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1号機:燃料取り出し 施工

ダスト飛散と汚染水発生抑制の観点から採択された大型カバーの先行設置案。
それは,“高線量下での施工”に挑むことを意味する。
3号機,2号機に続き当社が担当する1号機の燃料取り出しに向けたファーストステップ。
工程遵守と社員・作業員の被ばく低減に,現場は知恵を絞る。

線量管理との闘い

オペフロにガレキや建屋残置物が多く残る1号機原子炉建屋周辺は,福島第一原子力発電所構内でも線量が高いエリアにあたる。当社はこれまでも3号機の燃料取り出し用カバー設置,2号機のオペフロへのアクセスのための西側構台設置など,比較的線量が高い1〜4号機原子炉建屋周辺での構造物建設を担ってきた。 それでも,「ガレキ撤去や遮蔽などの線量低減が一定程度進んでから構造物建設に着手したこれまでと,1号機の工法は順序が異なります。“大型カバー”とあるように規模も大きく,工程遵守と線量管理の両立はかなり難しいです」と1号機大型カバー準備工事を率いる上野順所長と,1号機大型カバー設置工事を主導する豊島憲治所長は口を揃える。

※東京電力ホールディングスの線量管理方針を踏まえ,1号機においては16.6mSv/年を自主規制値としている。
(当社の管理値は20mSv/年,80mSv/5年。法定限度は50mSv/年,100mSv/5年)

図版:ガレキなどの撤去前の1号機南側(2021年8月頃)

ガレキなどの撤去前の1号機南側(2021年8月頃)

作業員の被ばく低減のため現場は様々な策を打つ。その一つが遠隔施工。現在,上野所長が進める1号機南側の建屋とガレキなどの撤去工事は遠隔解体を基本とし,建屋部分は既存の重機アタッチメントで切断・撤去,主排気ダクトの解体には専用の切断装置を開発した。「開発した切断機械はクレーンによる吊り下げ式とし,ダクトを把持しながらワイヤーソーにて切断する機構です。繊細さが求められる作業を,順調に進めることができています」と上野所長は胸を張る。

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図版:2023年3月時点の1号機南側

2023年3月時点の1号機南側

図版:開発した主排気ダクト切断装置の実物大試験。

開発した主排気ダクト切断装置の実物大試験。
ダクトを把持しながらワイヤーソーで切断する

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廃炉で積み重ねた知見を結集し,昇華

鉄骨造の大型カバーの建方は,ユニット化施工と遠隔施工を組み合わせる。準備工事チームが整備した構外ヤードで,大型カバー設置チームが鉄骨ピース約1万500個を106ユニットに地組み。現地に運ばれたユニットを,1,250tクローラークレーンを遠隔で操作して組み立てていく。6月末時点でのユニット化施工の進捗は約2割。豊島所長は一層気を引き締める。「1号機周辺は,鉄骨が組み上がれば上がるほど線量が高くなっていきます。線量環境はオペフロ付近の構台上で最大10mSv/hと,作業員が1日に数分程度しか作業ができないレベルです。省人化・機械化など,2・3号機の施工で培われた技術と経験を結集,ブラッシュアップさせ,現状を切り拓いていかなければなりません」。

廃炉で積み重ねた知見の結集と昇華。大型カバーを原子炉建屋に固定するアンカーボルトおよびベースプレートの取付けはまさしくそれを体現した例だ。「遠隔自動アンカー削孔装置を使用し,時間を要する外壁の鉄筋探査と削孔作業を遠隔化・自動化で実施しました。アイデアは2号機の西側構台設置工事の実績をベースに,装置を大型化し,施工能力を大きく向上させています」(豊島所長)。

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図版:1号機の構外ヤード全景(2023年4月)

1号機の構外ヤード全景(2023年4月)

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廃炉を次のステップへ

1号機大型カバー設置工事の所長として2021年に着任した豊島所長は,福島第一原子力発電所での工事を担当するのは今回が初めて。線量管理なども考慮した施工計画や組織づくりの難しさとともに,“福島第一原子力発電所の廃炉”への世間の注目度の高さを実感した。「特殊な環境であるのは確かです。それでも,現場で課題が挙がったときに解決策を考え,施工を前に進めるのが鹿島の仕事です」。

2号機の西側構台設置工事で工事長を務めた経験も持つ上野所長は,ここでの工事を円滑に進めることの難しさを知る。だからこそ,「廃炉は誰も取り組んだことのない作業。私たちが役割を果たすことで廃炉は次のステップへと進んでいきます。地域や社会に貢献したいという気概を持つ社員に,是非挑戦して欲しいと思います」と呼びかける。

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図版:1号機の施工状況(2023年5月)

1号機の施工状況(2023年5月)

Technology

遠隔自動アンカー削孔装置

1号機外壁への削孔作業は遠隔操作で実施されている。遠隔自動アンカー削孔装置は,鉄筋探査装置と吸引装置を合わせることで,鉄筋を避けて削孔しながら自動でダストの吸引を可能とし,ダストの飛散防止や作業員の被ばく低減につながった。

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