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コンクリート表層品質向上のための
「美(うつく)シール®工法」
より美しく、より耐久性の高いコンクリートを実現する
全く新しい養生技術
コンクリート構造物の耐久性を低下させる劣化因子は、コンクリートの表面から侵入します。したがって、コンクリートの表層品質を高め、劣化因子の侵入を防止することで、耐久性の高い構造物を構築することができます。
表層部の高品質化の一手段として、セメントの水和反応を最大限発揮させるには、入念でかつ十分な期間の湿潤養生が有効であると考えられています。
「美シール工法」はシートの高撥水性による表面気泡低減効果と型枠脱型後もシートを残置させ長期養生することにより、表層品質の改質を可能とする新しい養生技術です。美シール工法により、構造物の耐久性を向上させることができます。
※「美シール」は、鹿島、積水成型工業および東京大学が共同で開発したものです。
平成28年度土木学会賞技術開発賞
2018年コンクリート工学会賞技術賞
特許登録済
NETIS KT-190003-A
劣化因子の侵入と鋼材腐食の概念図
高撥水性シート
関連情報
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キーワード
- 養生、シート養生、耐久性、表層品質、かぶり、中性化、塩害
施工方法
美シール工法は、せき板の内側に高撥水性シートを貼りつけた型枠を建て込み、そこにコンクリートを打ち込みます。シートの高撥水性により表面気泡を低減することができ、脱型時にシートをコンクリート側に残置させることで、コンクリートの表面を一度も乾燥させることなく、長期間にわたって湿潤状態を保ち、表面を緻密化することができます。
美シール工法概要
従来工法との比較
- 表面気泡の低減と長期養生が両立できます。
- 打込みから養生終了まで1度も外気に曝されません。
- 場所打ち、プレキャストなど各種工法に適用可能です。
シート残置状況
特長・メリット
表面気泡の低減
- 高撥水性シートにより表面気泡を低減でき、コンクリート表面の美観が向上します。
美シール工法の表面気泡低減効果
シートによる長期養生
型枠取外しの際、シートはコンクリートに残置するため、コンクリート中の水分を封じ込めることができ、セメントの水和反応が長期にわたって継続します。これによりコンクリートの耐久性が向上します。
表層品質向上効果
- 美シール工法による表面気泡低減と長期間養生によって、コンクリートの耐久性が著しく向上します。
- 中性化抵抗性や塩害抵抗性が向上し、コンクリート構造物の長寿命化に寄与します。
- 特に、高炉セメントB種などの混合セメントに対して優れた耐久性向上効果を発揮します。
美シール工法による劣化因子の侵入抵抗性の向上
適用実績
長部高架橋
場所:岩手県陸前高田市
竣工年:2017年3月
発注者:国土交通省東北地方整備局
規模:1,712m2
平成27年度中防内5号線
橋りょうほか整備工事
場所:東京都
発注者:東京都港湾局
規模:約3,000m2
学会論文発表実績
- 「実規模試験体を用いた熱可塑性樹脂シートによる養生効果の検討」,コンクリート工学年次論文集,2015年7月
- 「熱可塑性樹脂シートによる長期間の水分逸散抑制養生の効果」,コンクリート工学年次論文集,2015年7月
- 「コンクリート表層の耐久性を向上する『美シール工法』」,セメント・コンクリート,2016年1月
- 「高撥水性シール工法によるコンクリートの表層品質向上技術」,コンクリート工学,2016年11月
コンクリートの施工性能評価システム
コンクリートの圧送性や充塡性を評価して初期欠陥を防止
コンクリート構造物を構築する上で、構造物の形状や配筋量などの構造条件、圧送や打込み・締固め方法などの施工条件に対して適切なコンクリート配合を用いなければ、未充塡やコールドジョイントなどの初期欠陥が発生して構造物の品質を損なう恐れがあります。このため、計画段階でコンクリートの施工性能を評価し、適切な施工方法やコンクリート配合を選定することが重要です。
コンクリートの施工性能評価システムは、土木学会「施工性能にもとづくコンクリートの配合設計・施工指針」の考え方に則して、フレッシュコンクリートの施工性能(圧送性・充塡性)を定量的に評価し、初期欠陥の防止を支援するツールです。
特許登録済
評価画面の例
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キーワード
- コンクリート、施工性能、圧送性、充塡性、初期欠陥
システムの詳細
本システムでは、条件設定を行ったあと圧送性の評価を行い、そのデータを自動で引き継いで充塡性を評価します。
圧送性および充塡性の評価では、それぞれポンプ閉塞および未充塡の発生確率を算出します。それぞれの発生確率は、構造条件や施工条件とスランプ(流動性)および単位セメント量(材料分離抵抗性)で表現されるコンクリートの施工性能の関係を用い、スランプの変動を正規分布と仮定した確率論に基づき計算されます。ここで用いている、コンクリートの施工性能の関係は土木学会「施工性能にもとづくコンクリートの配合設計・施工指針」に示されているものです。本システムは、同指針の考え方に準拠しつつ、さらに確率論を加えることで定量評価を可能としたものです。
未充塡の発生確率の算出方法
土木学会「施工性能にもとづくコンクリートの配合設計・施工指針」
特長・メリット
システムの使用性が高い
- コンクリートの使用材料や配合、部材の種類、配筋量、締固め作業高さなど基本的な条件のみを用いるため、誰でも簡単に操作できます。
- 計算時間がわずかであるため、条件変更などによる繰返しの検討が可能です。
入力画面
圧送性と充塡性を定量的に評価
- 圧送性として、ポンプ閉塞の発生確率を算出します。
- 充塡性として、未充塡の発生確率を算出します。
- 不具合の発生確率を用いて定量的に評価できるため、構造条件の見直しや施工方法の改善・工夫、適切なコンクリート配合の選定などに役立ちます。
圧送性に関する評価結果の例
充塡性に関する評価結果の例
適用実績
鹿島では、振動締固めを行う一般的なレディーミクストコンクリート(スランプ8~18cm程度)を用いる全ての土木現場を対象に、施工計画時に本システムを活用してコンクリートの施工性能を評価することを原則としています。
学会論文発表実績
- 「施工性能にもとづくコンクリートの配合設計・施工指針」,土木学会,2016年6月
- 「初期欠陥を未然に防ぐコンクリート施工性能評価技術」,コンクリートテクノ,2006年11月
- 「(解説)初期欠陥を未然に防ぐコンクリート施工性能評価技術について」,コンクリート工学,Vol.43,No.2,2005年2月
- 「セメント・コンクリートの潜在力と変化する社会への対応,環境負荷低減と初期欠陥を未然に防ぐための施工性能評価の視点から」,セメント・コンクリート,No.707,2006年1月
- 「(報告)コンクリートの施工の問題点とそれらを解決する施工性能評価システムの提案」,橋梁と基礎,2005年10月
目視調査に基づくコンクリート表層品質評価システム
コンクリートの表層品質を目で見て評価し、
品質向上へとつなげる技術です
本手法は、コンクリート構造物の表層品質について、目視評価に基づき、簡便かつ定量的に評価できる品質管理手法です。
施工現場においては、PDCAサイクルを回して常に改善を図っていきます。しかし、コンクリート工事において、これまではPDCAサイクルにおける「C;Check」の合理的な評価手法が確立されていませんでした。
そこで、鹿島は「美しいコンクリートは品質と耐久性の高いコンクリートである」を基本的な概念として、いわゆる「見栄え」を尺度とした評価手法を横浜国立大学細田教授と共同で開発しました。この評価手法を用いることにより、コンクリート構造物の表面状態を施工者自らが定量的に評価可能となり、その結果に基づいて具体的な改善・工夫を講じることができ、結果として品質向上に貢献できます。
2019年日本コンクリート工学会賞 技術賞
コンクリート表層品質向上に関するPDCAサイクル
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キーワード
- 表層品質、品質向上、目視調査、PDCA、かぶり、美観
本評価手法の概要
コンクリート構造物の耐久性を低下させる劣化因子は、かぶりコンクリートを通じて表面から内部に侵入するため、かぶりコンクリートの品質が非常に重要になります。一方、かぶりコンクリートの品質は、使用材料や配合などに加えて、型枠、打込み、締固めおよび養生などの施工の影響を大きく受けます。そのため、同一のコンクリートを用いて構造物を構築したとしても、施工の良し悪しによって極めて品質の高いものから逆に品質の低いものになる場合もあります。本手法は、コンクリート工事における型枠取外しの際に、コンクリート構造物の表面状態について、鹿島が独自に開発した右の「目視評価シート」を用いて定量的に評価するものです。目視による評価結果に基づきPDCAを回すことで次の施工において改善が行われ、コンクリート構造物の品質向上に大きな効果を上げています。
本手法の適用実績と効果検証
鉄道RCラーメン高架橋
既設路線を高架化する鉄道RCラーメン高架橋(1~3期)に本技術を用いてPDCAサイクルの運用に適用しました。その結果、目視評価の評価値が工期の進捗に伴って改善向上しました。施工段階で以下の工夫、改善が実施されました。
- 標本ブロックを用いた締固め、剥離剤の最適化検討
- 打込み中の型枠汚れを防止するシートの適用
- 打重ね時間間隔、締固め時間の管理の徹底
RCラーメン橋での目視調査状況
目視評価の結果
ボックスカルバート中柱
東京外環自動車道国分工事では、「C;Check 表層品質評価」から、「A;Action 施工法の改善・工夫」までを独自に検討し、構造物の品質向上を図りました。
- 施工時のコンクリートの性状、運搬、打込み、環境のデータ(例えば、スランプ、運搬時間、温度など)の取得
- コンクリート構造物の表層品質を目視評価法で実施
- 評価結果のトレンドを把握して、表層品質に影響している施工要因を分析
- 施工法に的確な改善・工夫を施し、表層品質をさらに向上
東京外環自動車道国分工事 剥離剤の変更検討
適用実績
西武鉄道池袋線
石神井公園駅付近高架化
場所:東京都練馬区
竣工年:2013年
発注者:西武鉄道
規模:高架橋5基 橋脚3基
RC桁3連 PC桁5連
東京外環自動車道 国分工事
場所:千葉県市川市
竣工年:2019年
発注者:東日本高速道路
規模:1.8kmの壁 中柱
川井浄水場
場所:神奈川県横浜市
竣工年:2015年
発注者:ウォーターネクスト横浜
規模:処理能力172,800m3/日
学会論文発表実績
- 「目視評価法を活用したコンクリート構造物の品質確保の取組み」,コンクリート工学,Vol.54,No.10,2016年10月
- 「コンクリート構造物の品質向上と表層品質評価手法」,コンクリート工学,Vol.50,No.7,2012年7月
- 「目視調査に基づくコンクリート構造物の表層品質評価手法の実績と調査結果を反映した表層品質向上技術」,コンクリート工学,Vol.52,No.11,2014年11月
- 「目視調査に基づくコンクリート構造物の表層品質評価手法の特徴・傾向に関する分析」,コンクリート工学年次論文集,Vol.37,No.1,2015年
- 「目視評価法によるコンクリート構造物の表層品質評価の継続的適用と各種品質向上施策の効果の検証」,コンクリート工学年次論文集,Vol.39,No.1,2017年
ロープを引いて広げる配筋作業
「ラクラクロールマット工法」
ロール状のユニット鉄筋をロープで展開して配筋作業を効率化
従来の配筋作業は、鉄筋の位置出しから運搬および間配り、結束まで、全て人力による作業であり、重量物の運搬や中腰での現場作業は、作業員にとって大きな肉体的負担でした。特に、面積が広い土木構造物の配筋作業ではその負担が大きく、熟練作業員の高齢化等、将来の担い手確保が問題となる中、鉄筋のユニット化による配筋作業の省力化が望まれていました。
そこで、鹿島はスギウラ鉄筋と共同で、ロール状の鉄筋を引きながら広げるだけで配筋作業が完了する「ラクラクロールマット工法」を開発しました。
ラクラクロールマット工法の施工状況
ラクラクロールマット工法では、複数の鉄筋を任意の間隔ですだれ状につないだ鉄筋ユニットを、展開用のロープと一緒に専用の機械※でロール状に巻き取ることで「ロールマット」を製作します。現場では、搬入された「ロールマット」を、作業員が所定の位置でロープを引いて展開することで効率的に配筋作業を行うことができます。
※PEDAX社(本社:ドイツ)製。日本国内での独占販売権は、スギウラ鉄筋から継承しロールマットジャパンが所有しています。
特許出願中
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キーワード
- 鉄筋組立、先組鉄筋、生産性向上
ラクラクロールマット展開の様子(動画:33秒/音あり)
施工ステップの概要
1.ロールマット製造機械でロールマットを機械製作します。
2.段取り筋を配置し、ロールマットを設置する箇所を位置出しします。
3.ロールマットを現場へ運搬して、配筋箇所に設置します。
4.ロールマットに巻き込んだロープを引っ張ることで、ロールマットを展開します。
5.展開されたロールマットの鉄筋の位置を微修正して、結束作業を行い、配筋作業を完了します。
従来の配筋作業とラクラクロールマットの施工方法の比較
特長・メリット
配筋作業の生産性が向上
- 太径の鉄筋で重量がある場合でも、ロープを引くことで無理なく配筋できます。
- 現場での適用では、従来の配筋作業と比較して、作業時間が約半分となる実績が得られています
ラクラクロールマットの適用実績
配筋精度が向上
- ロールマットは機械製作されるため、配筋ピッチ等で高い精度が期待できます。
- 作業員が配筋範囲全体を見渡しながらロープを引いてロールマットを展開するため、展開後の配筋精度が向上します。
ロールマット製造機械(PEDAX社製)
作業員の肉体的負担を軽減、安全性を向上
- 広範囲な現場での鉄筋の運搬、間配り作業が無くなるため、作業員の肉体的負担が軽減します。
- 作業員が動かずにロープを引いてロールマットを展開するため、鉄筋上での不安定な作業が減り、足の踏み外しやつまずきなどによる災害のリスクを軽減します。
安全に無理のない姿勢でロープを引いて配筋
適用実績
新名神高速道路
高槻インターチェンジ中工事
場所:大阪府高槻市
竣工年:2019年4月
発注者:西日本高速道路 関西支社
規模:橋台基礎 長さ41.5m
幅11.5mの配筋(D13)に適用
東京外環自動車道
市川中工事
場所:千葉県市川市
竣工年:2020年7月(予定)
発注者:東日本高速道路
規模:擁壁底版 長さ32.3m
幅12.7mの配筋(D19、D25)に適用
学会論文発表実績
- 「ロールマット工法による配筋作業の生産性向上」,土木学会第72回年次学術講演会,2017年9月
人間工学に基づいた軽量設計
「ウェアラブルバイブレータ®」
コンクリート締固め作業の省人化、品質向上を実現
一般的にコンクリートの締固め作業においては、振動体、インバータ、および電源装置がそれぞれコードで接続された太径のバイブレータが用いられ、その操作者に加え、通称「線持ち」と呼ばれる、コードを取り回す補助作業員が必要です。海外では小型のエンジンを駆動源とした背負い式のバイブレータが使われていますが、非常に重く、また排気や騒音、安全性の問題もあり、国内での使用には不向きです。
ウェアラブルバイブレータは、駆動源をバッテリーとして、日本人の体格にも適するように軽量化を実現したコードレスバイブレータです。コンクリート打込み作業における補助作業員の省人化や、丁寧かつ機動的な締固めの実現による品質の向上に寄与します。
特許出願中
ウェアラブルバイブレータ
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キーワード
- コンクリート、締固め、バイブレータ、省人化
特長・メリット
コンクリート締固め作業の省人化
- 電源装置などとの接続コードがなく、補助作業員が不要となるため省人化を図ることができます。
コンクリートの品質を向上
- 補助作業員が行っていた電源のON/OFFを操作者自身が手元で行うことができるため、丁寧かつ機動的な締固め作業を実現できます。
- 配線の取り回しが不要であるため、狭あいな場所での確実な締固めが容易となります。
ウェアラブルバイブレータによる施工状況
軽量化と長時間の連続運転を実現
- カートリッジ式バッテリーを採用することで、装置全体重量として10kg未満を実現しました。
- 予備バッテリーと急速充電器を併用すれば、使用時間に制限無く連続で作業を行うことが可能です。
ウェアラブルバイブレータの主な仕様
適用実績
相鉄・東急直通線新横浜駅地下鉄交差部土木工事
場所:神奈川県横浜市
竣工年:2020年3月(予定)
発注者:横浜市交通局
規模:スラブコンクリートに適用
中央浄化センター水処理施設建設工事
場所:千葉県千葉市
竣工年:2019年10月(予定)
発注者:千葉市
規模:均しコンクリートに適用
学会論文発表実績
- 「人間工学に基づいた軽量設計『バッテリー式ウェアラブルバイブレータ』の開発」,土木学会第73回年次学術講演会,2018年8月
- 「人間工学に基づいた軽量設計『ウェアラブルバイブレータ®』の開発」,建設機械施工,2018年11月