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女川町

冠水から生活を守る

図版:雨水貯水施設の現場上空から万石浦を望む(2019年5月)

雨水貯水施設の現場上空から万石浦を望む
(2019年5月)

女川町浦宿都市下水路災害復旧建設工事

場所:
宮城県牡鹿郡女川町
事業主体:
女川町
発注者:
日本下水道事業団
設計:
建設技術研究所 ほか
施工者:
鹿島・田中特定建設工事共同企業体
規模:
第一雨水ポンプ場―吐出量3.0m3/s 第二雨水ポンプ場―吐出量1.8m3/s
雨水貯留施設―貯留量11,100m3 放流渠―内径1,350mm 導水管―内径1,500mm
工期:
2016年3月~2022年3月

津波による甚大な被害を受けた宮城県女川町の中で浦宿地区は,内海の万石浦(まんごくうら)に守られ,被害は比較的少なかった。しかし,地震により地盤が最大1.2mほど沈下。浦宿浜第1・第2排水区の約300haが自然流下による内水排除が困難となり,冠水被害が頻発するようになった。「女川町浦宿都市下水路災害復旧建設工事」では,冠水対策として2ヵ所のポンプ場と雨水貯留施設,雨水導水管などを新たに整備する。

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図版:地図

現場を率いるのは髙本英邦所長。着任前は女川原子力発電所構内の土木工事を担当していた。「作業エリアは住宅や工場などに囲まれ,工事としては都市土木にあたります。施工ヤードを確保するのに苦労しました」。従来の水路を活かした第1ポンプ場の建設はJR石巻線からわずか3mの距離だ。別途進行している橋梁工事とも近接するため調整を要するなど,制約は多い。

工事の意義は髙本所長も痛感している。施工エリアは標高が低く,雨の影響を受けやすい。特に2019年10月に襲った台風19号による被害は大きく,車両が通行できないほど道路が水に浸かった。「住民の方々から頑張ってと声をかけられることもあります。施工中にこれほど応援される現場は初めてです」。

現場はCIMやIoT・ICTを活用し工期短縮を図るとともに,重機にカメラを設置するなどの安全対策,地盤などの変動観測による第三者災害の予防にも重点を置く。工事へのプレッシャーを感じることもあったが,「今でも近くの女川原子力発電所工事事務所の所員が気軽に相談に乗ってくれています」と感謝する。

事業完了予定は2021年度内を目標。第1ポンプ場は昨年4月から運転を開始しており,現在第2ポンプ場稼働に向け,建屋工事と周辺水路整備工事を進める。「この地域は冠水し道路が通行不能となった場合,まちが孤立する危険があります。浦宿地区の方々が少しでも早く安心して暮らせるよう取り組んでいきたいです」。

図版:髙本英邦所長

髙本英邦所長

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図版:完成した雨水貯留施設(2021年2月)

完成した雨水貯留施設(2021年2月)

photo: takuya omura

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