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“日常”をとり戻すために

富岡町対策地域内廃棄物処理業務(破砕選別,減容化処理等)

福島県有数の桜の町として知られる富岡町──。
東京電力福島第一原子力発電所の事故により避難指示が勧告され,住民は町外への避難を強いられている。
ここで今,放射性物質を含む廃棄物の処理が始まった。
今回は,一日も早く町の人々が“日常”をとり戻せるよう奮闘する現場を紹介する。

図版:地図

【業務概要】

富岡町対策地域内廃棄物処理業務
(破砕選別,減容化処理等)

場所:
福島県双葉郡富岡町
発注者:
環境省
受注者:
MHIEC・鹿島・MHI共同企業体

※MHIEC:三菱重工環境・化学エンジニアリング,

MHI:三菱重工業

業務期間:
2014年3月〜2018年3月
(建設1年,運転2年,解体1年)

(東北支店施工)

建設編

運営編

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建設編 協力体制を原動力に

福島県の海岸線ほぼ中央に位置する富岡町を訪ねたのは,1月下旬の晴れた日だった。楢葉町にある事務所から,現場へと向かう。津波被害を受けた商店,住民不在の家屋,休業中のガソリンスタンドが,あの日から時間が止まっていることを印象付ける。すれ違うのは,除染や廃棄物処理関係者の車両のみで,町の至るところに除染廃棄物を詰めたフレキシブルコンテナバッグやブルーシートで覆われた廃棄物が仮置きされている。15分ほど走り,運休中の常磐線を越えると,朝日に照らされた真っ白なテントに「がんばろう富岡町!」という大きな文字が飛び込んできた。ここが町内の廃棄物を処理する施設となる。

町を鼓舞する言葉を背にして,工事関係者の朝礼が始まった。朝礼台では入社11年目の疋田哲也工事係が,作業内容や注意事項などを具体的に説明している。施工が本格化する昨年7月に赴任してきてから,若手のリーダー格として施工部隊の旗振り役を果たしてきた。この業務は,津波被災地に,破砕選別施設,焼却施設,保管施設などから構成される仮設の廃棄物処理施設を建設し,廃棄物の破砕選別や焼却処理を行い,処理が完了したのち解体撤去を行っていくもの。除染作業などで出た放射性物質を含んだ廃棄物の処理が特徴となる。乙型JVと呼ばれる分担施工方式が適用され,建設段階では,当社は破砕選別施設と保管施設の全体および焼却施設の基礎,建物,受入設備などを設計・施工し,三菱重工環境・化学エンジニアリングが焼却施設内の焼却炉の設計・施工を担当している。

図版:疋田哲也工事係

疋田哲也工事係

整然と列をなす一群を,後方からサングラス越しに見つめる大島豊平所長の姿があった。入社して36年,地下鉄工事など都市土木一筋。その後,関西支店の土木部長を務め,直近は福島第一原子力発電所の凍土壁構築を支援してきた。「素晴らしい協力体制が築かれている現場ですよ。ここにいる皆が,コミュニケーションの重要性を認識して努力してきた証でしょう」と話す。若手であっても,1から10まで指示することは敢えてしない。挑戦を忘れないこと,自主性を持つことが大切だという。「究極を言えば,私たちの仕事は,人や組織の間に立ち,自由な発想で何をすべきかを見つけだし,判断していくことだからです」と説明する。

図版:大島豊平所長

大島豊平所長

図版:被災直後の光景が今も残る

被災直後の光景が今も残る

図版:運休が続く常磐線

運休が続く常磐線

図版:施設を背に朝礼が行われる

施設を背に朝礼が行われる

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図版:焼却施設のテント張り

焼却施設のテント張り

図版:焼却施設内部では焼却炉の施工が行われている

焼却施設内部では焼却炉の施工が行われている

図版:8万2,000m2の敷地に,破砕選別施設,焼却施設,選別物保管施設,灰保管施設などから構成される仮設の廃棄物処理施設を建設する

8万2,000m2の敷地に,破砕選別施設,焼却施設,選別物保管施設,灰保管施設などから構成される仮設の廃棄物処理施設を建設する

疋田工事係は,その言葉を実践している一人だ。「実質的な施工期間は約10ヵ月です。施工は技術的に難しくないのですが,地盤改良,基礎コンクリート,プラント設置,鉄骨建方,テント膜張り,コンクリート舗装と次々と新しい工事が追いかけてくる。今は焼却施設のテント張りと焼却炉の施工が輻輳して複雑なマネジメントが求められています」。厳しい工程に対応するには,JVや協力会社を含めた様々な人との密な連携が鍵になると考え,パイプ役として現場を奔走している。道路や鉄道などの土木工事は経験してきたが,建築やプラントが複雑に絡み合う工事は初めて。建築工事に入ってからは,施工の感覚がつかめなかったという。その時に,頼ったのが建築の施工部隊を率いている猪野一郎副所長だった。これまで工場,オフィスなど,数多くのプロジェクトに関わってきた。「施工順序・手順,作業の取り合いの調整などについて,建築的な考えをアドバイスしてもらい,何とか完成が見えてきました。自分自身の勉強になることも多く,刺激になりますね」(疋田工事係)。

図版:猪野一郎副所長

猪野一郎副所長

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同じように人とのつながりに助けられていると話すのが,設計を担当する平岡伸哉工事課長である。地盤の調査をして地盤改良の範囲や深さを決め,基礎やテント構造の建物を造る一連のステップやフローなどを作成してきた。「15年間,パイプラインや下水管などのシールド工事を担当してきました。設計に関しては,施工に必要な基礎や仮設などが中心でした」と話すとおり,今回のような大規模な設計・施工案件において設計業務をメインに担当するのは初めてとなる。南北に約1kmの広大な敷地でのボーリング調査では,土木設計本部やグループ会社のケミカルグラウトの知見やノウハウを活かし,建屋の建築では東北支店建築設計部へ地盤情報を提供しながら,良好な関係を築きあげ,協力体制を整えた。「設計をしながら施工が進むイメージだったので,当初は何度も支店の建築設計部に足を運びました。関西支店から転勤してきたということもあり,人間関係を1から構築するのは大変でしたが,今では建築設計の人と一番話をしている土木屋だと自負しています。これまでシールドトンネルや地下構造物ばかりだったので,自分が設計した建屋が地上に姿を見せる醍醐味を感じています」とほほ笑む。

図版:平岡伸哉工事課長

平岡伸哉工事課長

「現場が地盤や基礎という土木工事からスタートしたという意識から,その後の建築工事も責任をもって見てくれています。厳しい工期のなかで,計画どおりに工事が進んだのは二人の力によるところが大きい。人を動かすのは技術だけでなく“気持ち”だということも学んだのではないでしょうか。私も動かされた一人かもしれませんね」と猪野副所長は二人を評した。今後も社内外の関係者との協力体制を原動力に,廃棄物の処理へとフェーズを移していく。

図版:各所に除染作業で出た除染廃棄物を詰めたフレキシブルコンテナバッグやブルーシートで覆われた廃棄物が仮置きされている

各所に除染作業で出た除染廃棄物を詰めたフレキシブルコンテナバッグやブルーシートで覆われた廃棄物が仮置きされている

避難指示区域での災害廃棄物処理

2011年3月11日,巨大な津波が,東北地方の太平洋沿岸部を襲い,多数の尊い人命を奪うだけでなく,多くの建造物が損壊し,膨大ながれき(災害廃棄物)を発生させた。あれから4年の月日が流れた。被災3県のうち岩手県,宮城県で災害廃棄物処理が完了。福島県では1月30日時点で,推計量の93%を完了したが,この数値には“避難指示区域を除き”という条件が付く。東京電力福島第一原子力発電所の事故にともない避難指示が勧告されている区域のことである。

現在,2012年1月に完全施行された「放射性物質汚染対処特措法」に基づき,この区域では「帰還困難区域」以外で,国直轄による除染作業が進められると同時に,汚染廃棄物対策地域内(避難指示区域とほぼ同じ)の廃棄物処理に関する計画を定め,環境省を中心に関係省庁が一体となって汚染廃棄物の処理が進められている。同地域の各市町村に仮設焼却炉を設置する方針で,除染廃棄物を除く廃棄物の総量は約80万2,000tと推定されている。当社は,除染モデル実証事業を経て,田村市で住宅地や林緑部を対象とした本格除染を担当し,昨年4月旧警戒区域で初の避難指示解除につなげた。富岡町では,拠点施設の除染を終え,本格除染を担っている。今回,紹介する「富岡町対策地域内廃棄物処理業務」では,仮設の廃棄物処理施設を建設し,町内の廃棄物の破砕選別・焼却処理を行っていくことになる。

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避難指示区域について

避難指示解除準備区域

年間積算線量が20ミリシーベルト以下となることが確実であると確認された地域。住民の一時的な帰宅は可能だが,宿泊はできない。金融機関,廃棄物処理,ガソリンスタンドなど復旧・復興に不可欠な事業は可能。当面は,避難指示が継続されるが,復旧・復興のための支援策を迅速に実施し,住民の方が帰還できるための環境整備を目指す区域。

居住制限区域

年間積算線量が20ミリシーベルトを超えるおそれがあり,被ばく線量を低減する観点から,避難を継続することが求められる地域。住民の一時的な帰宅は可能だが,宿泊はできない。一定の条件のもと,金融機関,廃棄物処理,ガソリンスタンドなど復旧・復興に不可欠な事業は可能。

帰還困難区域

事故後6年間を経過してもなお,年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らないおそれのある地域。2012年3月時点で年間積算線量が50ミリシーベルト超の地域が相当する。バリケードなど物理的な防護措置が実施され,避難の徹底がなされている。

図版:避難指示区域の概念図 2014年10月1日時点(経済産業省HPを参考に作成)

避難指示区域の概念図 2014年10月1日時点(経済産業省HPを参考に作成)

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故郷が避難指示区域となって

この現場には,避難指示区域を故郷とする人も多く働いている。それぞれの今の思いを語ってもらった。

図版:倉伸 猪狩孝平さん

倉伸 猪狩孝平さん(富岡町出身)

帰りたいと思う人のために

各施設のコンクリート工事を担当する職長の補佐的な役割を務めています。震災と同時に大学を卒業しました。その影響で内定していた会社に勤めることができなくなり,別の会社に身を置いていました。故郷のための仕事があると聞き,地元の建設会社に転職して,志願したのです。町に帰りたいという話を聞くと,若い世代が頑張らなければと思います。仕事以外でも,お祭りで和太鼓を叩いたり,地域の代表として野球大会に出場しています。

図版:倉伸 目黒弘信さん

倉伸 目黒弘信さん(大熊町出身)

新たな生活

鉄筋型枠やコンクリート打設などの現場管理と作業を担当しています。震災前は,福島第一や第二原子力発電所で修繕関連の仕事をしていました。郡山の体育館,会津の民宿,いわきのアパートなどで避難生活を続け,今,いわきに土地を購入して,地鎮祭を終えたところです。住居の被害が甚大だったので,当初から戻ろうという意識はありませんでした。新たな生活は楽しみですが,今いわき市内からの渋滞が激しく2時間程度かかるのが辛いですね。

図版:北双開発 佐藤健二さん

北双開発 佐藤健二さん(富岡町出身)

プロとして仕事をする

焼却施設や破砕選別施設での土工事を担当しています。直後は,自分の判断で首都圏へ避難して,今はいわきに移り住みました。福島第一原子力発電所で放射線管理業務に携わった後,この現場で働いています。被災地だからとか,故郷だからという意識はありません。どこであろうが仕事は仕事です。プロとして,他の場所と同じ気持ちで仕事を続けていきます。

図版:遠藤重機 半谷陽さん

遠藤重機 半谷陽さん(富岡町出身)

生まれた町をきれいに

クレーンオペレータとして働いています。住居は帰還困難区域にあるため,今も片付けができていません。漁港の建物も鉄骨むき出し,富岡駅もどこだかわからない状態でしたから,全てが変わってしまいました。直後は親戚を頼り会津に避難し,今はいわきに新居を構えています。戻る,戻らないは別として,生まれた町をきれいにしたいという思いで仕事をしています。

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運営編 福島再生への第一歩

3月19日,焼却炉の火入れ式が行われた。小里泰弘環境副大臣,宮本皓一富岡町長など関係者が火入れスイッチを押すと,焼却炉に火が入った。放射性物質を含む廃棄物処理がスタートし,いよいよ運営段階に入る。この業務では約30万5,000t(推定)の富岡町内で発生した津波がれき,家屋解体廃棄物,家財類(片付けごみ),除染廃棄物を破砕選別・焼却処理して保管していく。三菱重工環境・化学エンジニアリングが運営を行う焼却炉は,一日あたり500t(250t×2基)の処理能力を持ち,避難指示区域に設置される焼却施設で最大となる。当社が運営する破砕選別施設では,廃棄物を破砕して可燃物や不燃物に選別し,金属類,コンクリートがら,土砂類など再利用可能なものを取り出し,廃棄物を減らす計画だ。

「いよいよ始まりますね。これからが本番です」と語るのは,機電担当として破砕選別設備の選定,配置計画,導入・組立などを担ってきた渡辺哲雄機電係だ。縦方向175m,横方向85m,高さ18.7mのテント構造の建屋に,21種類の重機や設備機器など計65台を配置した。「これらの設備を使い,重機や人手による選別,破砕などを行い,廃棄物を品目毎に分類していきます。機械と電気のかたまりと言っても良いでしょう。これまで土木や建築の人が頑張ってくれました。これからは機電の力で現場を支えていきます」。この頼もしい言葉は,宮城県内で最大規模となる石巻ブロックで約300万tもの災害廃棄物を処理してきた経験の裏づけである。〈これまで誰も経験したことのない〉と表現された石巻ブロックは,昨年9月全ての業務を無事完了したが,当初は試行錯誤の連続だったという。「度重なるマシントラブルで,改造とメンテナンスに追われ,プラント立ち上げ時は,心身ともに苦しい時期もありました」と当時を振り返る。今回,その労苦で得たノウハウを活用し,廃棄物を適切なサイズに分級する振動ふるい機や,土砂を振るい落とす回転ふるい機などをうまく組み合わせ,処理ラインを安定化・効率化するための工夫をした。また,ふるい機を移動式として,廃棄物の性状により機器の場所変更や追加ができるフレキシブルなラインを実現する。「実際に処理してみないと分からない部分もありますが,今回は十分な準備をしてきました。町のためにも一日でも早く処理を完了したいですね」。

図版:渡辺哲雄機電係

渡辺哲雄機電係

図版:当社が運営する破砕選別施設の内部。21種類の重機や設備機器など計65台が配置されている

当社が運営する破砕選別施設の内部。21種類の重機や設備機器など計65台が配置されている

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図版:業務の流れ 約30万5,000t(推定)の津波がれき,家屋解体廃棄物,家財類(片付けごみ),除染廃棄物を破砕選別・焼却処理して保管する

業務の流れ
約30万5,000t(推定)の津波がれき,家屋解体廃棄物,家財類(片付けごみ),除染廃棄物を破砕選別・焼却処理して保管する

この業務が,これまでの災害廃棄物処理と異なるのは,放射性物質を含む廃棄物を扱うという点だ。放射線管理は三菱重工業の担当となるが,当社は破砕選別施設の運営,各施設への廃棄物の運搬・保管などを担当するため,放射性物質を適切に監視し,管理する手法について,同社との入念な協議を重ねてきた。その先頭にたってきたのが松原武志副所長である。石巻ブロックでは,環境の専門家として土壌浄化技術を津波堆積物などの処理に活用してきた。ここでは周辺環境や作業員への放射線の影響を最小限にするため様々な対策を行っていく。各施設の機能に応じて,コンクリート壁で放射線を遮蔽する構造となっているほか,現場周辺には8ヵ所のモニタリングポストを設置し,空間線量を常時監視。破砕選別施設と焼却施設では線量計を常備して,タイベックスーツでの作業となる。現場に連続的に出入りする車両や資材については,廃棄物の種類や量だけでなく放射線の監視も行う。「放射線の監視や管理の徹底は当然ですが,一般的なリスクにも十分注意を払う必要があると思っています。廃棄物には様々な性状のものがあり,アスベストなどの危険性の高い物質が含まれる可能性もあるからです。運営が軌道に乗り次第,焼却炉の解体計画に専念していきます」と松原副所長は次のステージを見据えていた。

図版:松原武志副所長

松原武志副所長

図版:現場周辺に設置されたモニタリングポスト

現場周辺に設置されたモニタリングポスト

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「ここは施設の設計・施工から廃棄物処理,解体までを一貫して行う特殊な現場です。避難指示区域内での仕事でもあり,最初は戸惑いもありましたが,様々な分野のプロフェッショナルと机を並べ,生活を共にすることで,総合建設業の役割とは何かが見えてきた気がします」と話すのは西村正夫副所長。本社と現場勤務の経験があり,対外的な対応から社内の連絡調整まで業務全体をマネジメントする。放射性物質汚染対処特措法や電離則などの法律に,いかに業務を対応させるかの道筋もつくってきた。この業務をとおして,総合建設業の仕事とは,造るという行為だけではなく,有形無形のあらゆることのバランスをとり,ミッションを果たすことだと改めて感じたという。

図版:西村正夫副所長

西村正夫副所長

この現場を厳しくも温かく見守る人がいる。東北支店の迎田克介支店次長だ。石巻ブロックほか多くの復旧・復興工事を現場目線で支援してきた。

「日本の災害廃棄物処理の技術・ノウハウにおいて,自分たちの右に出るものはいないという思いを持って業務にあたって欲しい。その力を持っているのだから,福島の復興に尽くす責任があるのです。それは,自らの血や肉となり,必ず将来に役立つはずです。福島再生への第一歩を自信と誇りを持って踏み出しましょう」(迎田支店次長)。

図版:迎田克介支店次長

迎田克介支店次長

図版:全ての施設が完成し,いよいよ運営段階へと入っていく。手前が破砕選別施設,奥が焼却施設

全ての施設が完成し,いよいよ運営段階へと入っていく。手前が破砕選別施設,奥が焼却施設

図版:協力体制を原動力に,福島再生への第一歩を踏み出す

協力体制を原動力に,福島再生への第一歩を踏み出す

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厳しい環境だからこそ,良い生活環境を

昨年12月,楢葉町の現場事務所に隣接して,生活の拠点となる宿舎が完成した。これまで所員は,いわき市内を中心としたホテルに宿泊していたが,現場までの通勤時間などの負担は大きく,決して良い環境とは言えなかった。「ここは避難指示解除準備区域内で,住居があるのに住民不在という特別な環境です。ほとんどの人が単身赴任でもあります。精神的な辛さを感じることもあるでしょう。こんな環境だからこそ,できる範囲で良い生活環境を用意してあげたいのです」と話すのは,事務を統括する松本幸治次長。食堂は,美味しいと評判の業者を見つけて依頼した。愛情のこもった料理が,良好なコミュニケーションを促す。精神的な不安やストレス解消にもつながっているという。

「地元の方々とフットサルやバドミントンなど,勤務時間外の活動にも積極的な所員が多くいます。厳しい環境でも,自分たちなりの楽しみ方を見つけているのは頼もしいですね」。

図版:愛情のこもった料理で所員をもてなす菊池修二・眞知子夫妻と松本幸治次長(右),池谷雄一郎事務係

愛情のこもった料理で所員をもてなす菊池修二・眞知子夫妻と松本幸治次長(右),池谷雄一郎事務係

Interview 継続の力,そして皆の成長に期待

震災直後,土木管理本部の工事管理部長として,
東北復興を支援してきた新川環境本部長に,本プロジェクトの位置づけについて聞いた。

当社が担当した災害廃棄物処理プロジェクト(石巻ブロック,宮城東部ブロック,宮古地区)が終盤に近づいたころ,考えていたことがあります。鹿島の総力を結集し,膨大な量のがれき処理を成し遂げたことは大きな成果ですが,蓄積した豊富な技術やノウハウを活用して,社会に貢献していくことが肝要だということです。その舞台が,このプロジェクトなのです。

数年前から,私たちを取り巻く環境は激変しています。与条件のなかでのモノ造りから,技術提案や設計・施工一括といった自ら定めた基準のなかでのマネジメントが求められるようになりました。“ビジネスモデルの再構築を進めている段階”といっても良いでしょう。ビジネスの成否は,如何に基準を定めるかに左右され,そのためのスキルは経験の積み重ねから生まれると考えています。

こうした視点から見ると災害廃棄物処理は,施設の運営も担当することがポイントとなります。計画段階で決めた基準,つまり設備のスペックなどが妥当だったのかを運営をとおして知ることができるからです。ここでの運営は,放射性物質の処理という厳しい条件が加わります。新たな挑戦には,常に高いハードルはつきものです。しかし,それを超えてこそ,当社の技術やノウハウがスパイラルアップしていくのです。是非,自分がビジネスモデル再構築を担うという気概を持って業務に取り組んでください。皆の成長を期待しています。

図版:新川隆夫 執行役員 環境本部長

新川隆夫 執行役員 環境本部長

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