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自然にとけこむ 緑と水景のランドスケープ RAFFLES BALI

クリフトップ・ヴィラからの眺め

photo by Anggara Mahendra

「ラッフルズ・バリ」プロジェクト

場所:
インドネシア バリ ジンバラン地区
発注者・施工CM:ジンバラン・グリーンヒル社
マスタープラン:
ジェームス・ハイアット・スタジオ
設計:
グラウンズ・ケント社,当社建築設計本部,土木設計本部,イリア,ランドスケープデザイン
敷地面積:
建133,700m2
規模:
ホテルヴィラ(32室)—RC・木造 平屋 ホテルロビー棟—RC・木造 2F 総延べ8,300m2
工期:
2016年7月〜2020年11月(第1期)

インドネシア・バリ島,デンパサール国際空港から南へ車で20分。街の喧騒を抜け,一流ホテルが集まるジンバラン地区の海岸からの傾斜地に,ホテル「ラッフルズ・バリ」が建つ広大な敷地が広がる。

当社のアジア開発事業統括会社のカジマ・デベロップメント(以下,KD)は,現地パートナー,ジンバラン・イースト・ワン社と合弁で設立したジンバラン・グリーンヒル社を通じて,この地でリゾート開発事業を展開。ラッフルズ・バリはこのプロジェクトの第1期として完成し,昨年12月にグランドオープンを迎えた。さらに第2期として,段階的に25戸のヴィラを建設,分譲する計画が進む。

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熱帯の木々に囲まれた深い渓谷を有し,同時に海とサンセット・ビューが見渡せる奇跡のロケーション。本物の贅沢がバランスよく具現化されたプロジェクトだと言える。

それは,まだ見ぬ夢のホテルを現実のものにしようと社内外のパートナーが力を合わせ,バトンを引き継ぎ完成させた創造の過程でもある。

自然との融合

約13haの丘陵地に高低差を活かして配置された32棟の戸建てヴィラタイプの客室には,くっきりと鮮やかな南国の花と緑に彩られたプライベートガーデンに,インフィニティ・プールとあずまや(バレ)が設置され,インド洋が望める。

朝焼けの時,一気に差し込む強烈な日差しとともに,方々から鳥の声が飛び交い,プールの水面が空の青を映し出し,インドネシアの山々をシルエットにしてゆっくりと空が明けていくさまは,この世の楽園を思わせる。

この豊かな自然の地形を,陸から海に向かって持続させるように建物と調和させる方法として,「ウォーター・フィーチャー」の設計コンセプトが検討されたという。継ぎ目のない水と緑の景観のなかに,ゆったりとしたプライベート空間をつくるため,ヴィラとヴィラの間隔を贅沢にとり,向き合い方を工夫し,敷地を遮る壁は最小限に,植栽の配置と生育のバランスによってどこからも視線が届かないように設計する。マスタープランナーには米国のジェームス・ハイアット氏が選ばれ,その後KD,当社AE・土木設計本部監修のもとにデザインが練られていった。

図版:マスタープラン

ウォーター・フィーチャー

ラッフルズ・バリの敷地は5つ星リゾートをつくるのに必要な立地条件がすべてそろっている。敷地のどこからでもパノラミックなオーシャンビューが楽しめ,空港から車で20分程とアクセスも良い。

入口からロビーにいたる約1kmのアプローチ道路は手つかずのバリの風景を再現し,来訪者に心の静寂を与えつつ異次元の世界へと誘う。

車が敷地の一番高い場所にあるロビー棟に到着すると,眼下にオーシャンビューが劇的に広がる演出で,車でのアクセスはここまで。

ヴィラの配置は,前列の屋根が後列からの海への視界を妨げないように注意深く敷地割がなされている。

ロビーから各ヴィラへは小渓谷沿いにつづら折りのカートパスでつながっており,通りごとに異なる種類の植栽が各通りを特徴づける。ヴィラ廻りの豊かな植栽は,熱帯の雰囲気をつくりだすとともにオーシャンビューを確保し,各ヴィラにプライバシーを与える役割も果たしている。

水が海に向かってこぼれ落ちるようにつくられた水景は,ロビーからヴィラの間を抜け,ビーチ・ファシリティにいたるまで,ゲストをロビーから海へと導くような設計とした。

海岸に平行して配置した長いインフィニティ・プールは,あたかもプールと海とがつながっているような錯覚を与えている。

図版:階段を伝って海沿いを行く敷地内の散策路

階段を伝って海沿いを行く
敷地内の散策路

photo by Anggara Mahendra

図版:敷地内の水景は動物が生息するほどの清流

敷地内の水景は動物が生息するほどの清流

図版:ロビー棟のメインエントランス

ロビー棟のメインエントランス

図版:自然のなかに建つプレジデンシャル・ヴィラ

自然のなかに建つプレジデンシャル・ヴィラ

図版:オーシャン・フロントに構えるビーチ・ファシリティ

オーシャン・フロントに構えるビーチ・ファシリティ

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パートナーとともに

常務執行役員/カジマ・デベロップメント 社長

大石修一 Shuichi Oishi

写真

ロビーにて。右はジンバラン・イースト・ワン社,
プトゥ・アグン・プリアンタ社長

photo by Anggara Mahendra

ラッフルズ・バリは,2020年7月のソフトオープンの後,2021年12月にグランドオープン・セレモニーを開催した。時節柄海外からのお客様はお招きできず,一流リゾートホテルの開業としては静かなスタートではあったが,業界関係者並びに宿泊客からは「世界一のリゾートホテル」との賞賛を受けている。

ハワイのフアラライ,南仏のサンタンドレオール,プーケットのアバディーナに続く海外リゾート開発の言わば集大成プロジェクトの完成である。

今年5月,ローカルパートナーであるアグン氏とともに,ラッフルズ・バリのロビーからインド洋に沈む美しい夕日を眺めながら,この地を訪れた当社の先人たちに思いを馳せた。1980年代,彼らはアグン氏父上の案内でこの場所に立った。渓谷越しにジンバラン湾を望み,その先にはアグン山をはじめとする3000m級の山並みが浮かぶ神秘的な眺望には息をのむ。「サヌールの朝日とジンバランの夕日がバリの魅力のひとつだ」と聞いたことを思い出す。妥協することなくつくり込んだラッフルズ・バリの出来栄えを,今は亡き先人たちもきっと天国で喜んでくれることであろう。

第2期の分譲ヴィラ開発は区画割を終え,この8月には4ベッドルームのモデルヴィラが完成する。ラッフルズ・ブランド運営による高級ヴィラには,購入希望者からの引き合いが既に多数入っている。

海と山をつなぐ場所

カジマ・デベロップメント
ディレクター・オブ・デザイン

岩下暢男 Nobuo Iwashita

写真

ケイブ・レストランにて

photo by Anggara Mahendra

波打ち際から海抜70mにいたる傾斜地に,このリゾートは佇んでいる。

海と山とのつながりが大切にされるバリ文化のなかで,海(ジンバラン)と山(ウブド)とが共存する稀有な敷地特性を活かし,各ヴィラのオーシャンビューが確保されている。ロビーから続く水景は海から陸への連続性をつくりだし,配置計画の背骨となっている。

水景沿いのカートパスを海に向かって降りていくにつれ,海の見え方や波の音の強度が変化し,豊かだが統制された緑と相まって,いくつもの場面を体感させてくれる。

1ベッドルームと2ベッドルーム,計32戸のヴィラは各々主屋,バレとプライベートプールからなる。大きすぎず,小さすぎず。すべての空間のスケール感についての細かい配慮がなされている。機能性,快適性を最大限に確保しつつ,建築や内装に用いた伝統的な素材構成とモチーフがバリらしさを醸しだす。広い建物間隔と豊かな植栽は開放感とプライバシーを同時に確保する。

このリゾートは元々の自然に置き換わっても海と山とをつなぐ場所としてあり続ける。

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図版:プールとバレを完備したプライベートガーデン

プールとバレを完備したプライベートガーデン

図版:レストラン「ロロアン」と接続するビーチ・ファシリティ

レストラン「ロロアン」と接続するビーチ・ファシリティ

photo by Anggara Mahendra

図版:プールサイドの時間を過ごすバレ

プールサイドの時間を過ごすバレ

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図版:部屋のなかから海を望む

部屋のなかから海を望む

図版:木とラタンを基調としたインテリア

木とラタンを基調としたインテリア

図版:dmy

部屋のなかから海を望む

図版:dmy

インドネシア伝統のバティック布を用いた
ベッドヘッドボード

photo by Anggara Mahendra

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