ウェーブ・ファサード
「どんな激しい音楽ライブでも揺れない,これからのスタンダードとなるライブハウスを大阪につくりたい」。日本・海外でライブホールを運営展開する事業主のこの熱い思いのもと,プロジェクトがスタートした。計画地は,大阪湾に近い安治川河口でスーパー堤防上に位置し,ひと昔は造船ドックだった場所。要求機能はZepp史上最大となる2,800人を収容できるスタンディング型のライブホールである。設計の鍵は3つ。振動騒音が起こりにくい建物構造,音楽ライブとして臨場感のあるホール音響環境性能,ウォーターフロントを活かした印象的な玄関外部空間,これらを実現させることであった。当社技術研究所とともに行った実験と解析結果をもとに基礎構造や外装性能を決定し,事業主の培ってきたホール運営の知見を学びつつ設計を進める中,施設名にもなった「ベイサイド」をどのようにライブファンに記憶していただくか――設計中に何度も敷地を確認し,実際に幾度もZeppのライブに足を運んで考えたことは,開演前後の印象的な空間創りであった。計画地は複雑な開発要件で旗竿形状となり,敷地内に遊歩道が整備された。その遊歩道を逆手にとりライブ前後の客だまり広場と位置づけ,その場所に外壁と庇をあたかもビッグウェーブのように出現させて,ファンを柔らかに包み込み,一体感が高まる印象的な外部玄関広場を形成した。広場は玄関扉を全開にすると内部ホワイエと一体化し,グッズ販売やSNSへ掲載するための写真撮影などの他,様々なイベント空間として利用される。このライブホールが音楽ライブの聖地としてファンとともに,大阪湾際に佇み続けることを願ってやまない。(前垣篤志・塚田豊男)
玄関からホワイエを見る
スタンディング型のライブホール
大阪湾岸に建つライブホール
Zepp Osaka Bayside(大阪市此花区)
国内やアジアの大都市に展開するスタンディングを主としたライブホール。音響環境や臨場感の良さに定評があり,Zeppホールでのライブはアーティストにとってひとつのステイタスとなっている。札幌での初館オープン以降,今年で20周年を迎えた。2017年グッドデザイン賞受賞。
発注者:Zeppホールネットワーク
設計:当社関西支店建築設計部
用途:文化社会施設
規模:S造 2F 延べ3,285m2
工期:2016年1月~2017年1月
(関西支店施工)
前垣篤志
(まえがき・あつし)
関西支店建築設計部
グループ長
主な作品:
- 行岡第二ビル
- ナカシマ本社ビル
- フェスタビル南館
- 姫路ターミナルスクエア
- MORESCO本社
第2研究棟
塚田豊男
(つかだ・とよお)
関西支店建築設計部
設計長
主な作品:
- 世界救世教神戸教会
- 近鉄新難波ビル
- 中央復建コンサルタンツ
本社ビル - ローレルタワー難波
- 神戸MI R&Dセンター
(理化学研究所) - 参天製薬 滋賀プロダクト
サプライセンター中央棟