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ユニバーサルデザイン

使い手とつくり手が
呼応するデザイン

原 利明 グループリーダー
一級建築士 / 博士(人間科学)
鹿島 建築設計本部 品質技術管理統括グループ
ユニバーサルデザイングループ

【プロフィール】
設計の実務でユニバーサルデザインを具体化するための提案やコンサルティングを担当し、視環境や感触の異なる床材の識別容易性に関する研究も行っている。ユニバーサルデザインの専門家として大学の非常勤講師や各種学会、国の委員会などでも活動。

原 利明

Q:ユニバーサルデザインの業務にかかわるきっかけは?

2001年頃からユニバーサルデザインにかかわっています。当時、ユニバーサルデザインに強い関心をお持ちの眼科医と一緒に「見やすさとデザイン」というテーマで写真を撮り歩いていたところ、興味深いことを発見しました。それは、デザイン要素である色、光・照明の計画の仕方や素材の使い方しだいで、見やすくてわかりやすい空間になっていることでした。そして、「見やすさとデザイン」について社内講演会で話したことがきっかけとなりました。その後、中部国際空港のユニバーサルデザイン検討会に参加する機会があり、そこでの内容を本にまとめるなどして多くのことを学びました。

Q:実務でユニバーサルデザインをどのように展開していますか?

最近、PFIや総合評価方式などが増え、ユニバーサルデザインの提案が欠かせなくなってきています。実際の設計でユニバーサルデザインを具体化するためのコンサルティングを行っています。また、社内外での講演活動や大学講師のほか、社外の研究機関や大学 などとユニバーサルデザインを実現するために、様々な研究活動にも参加しています。このような活動から、高齢者・障がい者に配慮した設計にかかわるJISやISOの検討委員会、国のバリアフリー関連の委員会の委員なども務めています。

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Q:ユニバーサルデザインの分野で「コンフリクト問題」という言葉を聞きますがどのような問題ですか?

建物をつくるということは、様々な課題や条件をインテグレート(統合)していくことです。すべてのニーズを取り入れていくことが理想ですが、実際には応えきれていないのが現実です。なぜならユニバーサルデザインの視点で言うと、身体能力や身体状況、立場などでニーズが異なってくるからです。

これはコンフリクト問題といわれ、ユニバーサルデザインを実現する上での難しさの1つです。例えば、シースルーエレベータは聴覚に障がいがある方には、非常時にボディーランゲージなどで外部へ連絡がとれることから高いニーズがありますが、ものが見えにくい方にとってはどこが出入口かわかりにくく、使いにくいという声があります。

Q:コンフリクト問題にはどのように対応していくのですか?

できる限り一人でも多くの人が使いやすいように考えていくことが重要だと考えています。いろいろと難しいところはありますが、設計者の知恵と工夫の見せどころです。

Q:例えばその知恵と工夫とはどんなことですか?

ユニバーサルデザインは、茶道と共通する部分があると思っています。茶道では、茶会を主宰する亭主はそのテーマにあわせて様々な準備をします。

その空間は、光や音、匂いなど、五感に語りかける細やかな心遣いで満ち溢れています。

これに対して迎えられる客は、亭主のこうしたしつらえを読み取ろうとします。ここでは「つくり手」と「使い手」が呼応しながら空間と時間を作り上げている感じがします。

これらをユニバーサルデザインの視点から建築に展開していくことを考えてみると、例えば、視覚障がい者のためには、誘導ブロックがありますが、それですべてを解決できるわけではありません。視覚障がい者の多くは、誘導ブロック以外に様々な情報を歩行の手掛かりとして空間を認知しています。床の素材感や凹凸、天井の高さや壁の吸音率の違いからくる反射音の変化、周囲の音などです。

空間認知に用いる手がかりを設計者が理解し、計画的にさりげなくデザインする。そうすることで誰もが空間認知の手がかりを読み取り、その空間を自由に移動できる。それは空間を介して使い手とつくり手が呼応していることになるのです。

Q:ユニバーサルデザインで実現したい夢は
何ですか?

このように「もてなし」の日本の精神をベースにした日本発のユニバーサルデザインを全世界に発信していくのが夢です。

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