ホーム > KAJIMAダイジェスト > April 2020:私たちの働き方

第3回
(仮称)名駅一丁目計画

設計・施工力の強化と労働時間削減の両立へ

リニア中央新幹線開通が予定され,ますます利便性が高まる名古屋駅周辺。
そのJR名古屋駅近くに建設中の「(仮称)名駅一丁目計画」では,設計・施工力を強化するための
さまざまな施策が講じられている。

改ページ

[工事概要]

(仮称)名駅一丁目計画

  • 場所:名古屋市西区
  • 事業者:三菱倉庫,名古屋鉄道
  • 発注者:鹿島,名古屋鉄道
  • 設計:当社中部支店建築設計部
  • 用途:事務所,店舗
  • 規模:S・CFT造 B1,14F,
    PH1F 延べ18,859m2
  • 工期:2018年10月~
    2020年6月

(中部支店施工)

地図

現在,JR名古屋駅から徒歩4分のところに建設中の地上14階,地下1階のオフィスビル「(仮称)名駅一丁目計画」。2018年10月に着工し,今年6月の完成に向け,現在追い込みに入っている。

所員12人,1次協力会社約30社,常時200人ほどの作業員が働くこの現場は,都心部に立地しているため敷地が狭く,敷地内の地下に名古屋鉄道(名鉄)の函体が通り,その上部には杭打ち機などの大型重機を設置できない。現場を率いる剱持光尚所長は,それらの条件のもと,さまざまな施策を駆使して工事を進めている。

その鍵となるのが設計・施工力の強化である。生産性を向上し作業効率を上げ,ひいては所員の労働時間削減につなげようというのが剱持所長の考えだ。

図版:完成イメージ外観(北東から)

完成イメージ外観(北東から)

図版:現場施工状況(3月12日撮影)

現場施工状況(3月12日撮影)

改ページ

施策1BIMとITの活用

BIMを活用したフロントローディングで,徹底した効率化を図った。とくに鉄骨図面に関しては,協力会社の鉄骨専用CADに直接構造図データを読み込ませ,図面作成時間を大幅に短縮するとともに積算業務を効率化。また,その鉄骨3D図面をもとに,内外装や各設備工事の情報をプロットすることで,早期から納まりのチェックや施工上の問題点の洗出しを可能とし,手戻りを少なくするなど現場業務の効率化につなげていった。

ITの活用として,QRコードで鉄骨製作から出来高,品質管理までを一元管理することも試みた。鉄骨に貼付したQRコードと製作図に記載したQRコードを紐づけ,鉄骨製品情報を付与することで,鉄骨ファブ(加工業者)での出来高・出荷管理に役立てると同時に,iPadを活用して製品検査を行った。また,読み取った図面を端末に表示することでペーパーレスとするなど鉄骨ファブ,現場ともに省力化を図った。このQRコードは,出来高の見える化,品質管理にも活用され,情報をデジタル化することで支店や現場事務所内での遠隔管理も可能となった。QRコードの活用は,中部支店が施工する現場では初めての試みとなる。

「まだ改善点は多くありますが,BIMやQRコードなどITの活用は今後確実に効率アップにつながると思います」と剱持所長は手ごたえを感じている。

※QRコードはデンソーウェーブの登録商標

図版
図版
改ページ

施策2「ユニット化」で合理化を図る

エレベータシャフト壁に使う押出成形セメント板(ECP)は,従来は鉄骨を組んで床のコンクリートを打設後,エレベータシャフト内に足場を組んで設置していた。当現場では,ECPを鉄骨に地組みして取り付け,ユニット化した状態で建方を行っている。鉄骨建方と同時にエレベータシャフトが形成されるため,ECPを揚重する手間が削減できるとともに,エレベータシャフト内の足場も不要になるなど,さまざまな効果が得られた。それ以外にも,鉄骨ファブであらかじめ鉄骨柱に竪樋や設備配管を取り付けておき,現場にはそれを搬入。また,床スリーブをユニット化するなど,現場での作業を極力削減するといった施工合理化を図っている。

これは「とにかくいろいろなユニット化に挑戦したかった」という剱持所長の要望で実現したことだ。

図版

施策3「カエル会議」で省力化を推進

2024年4月から建設業にも適用される時間外労働の上限規制(原則月45時間)に向けて,当社中部支店では2019年度の取組みとして独自に月残業60時間以内を目標に掲げ,実施計画を策定している。その1つに「カエル会議」の定期的な実施がある。カエル会議とは,チームで目標を設定し,達成のための課題抽出や改善案策定を行う会議だ。「カエル」は,早く「帰る」と仕事のやり方を「変える」ことから名付けられている。

現場では,協力会社の担当者と現場担当が集まり,「カエル会議」を開催。それぞれ持ち寄った意見をもとに,課題となっているところや省力化できるところを洗い出し,改善策を検討している。

また,所内週例会議では,剱持所長が所員の業務配分や人員配置の見直しを行い,残業時間削減に向けた調整をしている。剱持所長は「それでも若手社員がじっくり図面を検討して勉強したりする時間も確保してあげたい」と,創出した時間を学習にあてるなど,次世代の担い手育成のことも忘れていない。

改ページ

朝礼・昼礼をモニターやiPadで

作業員全員が一堂に集まれるような広い場所がないため,休憩所などに設置したモニターやiPadなどで朝礼・昼礼を行う放送システムを構築。資料を表示しながら別室より担当者が音声で説明することで,危険箇所や注意点などの周知・連絡を行った。もちろん現場事務所のモニターでも確認できる。またタワークレーンオペレータは,準備のため先にタワークレーンに搭乗してからiPadで朝礼・昼礼に参加するなどの効率化が図られた。「広いところで遠くからモニターを見るよりも,iPadのほうが資料を詳細に確認できるという効果もあります」(剱持所長)。

※iPadは米国Apple Inc.の登録商標

図版:朝礼・昼礼は放送システムにより休憩所でも行われる

朝礼・昼礼は放送システムにより休憩所でも行われる

図版:クレーンオペレータはiPadで参加

クレーンオペレータはiPadで参加

鹿島ファンを増やす活動で
建設業の担い手にアピール

この現場では,当社関係のインターン生や学生,サマースクールなど多数の見学会を設けている。そのほか市内にある建築系専門学校の学生にも公開した。職場環境としての現場や働く所員の姿,また建設技術などを広く公開することで,将来建設業の担い手となってもらうためのアピールとなる。こうした未来を見据えた活動を続けていくことにより,当社を含めたこれからの建設業の働き方改革につながっていくことが期待される。

見学会の様子

見学会の様子。写真左から,KAJIMA EXPO,サマースクール,建築系専門学校生の見学会

ContentsApril 2020

ホーム > KAJIMAダイジェスト > April 2020:私たちの働き方

ページの先頭へ