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ユニバーサルデザイン

建築デザインからみたユニバーサルデザイン

国籍や性別、年齢、身体能力に関らず、誰もが一緒に興奮し感動できるスポーツ施設。誰もが買物を楽しめる商業施設。誰にとっても治療を受けやすい医療施設――。多様な身体能力や身体状況の利用実態を深く理解し、様々な利用シーンを考えることで、1人でも多くの方が使いやすい施設となるよう、鹿島は考えています。

例えば、日本製紙クリネックススタジアム宮城では、観客の全員が観戦しやすいよう設計されています。車椅子で観戦するサポーターも観客の皆さんと一緒に選手のプレーが見られるよう座席の設置に配慮しています。

車椅子専用スペースを複数設け、車椅子利用者が観戦しやすいようにしています。

車椅子専用スペースを複数設け、車椅子利用者が観戦しやすいようにしています。

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医療施設編オススメ

患者さんと医師、医療スタッフが快適な手術室「KVFS」
(KAJIMA Variant Flow System)

気流をコントロールして、患者さん周辺の低温度化と医師らの暑さを防止

手術室は、患者さんの命に関わるとても大事なところです。医師や医療スタッフが快適にオペするための室内環境が求められます。鹿島は、患者さん、医師や医療スタッフのそれぞれが快適な環境を実現する空調システム『KVFS』(KAJIMA Variant Flow System)を開発しました。

この空調システムは、天井の中央吹出口からは室温と同程度の清浄空気を高速で吹き出すことで、患者さん周りの低温度化を防止します。また、周囲の吹出口からは清浄な冷風を低速で吹き出すことで、医師や医療スタッフの暑さを緩和します。なお、従来の空調システムでは、手術台上部で気流断面が縮小する「縮流」という現象が生じ、清浄領域が狭くなっていましたが、このシステムでは「縮流」が発生せず、患者さんの感染リスクを減らすことができるようになりました。

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KVFS 概念図

KVFS 概念図

特長

  • 広い清浄域を確保
  • 患者さん周辺の低温化を防止
  • 医師や医療スタッフの暑熱感を緩和
  • 患者さんへの塵埃の落下防止

写真:KVFSを導入した手術室(東埼玉総合病院)

KVFSを導入した手術室(東埼玉総合病院)

部屋の外が見えるため安心して受診できるシースルーMRI

金属フレームで磁気を遮断

MRIは装置自体から強力な磁気を発生させ、体内を撮影する診断機器のことです。強力な磁気は、ペースメーカや他の精密診断機器に影響を及ぼす危険性があるため、室外への漏洩磁力を一定以下にシールドしなければなりません。

開放型磁気シールド(シースルーMRI)は、鹿島が開発した、磁気を遮蔽するスティック状の細い金属フレームを用いたMRI室です。従来の壁で密閉された閉鎖的なMRI室ではなく、大きな開口部をもちガラスで囲われた、明るく開放感のあるMRI室が実現できるようになりました。

子供や閉所恐怖症の方をはじめ、誰もが安心して快適に受診できる空間です。鹿島では、ユニバーサルデザインの観点から、受診者に近い視点で医療環境の改善に取り組んでいます。

図版:従来のMRI室とシースルーMRI

従来のMRI室とシースルーMRI

図版:子供など検査を怖がる受診者には、医療スタッフのほか、家族とのアイコンタクトもすることができます。心理・生理面からもサポートしています。

子供など検査を怖がる受診者には、医療スタッフのほか、家族とのアイコンタクトもすることができます。心理・生理面からもサポートしています。

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患者さんと医療従事者の安心を確保するためのイラスト表示
(ベッドサイドピクトグラム)

絵文字で患者さんの情報を共有する

ベッドなどからの転倒・転落事故は、患者さんにとっても医療施設側にとっても、防止しなければならない課題です。鹿島は医療スタッフと患者さんとのコミュニケーションツールを導入して、転倒・転落事故の防止を支援しています。

ベットサイドピクトグラムは、個々の入院患者さんの特性に対応した医療情報や行動情報、安全推奨行動などを、イラスト(ピクトラム:絵文字)でベットサイドに表示するシステムです。

患者さんごとの情報が分かるため、医療スタッフや患者さんの家族などで情報を共有して、患者さんの不安や焦りによる転倒・転落事故の防止、医療ミス防止にも繋がっています。

図版:絵文字で患者さんの情報を共有する イメージ

図版:ベッドサイドピクトグラム(表示例)

ベッドサイドピクトグラムの表示例(ベッドまわりのサインづくり研究会による)

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オフィス施設編

レーザーセンサーによる行動モニタリング

オフィススペースの使われ方を可視化する

鹿島ではレーザーセンサーを用いて建物内の人の活動を捉える行動モニタリングを行っています。
施設利用者の活動状況を計測しデータを蓄積。使いやすい空間構成、スペースの規模や寸法の計画に反映します。オフィスのコミュニケーションスペース、教育施設・医療施設などの建築計画においても活用しています。

事例:鹿島技術研究所 研究本館での行動モニタリング

図版:施設利用者の交流活動量

施設利用者の交流活動量

図版:鹿島技術研究所 研究本館

鹿島技術研究所 研究本館

この分布からコピー機、セクレタリ席周りは交流活動量が高い場所であることが分かります。
また、主要動線と離れた場所でも特定の人に相談するなどの活動が読み取れます。

様々な使われ方を考えたスペースを設置

鹿島技術研究所 研究本館では、オフィス計画にあたって、レーザーセンサーを用いた行動モニタリングで得られたデータを活用しました。事前に研究スタッフの執務の仕方やコミュニケーションの取り方を調査し、様々なワークシーンで見られる行為や動作の分析をもとに、使いやすいスペースを追求しました。

図版:執務フロア中央部に多目的に活用できるコミュニケーションHUB(ハブ)を設置

執務フロア中央部に多目的に活用できるコミュニケーションHUB(ハブ)を設置
ふすま型ホワイトボード・ディスプレイ・明るさ感照明などの家具やツールを動かし、
打合せ・イベント・昼食など使い方に応じて、最適な形で使用します。

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図版:業務特性に合わせてデスクレイアウトやパーティション高さを選択できる研究者席

業務特性に合わせてデスクレイアウトやパーティション高さを選択できる研究者席
デスク廻りの動作範囲、机上面の広さ、書類の保管や取り出しやすさなどを
モックアップで体感しながら選択パターンを設計しました。

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商業施設編

人を優しく迎える大きな庇(ひさし)のあるエントランス

大きな庇(ひさし)があると、利用者は入口を発見しやすい

大きく張り出した庇は、遠くからも入口の位置が直感的にわかります。
大きな庇は、夏の強い日差しや雨から訪れる人を優しく守り、迎えいれます。
この下には子供の遊び場もあり、柔軟な空間の使い方を可能にしています。

図版:大きな庇は建物のランドマークとなり、夜間でも庇をライトアップすることで、遠くから入口が見つけやすくなります。

大きな庇は建物のランドマークとなり、夜間でも庇をライトアップすることで、
遠くから入口が見つけやすくなります。

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疲れてもすぐに休める 人に優しい配慮

休憩スペースは、無理なく歩行できる距離内に

郊外でよく見かける大型商業施設。数えきれないショップは、施設の中で一日過ごしても飽きさせません。誰もが買い物をしやすいよう、ここでもユニバーサルデザインが活かされています。

高齢者が無理なく歩行できる距離は50m程度と言われています。このため、このような商業施設や公共施設、その他の大規模施設などでは、適切な間隔でベンチや水飲み場などを設置しています。

この商業施設では、モール内に適切な間隔で休憩スペースを設け、ベンチの色は遠くからも発見しやすい工夫がされています。このようなことは、高齢者だけでなく子育て中の親にとってもうれしい配慮です。

図版:大型商業には、複数の休憩スペースが適当な間隔で設けられ、子供からお年寄りまで多くの方が利用しています。

大型商業には、複数の休憩スペースが適当な間隔で設けられ、子供からお年寄りまで多くの方が利用しています。

汚れない、怪我をしないキッズデザイン

子供が思いっきり楽しめる遊び場

大型商業施設では、子供の遊び場にもユニバーサルデザインの視点が活かされています。子供の行動は予測できないものです。子供たちが怪我をしないように細心の注意を払ったデザインが求められます。怪我をしないことは当然ですが、思いっきり遊んでも服を汚さない配慮も必要になってきています。さらに、親が買物や商談をしているときにでも子供の姿が見えることも重要です。

図版:この商業施設では、けがや汚れに配慮したデザイン、素材選定を行っています。

この商業施設では、けがや汚れに配慮したデザイン、
素材選定を行っています。

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トイレ編

多機能トイレの設備配置や寸法を3次元CGで検証

トイレを計画する際、国のガイドラインより、さらに使い手の視点に立った設計が求められることが増えてきています。鹿島では、これまでもユニバーサルデザインの観点から多様な提案をしてきましたが、使い勝手などに関して利用者からご意見やご要望をいただくことがありました。その中でも多機能トイレに関することが多く、利用者の実際の使い勝手から各部分の機能・寸法を見直すとともに、3次元CGできめ細かな検証も行いました。

車椅子については、トイレの構造や利用者の身体能力、状況による制約や不便さを考慮して設計に反映させています。図面ではわかりにくい設備の配置や寸法を立体的に示し、1人でも多くの人が使いやすいトイレ空間を追求しています。

図版:大便器の下を車椅子のフットレストが通過可能な器具を選定することで大便器下部も回転スペースとすることができます。

大便器の下を車椅子のフットレストが通過可能な器具を選定することで大便器下部も回転スペースとすることができます。

図版:壁の先端から30cm程度離して扉を設置すると、開け閉めが容易になります。

壁の先端から30cm程度離して扉を設置すると、開け閉めが容易になります。

解説:扉横の袖壁の必要性

車椅子前面には足を乗せるフットレストがあるため、袖壁が無いとフットレストが壁に当たってしまい、扉の開閉をするために前屈みの姿勢にならざるを得なくなります。車椅子利用者には上半身や腕の力が弱い方もいらっしゃるため、扉横に袖壁を付けることにより、前屈みの体勢になることなく取っ手を握っての扉の開閉が容易になります。

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緊急時呼び出しボタンは床から30~40cm程度離した位置に設置すると、トイレ内で倒れた人が緊急通報しやすくなります。

図版:緊急時呼び出しボタンは床から30~40cm程度離した位置に設置すると、トイレ内で倒れた人が緊急通報しやすくなります。

解説:呼び出しボタンの位置

車椅子利用者がトイレを利用する際、様々な利用方法があります。車椅子から便器に乗り移って利用する方が乗り移る際に失敗し、床に倒れてしまうケースも考えられますし、トイレ内で具合が悪く倒れてしまうケースも考えられます。床から30~40㎝というのは床に倒れた状態で手が届く高さなのです。

左右の使い勝手にも配慮したきめ細やかなトイレ計画

日常生活において必要不可欠なトイレは、誰にとっても使いやすいものでなければなりません。だからこそ、右麻痺・左麻痺や右利き・左利きの方の使い勝手を考えることは大切です。例えば、手すりやペーパーホルダー、洗浄ボタンなど、左右設置位置が違うトイレがあれば、身体能力・身体状況にあわせて利用することができ、とても使いやすくなります。右勝手・左勝手を入口サインで表示するとさらに使いやすくなります。

図版:設備機器のレイアウトが左右対称のトイレを設置すれば、使いやす苦なる方が増えます。

設備機器のレイアウトが左右対称のトイレを設置すれば、使いやすくなる方が増えます。

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エレベーター編

エレベーター内に設置する鏡への配慮

混雑時の車椅子利用に配慮し、鏡は上部に設置

エレベーター内の鏡は、車椅子利用者が乗降時に安全を確認するためのものです。扉正面の壁に設置すると混雑時に利用しにくいばかりでなく、ロービジョン者(ものが見えにくい人)の中には、鏡に映っている景色をまだ奥があると誤認し、鏡に衝突する事故も起きています。鏡ひとつ設置するにも様々な利用者の使い方や不便さをよく理解しなければなりません。

図版:エレベーターの正面の壁に設置された鏡の前に人が立ってしまうと車椅子利用者が鏡を見られず、安全に乗降出来ません。

エレベーターの正面の壁に設置された鏡の前に人が立ってしまうと車椅子利用者が鏡を見られず、安全に乗降出来ません。

図版:エレベーターの上部に鏡が設置されていれば、混雑時でも車椅子利用者が鏡を見ることが出来、安全に乗降できます。

エレベーターの上部に鏡が設置されていれば、混雑時でも車椅子利用者が鏡を見ることが出来、安全に乗降できます。

図版:車椅子用に設置した鏡

車椅子用に設置した鏡

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