孔性能が向上し、純せん孔速度が最大で2倍となっているほか、地山の硬軟に応じて自動的に最適な打撃力に調整されるため、せん孔中の孔閉塞が発生しません。
4ブームを1名の専任オペレータで操作が可能
さらに、搭載されているせん孔データの自動収集機能により、切羽前方やトンネル周辺の地山評価が可能です。
4ブームフルオートコンピュータジャンボ(動画:23秒/音あり)
4ブームフルオートコンピュータジャンボ導入による効果
4つのブームを1名の専任オペレータで
従来は1ブームあたり1名の作業員が必要でしたが、フルオートジャンボは4つのブームを1名のオペレータで操作することができます。これまでは坑夫と呼ばれるトンネル作業員がせん孔時にはブーム操作を行っていましたが、専任のオペレータ1名が4つのブーム操作を行うため、他の作業員は次の作業の段取りなど、別な仕事を行うことができ、省力化と効率化が図れます。
せん孔に要する時間が従来の半分に
本機はこれまでのジャンボに比べ、ドリフタ(せん孔装置)の性能が向上し、純せん孔速度が最大で2倍となっていることと、せん孔位置への自動誘導機能により、位置合わせ時間が大幅に短縮できるため、せん孔時間が従来の半分以下になることを確認しました。
余掘りを40%低減
コンピュータの自動制御により、せん孔パターン通りの角度や長さで正確なせん孔を行うため、余堀りを40%低減できることを確認しました。
従来機の場合(誘導機能なし)
フルオートジャンボの場合
せん孔データの自動収集で
地山を予測、CIMにも活用
本機に搭載されているせん孔データの自動収集機能(Mesurements While Drilling:MWD)により、地山状況に応じてせん孔パターンを修正するとともに、切羽前方やトンネル周辺地山の予測評価が可能となることにより適切な支保パターンの選定が行えます。また、これらのデータを蓄積することにより、CIMの地質モデルへの反映ができます。
せん孔速度より求めた切羽前方地山の硬軟度分布
適用実績
宮古盛岡横断道路
新区界トンネル
場所:岩手県宮古市~盛岡市
竣工年:2019年8月
発注者:国土交通省東北地方整備局
規模:全体L=4,998m
内空断面積94.9m2
避難坑 L=5,045m
内空断面積 15.5m2
国道45号 白井地区道路工事
(白井トンネル)
場所:岩手県閉伊郡普代村
竣工年:2019年3月
発注者:国土交通省東北地方整備局
規模:延長2,059m
内空断面積95m2
セグメント自動搬送システム
地上から切羽までセグメントを自動で搬送
シールドトンネル工事では、近年更なる長距離化が進み、また、高速施工も進んでいます。そのため、鹿島では、セグメント自動搬送システムを開発、数多くの現場に導入しています。
これにより安定した搬送サイクルが確保できるだけでなく、安全性の向上、セグメント搬送の人員削減など大きな効果を上げています。
セグメントの自動組立システムと併せ、シールド工事の無人化・自動化に取り組んでいます。
特許登録済
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キーワード
- 自動搬送システム、バッテリロコ、タイヤ搬送、セグメントドーリー、セグメントセッタ、中央管理室
特長・メリット
立坑内への搬送から切羽まで全自動搬送
立坑部には大型資材リフトを設置し、全自動のセグメントドーリーにより地上セッタからセグメントリフトを経由し、坑口に設置されたセグメントセッタまでの搬送を自動化しています。タイヤ式自動搬送システムと併せて、立坑内へのセグメント投入から切羽までの全自動搬送が可能となっています。
55tリフト(地上部)
セグメントドーリー
セグメントセッタ
中央管理室で自動運行を集中管理
各台車の位置は、ステーションごとに設置されているIDタグを台車が読み取り、無線により中央管理室に転送され、中央管理室では、坑内のすべての台車の位置を把握、管理することができます。
中央管理室
障害物センサなどで安全性を確保
台車の前後には障害物センサと障害物バンパを設置し、安全性を向上させています。また、坑口から1km付近に逸走防止装置を設置し、既定の速度を超えた場合に、搬送を停止できる安全機能を備えています。
タイヤ式とし、枕木設置を省略
中央環状品川線では、高速施工に対応するため、1リング分のセグメントを一括で高速運搬(時速10km)できるタイヤ式搬送台車を採用し、センター部のみに軌条を敷設するセンターレール方式にしました。これにより坑内への枕木設置を省略でき、工期、コストの短縮に寄与します。
センターレール及びタイヤ式による搬送状況
適用実績
東京電力 東西連携ガス
導管新設工事(富津工区)
うち土木工事
場所:千葉県富津市~東京湾
工期:2003年4月~2008年3月
発注者:東京電力
規模:シールド機外径3.62m
掘進延長9,030m
中央環状線品川線
シールドトンネル(北行)工事
場所:東京都品川区~目黒区
工期:2007年2月~2013年2月
発注者:首都高速道路
規模:シールド機外径12.3m
掘進延長8,010m
学会論文発表実績
- 「大断面長距離シールドにおける月進400m高速施工への挑戦」,第7回日中シールド技術交流会,2013年9月
- 「泥土圧式シールド機による大断面、長距離シールド掘進 中央環状品川線」,第38回世界トンネル会議2012(タイ国 バンコック市),2012年5月
- 「中央環状品川線 約8kmの長距離・高速施工」,土木技術,2009年12月号,2009年12月
- 「大断面長距離シールドトンネルにおける高速施工の実績」,土木学会,第67回年次学術講演会,2012年9月
- 「長距離・大断面泥土圧式シールドの立坑部におけるトンネル大型資材搬入リフトの適用」,建設機械,2012年12月号,2012年12月
ケーブルクレーン自動化運転システム
ケーブルクレーンの運転を自動化して、
運搬効率と安全性を向上
ケーブルクレーン自動化運転システムは、オペレータに代わりコンクリートバケット(以下CB)を吊ったケーブルクレーンを自動運転するシステムです。オペレータが運搬先の目標位置を設定するだけで、CBがコンクリートを受取るバンカ線からコンクリートを放出する堤体ホッパまでの往復運転を全自動で行います。オペレータは運転状況の監視を行うのみです(右図版参照)。また、運行ルート上の障害物を回避するルート設定や、高精度の振れ止め・位置決め制御により、全ての打設エリアにおいて正確でスムーズな運搬が可能です。
自動運転全体構成
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キーワード
- コンクリートダム、コンクリート運搬設備、自動運転、振れ止め
特長・メリット
信頼性・安全性の向上
- CB運搬ルート上の侵入禁止エリアを、容易に設定できるため、障害物(重機や構造物等)とCB との衝突を確実に防止できます。
- CBゲートの誤開放防止装置を備えているため指定場所以外で誤開放しません。
安定したコンクリート打設サイクルの確保
- オペレータの技能差による運搬能力のバラツキがなくなり、安定したコンクリート打設サイクルを確保することが可能で、工期短縮にもつながります。
自動運転監視状況
高精度な振れ止め・位置決め制御
- ケーブルクレーンの加減速時に発生する振れを打ち消す制御を行いながら運転するため、目的位置への正確かつスムーズな運搬が可能です。さらに、横行トロリを牽引するワイヤのたるみ(横行索サグ)に起因する応答遅れを都度計算し、横行停止位置の補正を行います。そのため、全ての運搬エリアで高精度な振れ止め・位置決め制御が可能です。
コンクリート放出状況
適用実績
嘉瀬川ダム
場所:佐賀県佐賀市
竣工年:2012年3月
発注者:国土交通省九州地方整備局
規模:堤高97m 堤頂長460m
堤体積122万m3
湯西川ダム
場所:栃木県日光市
竣工年:2012年9月
発注者:国土交通省関東地方整備局
規模:堤高119m 堤頂長320m
堤体積約103万m3
第二浜田ダム
場所:島根県浜田市
竣工年:2016年10月
発注者:島根県
規模:堤高97.8m 堤頂長218m
堤体積32.4万m3
五ケ山ダム堤体建設工事
場所:福岡県那珂川市
竣工年:2018年3月
発注者:福岡県
規模:重力式コンクリートダム
堤高102.5m 堤頂長556m
堤体積93.5万m3