4本目の新たな滑走路が海上に出現した。
軟弱地盤を克服し,空域・海域の様々な制約の下,休むことなく築き上げた,
日本で初めて採用された「ハイブリッド構造」の大規模プロジェクト――。
完成によって年間発着能力が大幅に増強される,
D滑走路完成の舞台裏をのぞく。
究極の24時間施工で完成
D滑走路は,埋立と桟橋を組み合わせたハイブリッド構造。北側にA・C滑走路,東側に東京港第一航路, 西側に多摩川河口があり,様々な制約下での24時間施工となった。
工事海域の安全確保のため,工事区域を設定して,警戒船を24時間配置した。また,東京航行安全情報センターを設置し,空港周辺海域の安全な船舶航行のため,24時間体制で海事関係者などに情報発信を行った。A・C滑走路の離着陸にも影響を及ぼさないよう,作業高さが必要な杭打ちなどの作業は夜間作業可能時間帯(20:45~翌07:45)に行われた。
埋立部
全長:2,020m/全幅:424m/埋立土量:約3,800万m3/消波ブロック10t型:約1万9,500個/消波ブロック5t型:約6,500個
工事の特徴:締固め砂杭(サンドコンパクションパイル工法)による地盤改良で,経済的で安定した断面構造を実現。護岸は安定した傾斜堤構造で,海面外周を消波ブロックとした。
接続部
全長:W428.4m×L14.4m/鋼管矢板井筒:W16.6m〜18.5m×L14.4m(24セル)/鋼管矢板:Φ1600mm(高耐力継手使用)/
矢板本数:641本/鋼管矢板長:67m
工事の特徴:上部構造にスリット柱を用いた消波式護岸構造を採用し,護岸からの反射波を低減する。情報化施工により,埋立工事で発生する護岸部分の変位を計測し,将来変位を予測。
桟橋部
面積:約52万m2/ジャケット:198基/標準寸法:W63m×L45m×H35m/最大重量:約1,600t/先行杭本数:1,165本/杭長(全長):79.0m〜90.8m
工事の特徴:多摩川の通水性を確保するため桟橋形式を採用。ジャケット構造の採用などにより,気象・海象条件に左右される現場施工量の低減を実現した。
連絡誘導路部
延長:620m(桟橋区間360m,橋梁区間260m)/幅員:(連絡誘導路)60m×2本,(場周道路)10m×2本
構造の特徴:通水性と一般船舶の航路を確保するため桟橋構造と橋梁構造を採用。
工事の特徴:施工機械の工夫と昼夜間作業により,現空港滑走路に近い制限表面下での厳しい施工条件に対応。
改ページ
東京港第一航路を挟んで対岸にある中央防波堤外側埋立地(東京都江東区)にD滑走路外工事JVの現場事務所があった。JV総合事務所,工区事務所,協力会社棟,宿舎棟など合計33棟が建ち並ぶ現場事務所村だ。1日約5,000人が働き,最大1,000人が寝泊りする一大拠点。毎日,ここから交通船約50隻を計画的に運航して工事関係者を現場へ搬送した。竣工後,維持管理用の事務所を空港敷地内に移し,更地に戻った。
中央防波堤地区の現場事務所群
工区により色の違う作業着の安全大会