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ユニバーサルデザイン

安全・安心な避難・救助活動のためにオススメ

地震や豪雨、火災などの災害時には誰もが弱者になります。災害時に年齢や身体能力にかかわらず安全に避難できることが、建物の性能として重要です。さらに、3.11の東日本大震災以降は、誰もが被災後の生活を安全に維持できることが課題となりました。また、高齢化を背景に建物内での日常事故が増加傾向にあり、いまやこうした事故死は交通事故死を上回っています。

鹿島では、ユニバーサルデザインの観点から、日常時、非日常時(災害時)を問わず、誰にとっても安全・安心な建築を目指して取り組んでいます。

避難誘導設備のユニバーサルデザイン ~LED内蔵手摺~

このLED内蔵手すりは、日常では歩行をサポートする役割を持ち、夜間には手すりの下部に内蔵されたLED照明によって足元へ十分な光を与えることで歩行時の安心感と安全性を高めています。災害時には建物の火災報知器やシステムに搭載されたセンサーに連動して作動し、LED照明の点滅による光の流れによって、災害と反対方向の非常口を示します。

事例:西葛西・井上眼科病院病棟廊下

図版:LED内蔵手摺

LED内臓手摺の動画を再生
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避難におけるユニバーサルデザイン
~人・熱・煙連成避難シミュレータ PSTARS:ピースターズ ~

障がい者や高齢者、車いす利用者などの行動パターンを想定し、
火災や煙の制約条件を加味した避難シミュレーション

鹿島が開発した「人・熱・煙連成避難シミュレータ(PSTARS)」は、非常時の避難計画に用いることができます。しかし、一般的なシミュレーションとは違い健常者だけを想定したものではありません。障がい者や高齢者、車いす利用者などの運動能力に応じた避難行動を予測し、非常時における判断能力・思考などの個人差も考慮した予測を実現しました。また、災害の程度によっても避難者の行動は変化するため、避難経路上の熱や煙の有無による行動の差異や、煙の濃度による避難スピードの違い、放射熱や煙が限界値を超えるような出口は使わないなど、避難者の複雑な判断からなる避難行動を再現しながら検討を行えます。より現実的な検討により、従来以上に安全性の高い建築計画が行えるようになりました。

このシミュレーションでは、その結果を平面的に示すこと以外にも、人や煙が降下していく様子を3Dアニメーションで確認することもできます。またこの技術は群集行動をシミュレーションできるため、災害時の避難に限らず、スタジアムや劇場などの観客の退場行動や混雑の予測、その対策検討などにも活かされています。

避難シミュレーションの動画を再生
  • 火災発生と同時に避難開始、人が出口に殺到がするが、
    適切な開口部を設けたことで50秒後には避難完了。
  • 部屋が煙を留める機能を果し、廊下に煙が出てくるのを遅らせ、
    廊下に煙が出てきた時には階の避難が完了。
  • 煙にさらされることなく全員が安全に避難できることを検証。
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超高層ビルの避難の安全性を検討する ~階段シミュレータ~

階段で避難する人の動きを可視化

高層ビルでは、各階における階段内への避難時間(階の避難時間)や全員が地上まで避難する時間(全館の避難時間)の予測は難しいものです。この問題を解決するため、鹿島では階段シミュレータを開発しました。階段シミュレータは各階の収容人数分布をもとに、これまでブラックボックスであった階段内の避難プロセスを可視化しながら、避難時間や避難行動の予測を行うものです。

各階の人数分布が避難に及ぼす影響については、建築基準法に規定される告示計算法では評価できませんが、この階段シミュレータでは検討することが可能です。また、避難時間に大きな影響を及ぼす各階の避難開始のタイミングについて、階段内で過度な渋滞が起こりにくい適切な誘導方法の検討に対しても階段シミュレータは有効です。

図版:階段シミュレータを使って全館避難安全性能を確かめています。(NAKANO CENTRAL PARK SOUTH)

階段シミュレータを使って全館避難安全性能を確かめています。(NAKANO CENTRAL PARK SOUTH)

図版:階段シミュレータ(超高層オフィスビルの計算例)

階段シミュレータの動画を再生

ボタンをクリックすると、各階の人が左側の階段室に避難していく様子や、階段内に人が滞留しながら降りていく様子がわかります。各階の帯(グレー)の長短は人数の多寡を表し、火災階は赤色としています。なお、画面ではスピードを実際の40倍速にしています。
※出火してから避難開始まで少し時間がかかります。

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図版:階段シミュレータ(超高層オフィスビルの計算例)

階段シミュレータ(超高層オフィスビルでの計算例)

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日常事故を防止する安全・安心のデザイン

日常事故は交通事故を上回る

建物内での事故死は、交通事故死を上回っています。その中でも高齢者や子供の事故が多く発生しています。事故が発生する原因としては、階段からの転倒・転落が一番多く、特に階段の安全性に配慮することが重要ですが、建物をつくる上で「子供は高いところに上がりたがる」「高齢者は足があげにくくつまづきやすい」などの行動特性や身体能力をよく理解し、計画することがこれまで以上に求められています。さらに、建物用途にかかわらず、様々なタイプの人が利用することを想定することも大切なことです。

図版:家庭内における不慮の事故と交通事故の死者数の比較

家庭内における不慮の事故と交通事故の死者数の比較:
交通事故により亡くなる方よりも家庭内(施設内)における不慮の事故により亡くなる方の数が上回っています。

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子供の行動特性を考慮し、豊かな空間を想像する:西南学院小学校

この小学校は、柔軟な使い方ができるアトリウムを中心に計画されました。吹き抜けの空間に転落防止に配慮するなどの高い安全性を確保しています。手すりの高さや手すりの間隔はもとより、周囲の教室などから足がかりとなる家具などを持ち出せないようになっています。様々な使い方ができるアトリウムの大階段は、児童の目線より低い位置に踊り場を設け、下から見上げた時の高さに対する恐怖心の低減や、万が一転落しても大きな事故につながらないようなきめ細かな配慮がされています。

図版:西南学院小学校

西南学院小学校

安全・安心・親切の観点から見た階段

階段での事故は多く、家庭内でも例外ではありません。また、老若男女、健康な人から体の不自由な人まで様々な人が使う階段の安全性に配慮した建築計画が必要となります。

人間は視覚から得る情報が圧倒的に多く、危険回避のための情報もほとんど視覚に頼っています。階段がどう見えるのか、そこからわかる階段の注意点を考えてみましょう。

踏面と段鼻の色や素材が同じ

踏面と段鼻(踏み板の先端部分)とが同じような色やテクスチュアである階段がよくありますが、降りる際に段鼻の位置がわかりにくい、もしくは複数の踏面が連続して見える状態となるため、足を踏み外して転倒に至るおそれもあります。特に暗い所でこのような事故は多発しやすいです。

図版:段差がわかりにくい階段

図版:段差がわかりにくい階段

踏面と段鼻が同じ色だと段鼻がよく見えないため、坂のように見えてしまいます。

図版:段差がわかりやすい階段

図版:段差がわかりやすい階段

踏面の色と段の先端・段鼻の色を変えると段がわかりやすくなります。

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自然石、木材で仕上げた階段

自然石で仕上げた階段や段に平行なラインが強調された階段でも段鼻の位置がわかりにくいことがあるので注意が必要です。

図版:自然石の風合いを生かした階段

自然石の風合いを生かした階段
上から見ると、石割の関係で段差がわかりにくく、危険な場合があります。

図版:段に平行なラインが強調された階段

段に平行なラインが強調された階段
木材、フローリング等の階段は、木目が段と平行になると段鼻がわかりにくく、危険な場合があります。

以上から、踏面と段鼻、そして床面は互いに識別しやすい色や素材とするなどの配慮が必要です。
晴眼者にとってはあまり問題の無い色の組合せでも、ロービジョン者(ものが見えにくい人)には見えにくいことがあります。色相で大きな差がつかない場合は、輝度の差をつけるなどの工夫が必要です。上りのことも考えて蹴込についても配慮が必要となります。

図版:踏面、段鼻、床面は互いになるべく識別しやすい色やテクスチュアで構成します。色相や輝度のコントラストに注意してデザインし、また明るく照らすなど、視覚にはとことん配慮が必要です。

踏面、段鼻、床面は互いになるべく識別しやすい色やテクスチュアで構成します。色相や輝度のコントラストに注意してデザインし、また明るく照らすなど、視覚にはとことん配慮が必要です。

階段の錯覚を予測せよ!

踊場部分やその先の床の部分に、階段の段々のイメージを延長したようなデザインがありますが、見下ろした時これら平坦な部分が階段のように見えることがあります。実はこれがかなり危険です。足の踏み出し方が異なるため体勢を崩しやすくなるのです。(空足を踏む…とも言います。)

図版:踊場や床で平行線を強調すると、フラットなのにもかかわらず、段があると勘違いして踏み出した場合、体勢を崩しやすく捻挫などにつながるおそれも。

踊場や床で平行線を強調すると…
フラットなのにもかかわらず、段があると勘違いして踏み出した場合、体勢を崩しやすく捻挫などにつながるおそれも。

図版:点字ブロックが段に見えることも

点字ブロックが段に見えることも
踊場に点字ブロック(30センチ)を敷設しただけで、点字ブロックによってできた縞が段々に見えることもあります。(点字ブロックは段鼻から30センチ離すルールがあるため、なおさらです)

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屋外の温熱環境から考える安全・安心

ヒートアイランドから人を守る 
~鹿島都市気候評価システム(KaUCES)~

快適な屋外環境を実現し、風や日射などで影響する温度変化を予測

近年、猛暑などの影響で、熱中症になるリスクが高まっており、社会的に大きな問題になっています。特に子供や高齢者の間に増えてきており、早急な対策が必要です。

『鹿島都市気候評価システム(KaUCES)』は、建物周辺の風の流れ、日射、建物や緑化の影などの影響による温熱環境などを予測するツールです。大規模な建築計画や地域開発に際し、風通しに配慮した建物配置、効果的な植栽計画、適正な建物外壁材を検討することで、屋外の温熱環境を改善します。

図版:東京都の過去5年の熱中症の状況

東京都の過去5年の熱中症の状況

大学キャンパスにおける体感温度の予測

再開発中の大学キャンパス計画を対象にして、真夏の正午の体感温度を予測した事例です。将来計画では新規の建物による日射遮蔽効果と風通しの改善、緑化計画により、敷地全体で温熱環境を改善することが出来ます。

図版:神奈川工科大学学生プラザ

神奈川工科大学学生プラザ

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図版:建替えに伴う屋外温熱環境の改善評価の例

建替えに伴う屋外温熱環境の改善評価の例(真夏の正午における体感温度の分布)

輻射を抑えながら蒸散効果により快適な屋外空間を実現する 
~緑彩マルチパネル~

保水性が高く緑で覆われたパネルにより近接空間の温度を低減

『緑彩マルチパネル®』は、リサイクル材を使用した独自の壁面緑化パネルです。新開発の保水・給水方式で効率よく植栽基盤に水を送るとともに、風圧に対しても安全な強度を持っています。芝生、草花、低木など多様な植物の安定した生育が可能で、目を楽しませ、潤いや季節感を与えます。また、これらの植物の蒸散と輻射抑制効果により周辺の暑さを和らげます。サインボード・LED照明・ソーラーパネルをユニットとして持っており、日常・夜間の案内、非常時対応にも効果的に対応します。

図版:緑彩マルチパネル+ミスト+グリーンパーゴラにより快適な温熱環境を実現

緑彩マルチパネル+ミスト+グリーンパーゴラにより快適な温熱環境を実現

蒸発散効果により気温を低減し快適な屋外環境を実現する 
~エバクールペーブ~

保水性舗装・散水・ミストなどにより温度低減

『エバクールペーブ』は、ノズルを用いた散水や下面からの効果的な給水により、舗装の保水性を高め、蒸発散を促進するシステムです。朝夕の打ち水のような機能により表面温度の低減・蓄熱の抑制が図られ、歩行空間・広場空間など屋外の不快感を低減します。そのため、高齢者や地面の温度変化の影響を受けやすい乳幼児にとっても安全な屋外空間を提供します。

『ミスト』噴霧は、微細な粒子の蒸発により、周辺よりも2~5℃の温度低減が図られます。スポット的な導入により屋外環境の快適性向上に適しています。

図版:エバクールペープ

エバクールペープ
保水性舗装+散水システムにより気温を低減し、快適な屋外環境を実現

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