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超高層50年 技術

施工においては施工方法や使用する鋼材,機械など様々な点で新しく考えなければならず,
霞が関ビル建設を契機に生産技術,施工技術が開発された。
これらの技術や手法は,その後の超高層ビルのプロトタイプとして受け継がれている。

霞が関ビル建設で開発された主な技術

●S・S・W工法

矢板背面の土の中にアンカーのアーチ作用を利用して,アンカーと矢板面の間の地盤を一体化し,その重力で,水平土圧による転倒モーメントに対抗するという自立重力擁壁工法(Self Standing Wall)。山留の切梁の削減,掘削の効率化につながった。

写真:S・S・W工法

●大型厚肉H形鋼

当時,国産H形鋼は土木に用いられることはあったが,高い精度を必要とする建築にはまだ採用されていなかった。当社技術研究所と富士製鐵が検討を重ね,高精度のH形鋼製造が可能となり全面採用された。当社では,霞が関ビルに先立ち昭和39(1964)年8月にインドネシアで着工した30階建てのヌサンタラ会館で試行している。ここで用いたH形鋼の成績が良かったので,これを活かしてSM50という高張力H型鋼を開発した。

●ハニカムビーム

梁のウェブ中央付近に六角形の穴が空いた梁。穴があることで軽量化でき,配管を通すこともできる。普通のH形鋼を波形に切断し,切り離した鉄骨の1本をひっくり返し,互いの山同士が接するように溶接することで,短期間での製作を可能とした。

写真:ハニカムビーム

改ページ

●セルフクライミングタワークレーン

タワークレーンが国内で初めて用いられたのが1950年代。当工事で初めてセルフクライミング式の“KTK-200Wクレーン”を適用した。このクレーンは,旋回体を支えるマストを躯体に固定し,躯体工事の進捗に合わせ,旋回体を貫通してマストを上階に迫り上げ,次に旋回体をあげる機構になっている。マストと旋回体が切り離されていることから2分割式とも呼ばれた。霞が関ビルでは9回のクライミングを行った。

写真:セルフクライミングタワークレーン

●U型デッキプレート

鋼板を波形に折ることで強度を持たせたデッキプレート。作業床としてだけでなく型枠,本設材として活用した。この工事で使用したデッキプレートは1枚34kgと人力で運搬可能なものであった。

写真:U型デッキプレート

●スリット壁

平面中央のコア部に採用されたRC耐震壁に一定の間隔で縦の切れ目(スリット)を設けた軽量鉄筋コンクリートの耐力壁。中小規模の地震や強風時には建物の変形を制御し,強震時にはスリットによって分離された壁が柔軟な曲げ変形を起こし鉄骨の変形に追従することで地震エネルギーを吸収し,鉄骨と協働し耐震性能を増加させる役割を担っている。

写真:スリット壁

●軽量耐火間仕切工法

軽量鉄骨の下地にクリップで石膏ボードを取り付け,プラスター仕上げを施した。耐火性,遮音性,経済性に優れている。クリップ留めは従来の釘打ちに比べ施工性が良い。当社,マンテン,住友金属工業で実用化したため“KMS式軽量耐火間仕切”とも呼ばれる。

●設備器具先付けによるライン方式天井工法

ライン状の枠の中に配線などの設備を先行して施工し,その後に天井ボードを貼り付ける工法。従来は,照明などの設備をどこにでも設置できたが,天井ボードを貼ってから穴を開け配線を行うという多くの手間がかかった。多くの職種が錯綜することを回避するだけでなく,先行して設備をしたことで仮設照明としても使える利点があった。

写真:設備器具先付けによるライン方式天井工法

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